宿屋
君は一日経つとすっかり良くなっていた。
折れ曲がっていた腕はもとに戻りその他の傷口も概ね完治していた。
セレナは君の怪物のような腕や足を見て医者の所に送ることはせずに、包帯や傷薬を買い手当てしたあと宿屋に運んだそうだ。
おそらく、医者にあの体を見せたら異端として殺されていたかもしれない。
今滞在している宿屋はセレナの知り合いが経営しているらしい。
主は若いセレナくらいの少女だった。親が亡くなり跡を継いだらしい。
君は立ち上がり食事をとりに酒屋へ向かった。
酒屋ではセレナと宿屋の主が食事をしていた。
セレナが君に気づき驚いたように話しかけてきた。
「もう大丈夫なんですか。」
「あぁ、大体完治した。」
セレナと宿屋の主は目を丸くして君の方を見た。
足から脇腹、腕と見回している。
「あんなに重症だったのに」
セレナは心配そうに見ている。
あえて、あの腕や足のことは触れていないようにしているようだ。
「あぁ、問題ない。
それよりすまなかった。予定より二日遅れてる。」
「いいえ、問題ないです。
あんな獣に襲われたんですもの。」
セレナはとなりの席をポンポンと叩き君に座るように指示する。
「少しあなたに言いたいことがあります。」
君は席に座りセレナの方を見る。
「私があのときの戻って来なかったらどうするつもりだったんですか。
あの場所は夜になると狼も出てくるんですよ。
あのままあそこにいたら食べられてたのかもしれないんですよ。
私は確かに足手まといにしかならないと思いますが、
あそこで先に行けと怒鳴って私だけ逃がすような行動は腹が立ちます。」
セレナは捲し立てるようにしゃべった。
君は反論しようとしたがセレナの表情は真剣だったのでなにも返せなかった。
「すまない。
だが、次に同じようなとことがあった場合どうしたらいいんだ。」
「私は逃げません。
かといって邪魔になるのも嫌なので少し離れたところにいます。もしあなたが死ぬようなら私も死にます。」
「それは得策ではない。」
「あなたが死ななければいいのです。」
セレナはにっこり微笑んだ。
その後君は宿屋の主にお礼をいった。
そしてお昼を食べた。
次の町までの道のりを聞きまた、この町のことについて聞いてみた。
剣がボロボロだったので直したい、この町には1つ鍛冶屋があるらしく場所を聞いた。本格的に防具も買った方が良さそうだ。
君はお昼を食べ終わると鍛冶屋へ行くといい立ち去ろうとした。
すると、セレナも着いていくと言った。
鍛冶屋は町の中心部にあった。
比較的その鍛冶屋は大きく取り扱い商品も多かった。
「これを修理してください」
「直すより買った方がいいよ。」
君が剣を鍛冶屋の主に見せるなり言われた。
「いや、修復で頼む」
「わかった。1週間はかかるよ」
君は店内を見てまわり中古品の剣を持つ。
そして主にこれもくれといって渡した。
「はいよ」
セレナは短剣を見ていた。
「どうした。買いたいのか。」
「はい。いざというときの為に必要だと、今回の「◇ことでそう感じたので。」
セレナはそういうと一つ手に取った。
「うーん」
「これなんかどうだ。」
「じゃあそれにします。」
「いいのか。」
「見てもわかんないですし。」
セレナは君が選んだ短剣を店の主人に見せて購入した。
剣の修復についてやり取りを主人と交わしたあと書類にサインをして鍛冶屋をでた。
君とセレナは一旦宿屋にはいり、買ったものを部屋に置く。
「あの、剣の稽古空いているお時間でいいのでつけてもらってもいいですか。ご信用程度でいいので。」
「私もきっちりと習ったわけではないですが構いませんよ。」
君とセレナは町を見てまわり食料品を揃えた。明日の昼前にはこの町を主発しようと話して決めた。
夕方になるとセレナと君は居酒屋に行き夕御飯を取った、宿屋の主も誘ったが仕事があるとかでやんわり断られた。
食事を済ますと他の冒険者たちと情報交換をした。
しかし、特に有益な情報は得られなかった。
その帰りにギルドにより掲示板などを覗き情報を集めた。
近くで山賊が暴れているようだ。
君はその他の情報を調べメモを取る。
調べ終わると宿屋に帰った。
宿屋に帰るとセレナは風呂に出掛けた。
君は明日の準備を済ませたあと風呂へ向かう。
風呂に入ると今までの疲れがどっととれる様な感覚に陥った。
君はいつもより長く風呂に入った。
風呂から上がるとセレナはうとうとしていたが起きていた。
「そうか。俺の看病する為に一緒な部屋で寝泊まりしていたのか。今からでも別な部屋をとるか。」
君がいうとセレナは慌てた様子で
「部屋はもうどこも埋まっているみたいでしたよ」
と言った。
「そうか。すいません。」
「謝ることないですよ。私はこの前助けてもらいましたし。
剣の稽古も付けてくださるようですし。」
セレナは笑って答えた。
「あのー、先日から聞きたかったこと聞いてもいいですか。」
セレナは真剣な顔になり言った。
「いいですよ。答えられる範囲なら。」
それからセレナは口を開けた。