第2話 冒険者ギルド
「それで、冒険者っていうのは何なんだ?」
森のなかを歩きながらユオはタマモに尋ねた。
「……知らないのに頷いてたんですか」
呆れるような視線を向けながらタマモは説明してくれた。
「いいですか。冒険者というのは冒険者ギルドに登録された人のことで、簡単に言うと何でも屋みたいなものです」
「何でも屋、か。具体的には何をするんだ?」
「そうですね。採取の依頼、護衛、あと魔物討伐とかですかね」
「ほう」
そんな風に話をしている間に森を抜けた二人は、ダグラスという街へとたどり着いた。
街は外壁によってぐるりと包み込まれていて、外敵の侵入を防いでいるのだろう。
そんな街の入り口にそびえ立っている門には列が出来ている。何の列だろうと観察していると、
「通行証をお持ちの方はこちらから、そうでない方はお並びください!」
と声かけをする衛兵の姿が見えた。
「どうする?俺は通行証なんて持ってないが」
「ええ、わたしもです。仕方ありません、並びましょうか」
ざっと見たところ1時間くらいかかりそうだ。
その時間を使って気になっていたことを聞く。
「そういえば、先ほど言っていた魔物って何だ?」
「うーん。わたしもそこまで詳しくは知りませんけど、魔力を宿していて人を襲うのが魔物です。どのようにして生み出されたのか原因はわかっていませんが、わたしたち人間の敵です」
「なるほど。しかし、その説明だと人を襲わないのもいるのか?」
「ええ、まあ。幻獣と呼ばれるのがそうですが、魔物ともまた違うとか。というか、わたしは専門家ではないので詳しくはわかりませんよ」
目を逸らすタマモの様子にユオは目を細める。
「その割には、色々知ってるようだが?」
「……。読書が、好きなので……」
「ふーん」
「あ、わたしたちの番ですよ」
何となく釈然としないものを感じつつも、それ以上ユオは追及しなかった。
「それでは通行税として、二人で銀貨1枚を支払ってくれ」
「……ユオさん、お金は?」
「……すまないが、持ってない」
「むむう、仕方ありません。なけなしのお金を使いましょう」
そう言いながら心苦しそうに払うタマモを見て、絶対に返そうとユオは誓うのだった。
無事に門を通った二人の目に最初に飛び込んできたのは、門から突き抜ける大通り。綺麗に整備された石畳の上を多くの人が行き交っており、脇には幾つもの商店が並んでいて呼び込みの掛け声があちこちから響いてくる。
活気で満ち溢れる様に、立ち尽くすユオの袖を引っ張るタマモはくすくすと笑う。
「ひとまず、ギルドに向かいましょう」
「ああ、そうだな」
予め衛兵に道を教えてもらっていたのか、迷い無く進むタマモの後をユオはついて行く。
「ここみたいですね」
「これが……」
周囲に比べて立派な建物の扉を押し開けて中に入る。
そこは、入り口向かって右側が酒場、左側が受付になっていた。
酒場では金属鎧や革製の防具、剣や槍を身に付けた数名の男女が酒を飲みながら談笑している。
受付ではボードの前で何やら話し合っていたり、カウンターで毛皮や牙などの換金をしたりしている。さらにその奥には2階へと続く階段がある。
そんな光景を尻目にタマモは受付に向かい声を掛けた。
「すみません、冒険者登録をお願いします」
「ええっと」
声を掛けられた女性職員は困ったように眉を寄せて、
「ごめんね、お嬢ちゃん。15歳未満は登録出来ないの」
「ぶふっ」
「何か?」
思わず吹き出してしまったユオにタマモは冷えきった眼差しを向ける。
「いや、何でもありません」
「……」
正面に向き直ったタマモは、
「わたしはもう16歳です!」