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記憶喪失の少年は夜空の月を見上げて何思う  作者: つかけん
第1章 冒険の始まり
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第5話 タマモ先生の魔法講座

翌朝、朝食を終えた二人は昨日と同じようにギルドで薬草採取の依頼を受けて再び草原へ向かった。何でも、今は薬草の需要がかなり上がっていてギルドとしてはどれだけ薬草があっても困らないらしい。

そんな情勢が関係ない二人にとってはありがたい依頼だった。


その作業中、ユオは一つタマモに疑問をぶつけてみる。


「そういえは、タマモ」

「はい?」

「魔法っていうのは何なんだ?」

「ああ、ユオさん分からないんでしたっけ。仕方ありませんね、おしえてあげましょう。魔法というのはですね―」


魔法は大きく分けて元素魔法、物理魔法、契約魔法の三種類らしい。


しかし、契約魔法はあまり使われておらず元素魔法がもっとも一般的な魔法なんだとか。


「元素魔法には七つの属性があって火、水、土、風それから聖と邪に無属性です。わたしは火属性で、ユオさんが無属性ですね」

「ああ、登録の時のやつか」

「はい。そして、残念なことに無属性の元素魔法は存在しません」

「マジかよ……」

「はい、マジです」


魔法を使えば魔物退治も出来るという読みが早くも外れてしまった。


なおも続くタマモの説明によると、各属性には二つの特性があって、


火は、燃焼と凍結。


水は、活性と鎮静。


土は、硬化と軟化。


風は、増殖と分解。


聖と邪は対となっていて、浄化と侵蝕。


「元素魔法というのは、適性のない属性は使えません。しかし、物理魔法は誰にでも使えます」


そもそも物理魔法とは、適性がなくても使えるように開発、研究された魔法だとか。

確かに、火を起こす時に火属性でなければならないというのは不便だ。

そういう意味で考えると、元素魔法よりも便利かもしれない。

しかも、ユオにも使えるかもしれない。


「ただ、物理魔法には致命的な欠点がありまして……」

「何なんだ?」

「例えば、わたしがこうして火を点けるのに一の力が必要だとして」


そう言って人差し指の先に小さく火を灯す。


「これを物理魔法で行うと百か千くらいの力が要ります」

「そんなに!?」


いや、物理魔法全然便利じゃない。むしろ、めちゃくちゃ不便じゃないか。


「ん、待てよ……。俺は魔力量が多いとか言われた気がするが……」

「うーん。確かに無属性の人は常人の数十倍とか数百倍だったりもしますけど……、それでも無尽蔵ではありませんからそのうちガス欠しちゃいますよ?」

「……まあ、それもそうか」


肩を落とすユオを元気づけるようにタマモは明るく続ける。


「でも、強化魔法は比較的簡単で便利ですよ」

「へえ、どういうものなんだ?」

「その名の通り、肉体だったり武器だったりを強化する魔法です」


もっとも一般的な物理魔法ではあるがそれにも欠点がある。


「燃費がすこぶる悪いんですよね。瞬間的に一部分を強化させる人は比較的多いらしいですけど、長時間は使用できません。でも無属性の人たちは別です」


無属性は魔力量が尋常ではなく多いため、他の属性に比べて強化魔法を扱いやすいのだとか。


「ま、わたしはユオさんほどではなくともかなりの魔力量ですからそこそこの時間、強化魔法を使えますけどね」


ふふんと薄い胸を張るタマモに若干のいらつきを感じつつユオは先を促す。


「つまり、わざわざ自分が苦手なものを無理矢理使うよりも他の属性では扱いきれない魔法を使った方がいいってことです。それに、強化魔法を開発したのがあの『伝説の皇帝』ですからね」

「『伝説の皇帝』?」

「はい。今からだいたい千二百年くらい前の人らしいんですけど、その人も無属性だったらしいですよ」

「へぇ」


なんでも、肉体に対する強化魔法を最初に体系化させたのがその人らしい。しかも、全部で十段階ある肉体強化で全てを扱えたのは千二百年経った今でも、その『伝説の皇帝』だけらしい。


「もしかしたら、ユオさんもそんな人になれるかもしれませんね」

「伝説はかなり荷が重いなあ」


冗談めかすユオの態度にタマモは少し笑って『皇帝』の偉業を語り始める。


「そうですね。文献にはたった一人で敵軍を壊滅させたとか、一週間不眠不休で戦ったとか書かれていてどこまでが本当かわからないくらいですからね」

「ふむ、それらが本当だとしたらとんでもない戦闘狂だったんだな」

「たしかに……。そうだ!今度きちんとお勉強しましょうか、文字も覚えた方がいいですし」

「そうしてもらえると助かる」


そんな風に話しながら作業している間に日は暮れていた。

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