第4話 初めての依頼
「あの辺にありそうですね」
「そうだな」
依頼を受けた二人は街から少し離れたところにある草原で薬草を採取していた。
「わたしたちにはお金がないんですから、最低でも今日の宿代は稼がないと!」
そう言ってタマモはグッと拳を握りしめる。
「確かに、寝床の確保は最優先事項だな」
そんな訳で、二人は注意されたようにその場所の薬草を取り尽くさないように二、三割残しては移動して、また移動して、と繰り返すうちに日が暮れかけていた。
「そろそろ戻るか?」
「そうしますか」
ギルドから借りたかごも一杯になったので、二人は街へと戻る。
(それにしても……)
歩きながら、ふと考える。
(今日の内にでも記憶が戻るんじゃないかと思っていたが、希望持ちすぎだったか)
現状、記憶喪失によって何か困っているというわけでもないしゆっくりと思い出せばいいだろう。
ギルドに戻ってきた二人は早速換金所へ向かった。
「全部で銀貨三枚ですね」
「……」
「……」
受付嬢の無情な宣告に二人は肩を落としてギルドを出る。
「宿、あるといいな?」
「銀貨三枚かぁ。なんとか今日の宿を見つけることはできても、食事はなしですかね」
ぐぅっ、という音がユオの腹からした。
「そういえば、タマモと会う直前に水を飲んでから何も口にしてないな」
「あー、まぁ、わたしもそんな感じですかね。ていうか、いま思い出しませんでした?」
「ん?なにを?」
「いや、それは、まあ、その……」
ゴニョゴニョと口ごもるタマモを尻目にユオは一つため息をつく。
(やっぱ、魔物退治なのかもな)
とは言っても、さすがに素手で戦う勇気はない。
「ちょっとそこのお二人さん、今日の宿をお探しじゃありませんか!」
「え?」
どうしたもんかと考え込むユオは立ち止まって振り返る。
そこにいたのは十歳くらいの男の子だった。
「えっと……」
急に声を掛けられて二人は顔を見合わせるが男の子はお構いなしに宿の宣伝を始めた。
「ボクはそこの宿屋の息子のアウルっていうんだ!二人とも駆け出しの冒険者でお金がないんでしょ?」
「まあ、そうだが……」
「だったらうちに泊まりなよ!安くするからさ!」
「……」
アウルの言葉を疑う訳ではないがこちらも簡単に頷いてカモになるのは避けたい。
「コラ!アウル!」
三人の妙な空気を破壊するように現れた大柄な男はこちらへ一礼しつつアウルの頭にげんこつを落とす。
「ってえなあ、とうちゃん!」
「お前が客引きをしようなんざ百年早いわ!どうもすいません!」
「いや、俺たちも宿を探していたところだったから……」
「そうでしたか、私は宿屋の店主ニーロと申します。どうぞこちらへ。ご迷惑をおかけしたのでお安くしときますから」
二人とも疲労がかなりたまっていたのでその言葉に甘えることにした。
一泊銀貨一枚で朝と夜の食事をサービスしてくれるという何とも気前のいい店主に会えて、二人はその晩、泥のように眠りにつくのだった。