第7話 いざ、魔物退治!
「いい人でしたね」
「ああ、そうだな」
武具店をあとにした二人は、ギルドへ向かい魔物退治の依頼を探す。
「初めてですから、あんまり難しくなさそうなのが良いですね」
「そう、だな……」
タマモを手伝いたいのは山々だが、いかんせんユオには読み書きが出来ないので大人しく待っているだけである。悲しい。
「よし、これにしましょう。スライム退治」
「スライム?どんなやつなんだ、それは?」
「言葉にするのが難しいですね。見れば分かりますよ」
「そういうもんか」
そういうもんです、と言うタマモに続いて受付に向かう。
(それにしても、ここにもかなり慣れてきたな)
ギルドを見回しながら心の中で呟く。最初の頃に比べて物珍しそうだったタマモへの視線はかなり減っている。代わりにユオへの視線が増えている気がするが。
「あの野郎、またタマモちゃんと依頼に行くのか!ムカつくぜ!!」
「チッ、あんな奴はロリコンの風上にもおけねぇ!!」
「ユオさん、良い体してるなぁ。ウホッ!!」
最近は妙な話し声や寒気がするので、体調を崩してしまったのかもしれない。つらい。
「ソフィーさん、これお願いします」
「ああタマモさん、はい承ります」
ソフィーというのは、ユオとタマモが冒険者登録をしたときの受付嬢だ。タマモとソフィーはいつの間にか仲良くなったらしい。
ユオも他の冒険者と仲良くしたいのだが声をかけても無視されてしまう。知らぬ間に何かしてしまったのだろうか。
「それでは、お気をつけて」
「はいっ、いってきます」
友達が欲しいなぁ、と考えていたところにタマモが戻ってきた。
「行きましょう、ユオさん」
「あい」
街を出てタマモはギルドで貸して貰った魔物の情報が記載されている地図を広げた。
「えっと、スライムがいるのはこの辺らしいので……、あっちですね」
タマモの先導で三十分ほど歩いて着いた草原はいままで薬草を取りに行っていた場所とは逆方向だった。そういえば以前どうして魔物を見かけないのか尋ねたら、
『魔物にとってこの辺の薬草は毒ですから』
と言われたためユオは未だに一度も魔物を見たことがないのだ。少しだけ胸を躍らせつつ周囲を見回すと、
「なんだ、これは……?」
プルプルとした弾力のありそうな丸、いや楕円の生物?がいた。
「あれが、スライムか……?」
「はい」
「何というか、気持ち悪いな」
「まあ、魔物ですからね。好きな人は少ないでしょう」
そんな風に話している二人を敵だと認識したのか、スライムたちが一斉に襲いかかってきた。
「せいっ!」
素早く鞘から剣を抜いたユオは飛んできたスライムへと斬りかかる。ビャッと断末魔のような音を出してスライムは小さな石だけ残して消えてしまった。
「ちっ!」
その石がスライム討伐の証であるため拾い集めねばならないが、どんどんスライムが押し寄せてくるため手を止めて拾うことは出来ない。タマモに手伝って貰おうと目を向ける。
「……」
「火の玉」
そう唱えたタマモの持つ杖の先端から赤い魔方陣が浮かび上がると小さな火の塊が飛んでいきスライムを焼いた。
「火の玉。火の玉。」
同じ魔法を連発して一気にスライムを片付けていくタマモを見てユオは、魔法を見た感動よりも先にそんなんありかよ、と感じるが。お構いなしにスライムたちは攻めてくる。
「くっそ!」
ポトポトと石が落ちるのを気にせずユオはヤケクソ気味にただひたすらスライムを切っていくのだった。
「妙ですね」
「ああん?……何が?」
息を切らすユオの代わりに石を拾いながら、念のため他にもスライムがいないか警戒するタマモが口を開いた。
「スライムというのは本来、とても臆病なんですよ。だから、人間を襲うことはまずないんです。よっぽど命の危険があるときなら別らしいですけど」
「なら、その命の危険だったんじゃないか?実際、俺たちで全滅させたんだし」
「うーん。かもしれないですけど、スライムの生息地だってもっと森の中とかで、断じてこんな草原ではないんですよ」
「森の中、ね」
ふと、最初に依頼を受けた日に言われたことを思い出す。
「そういえば、熊がどうとかいわれなかったか?」
「え?」
くま?と頭に疑問符を浮かべるタマモは再び地図を取り出すとじっくりと眺めてから顔を上げた。
「あ!あっちの森で一角熊の目撃例があったみたいですね」
「何なんだ、それ?」
「かなり凶暴な魔物で、すでに犠牲者もでているらしいです」
ギルドから借りた地図は魔法で逐一情報が更新されるという非常に便利な代物で、そこに一角熊の情報も記載されているらしい。
「今日ははじめての魔物退治でしたし、ユオさんも疲れているようなのでもうかえりますか」
「ああ、そうしてもらえると助かる……」
そうして二人はギルドへと戻ることにした。
報酬は銀貨六枚だった!




