回想
君は町のなかを歩いていた。
昨夜作成した買うもののリストを見ながら必要なものを揃えていた。
地図、寝袋、火打ち石、砥石は既に手にいれている、残るは保存食のみだ。
保存食は干肉、干魚等を調達する。
ギルドまで出向き保存食を調達してギルドの掲示板を眺める。
ヒゼン村の情報は無かったがその通り道にある村の情報があった。
ノース村
6月6日
近くの山で山賊を確認。
山賊は現在ノース村での危害は出ていないが注意が必要。
各冒険者は細心の注意を払うこと。
6月10日(追記)
トンノ町のギルドに討伐依頼提出済み
最新の日付が5日前なので通る頃には解決しているかもしれない。一応メモを取りメモ帳を閉じた。
君は酒場で食事を終えると町の噴水に向かった。
すると、まだ待ち合わせには早いがセレナは既に待っていた。
馬車があり荷台には乳製品がのっていた。
「あら、お早いですね」
君はちらっとセレナの方を向き隣へ座った。
「少し早いですが向いますか?」
君は肯定し町の出口へと向かった。
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調査隊が到着来て5日で調査隊の数は1/3減っていた。
獣に殺されているのではないかという噂が村に流れていた。
君は魔物についての情報を集めるため村唯一の小さな酒場に足をいれた。
4,5日前は見かけた調査隊の人達はいなかった。
君は仕方なくマスターやこの村に立ち寄っていた商人や冒険者に声をかけた。特に目立った情報は得ることができなかった。
君は家でシュナがご飯を作って待っているのを知っていたので飲み物だけをたのみ酒場を出た。
酒場を出ると月が綺麗に輝いていた。
まだ春であったため夜は寒い。君は体を震わせ家へと向かう。
少しあるいたところに君の家はある。
「ただいま」
「お帰りなさい」
シュナは出迎えてくれた。黒いショートヘアーが少し湿っていた。
彼女はできあがっていた野菜炒めを暖め直し君の食事の準備をする。
君は食卓に座る。
「何してたの」
「酒場で獣の情報を集めてた。特に目立った情報はなかったよ」
シュナは暖め終わると野菜炒めとご飯を君の前にだした。
君は野菜炒めを食べ始めるとシュナは微笑んでそれをみていた。
どこか君を子供扱いしている節がある。
シュナと暮らし10年がたとうとしている。
5年前にシュナの両親は病で亡くなった。
お父さんが倒れると後を追うようにお母さんも倒れてしまった。
シュナの両親はとても優しかった。君を我が子のように接していた。
君は両親が亡くなる前にシュナが結婚していればと思うときが多々ある。
君が成人を迎えるまでの5年間は私はちゃんと親の役目を果たすと言っていたと風の噂で聞いた。
実際村人が気をきかせてお見合いの話なとを持ってくることがあったがシュナは全てを断っていた。
君はシュナに自分は大丈夫だからお嫁にいったらと言ったことが一度ある。その時はシュナは大きな声をあげて怒った。シュナが大きな声をあげることなどみたことがなく君は驚きのあまりシュナが何を言っているのか聞き取ることができなかった。
あれ以来君はその話をシュナの前ですることはなかった。
シュナの両親が亡くなってからの生活は厳しかった。君は畑の手伝いを始め、今ではシュナの両親が残した畑を一人で見ることができなんとかなったが数年前までは大変苦しい生活だった。
「明日早く帰るの」
「うん、そのつもり。何かある」
「買い物に行こうと思ってね」
「わかった」
君はシュナの方をみる。
「なに?」
「なんでもない。」
君は明日の買い物でシュナに何かプレゼントしよう、そう思った。
拾ってくれてから10年のお礼として。
君のその日は朝から畑に出て作業をし、昼には薬草をとりに村を出て近くの山に入った。
薬草や山菜などは獣や山賊などが多いため取りに行こうとするものは少ない。冒険者や薬屋などが取りに行くくらいだ。
君は拾われてから剣を習った。シュナのお父さんが結婚する前までは冒険者をやっていたとのことで護身術などを教わっていた。といっても基礎がほとんどで別段強いわけではない。
お父さんが亡くなってからは冒険者時代に使っていたという剣を形見として貰った。剣は高く普通の農家では買えない、何かあったときのためにということで形見として残していたようだ。
剣は長く大きかった。
山に入ると薬草や山菜を探す、見つけたら持ってきた手提げ鞄のなかにいれる。まだシュナのお父さんが生きていた頃よくついて薬草をとりに行っていたため、薬草や山菜を見分けることができた。
薬草や山菜をつみ終わると薬屋に持っていき売った。
冒険者などは大きい町なとでないといないため薬屋は君を重宝していた。
山菜は一度家に帰りシュナに渡す。
その後は加治屋に行き手伝いをした。
この村は大きな町と町のちょうど真ん中にあり冒険者が立ち寄ることが多かった。宿屋や酒場、加治屋、薬屋はそういった冒険者を相手に商売をしていた。
加治屋ではたまに形見の剣を研ぐために砥石などを借りてメンテナンスを行っていた。
君は手伝いが終わると店主からお金を貰い店をでた。
店をでるとなにやらごそごそと動く影が門の方に見えた。
"獣か?"君は警戒しながら門の方に近づいていく。
今日は山で山菜をとるために剣を携えていた。
剣の柄の部分を握りながら音をたてず近寄っていく。
誰か読んだ方がよいか?
君は考えていると影は君の方を向いた。
「誰だ」
君は影に聞こえる声で言った。
まだ、影との距離は離れていてどのような容姿かわからない。
影は君の声を聞くとすごい勢いで山の方へ逃げていった。
君は走って影のいた場所までいくとそこには得たいの知れないものが転がっていた。
「なんだ」
暗くてよく見えない。
鞘に入っている剣でつついてみる。
やわらかい。更に色々なつついていたらカツンと音がした。
君は火打ち石を鞄から取り出しそれを叩くすると一瞬明るくなる。
甲冑が見えた。君は嫌な予感がして町の方に戻り酒場にいたマスターと冒険者に事情を話し松明をかりて門の方に冒険者と向かった。そこには調査隊のメンバーの死体が横たわっていた。
首から上がなく噛み千切られたよう跡がある。
冒険者は死体を探った。すると、プレートが見つかった。
銀のプレートに名前が刻まれていた。
銀のプレートということはなかなかのうでの者だろう。
そう思っていると山の方から男の悲鳴が聞こえた。
「いくか」
「はい」
冒険者は死体が携えていた短剣を君に渡した。
「君の持っている長い剣では木に囲まれた山のなかでは使いにくかろう」
君と冒険者は悲鳴のした方に向かった。
「おーい大丈夫か」
冒険者は叫ぶが声は帰ってこない。
嫌な汗が君の頬をつたう。
山の近くまでいくと前方に影が転がっていた。
「こちらの位置は松明をつかっているので獣からはばれていますよね。そのうえ松明はそんな先まで照らせませんし、獣が襲ってきたら不味いですね」
「固まって行動しよう、片方が襲われることがあれば残りの片方が斬りかかれるように。絶対に離れるな」
君と冒険者は影のもとに近寄る。
「やはりか」
それは死体だった。首があり得ない方向を向いていた。
「引き換えそう、村人に今日は外に一歩も出ないことを伝えろ。俺はギルドに向かって報告をする」
君と冒険者が引き返そうとしたそのとき、
パキッ、前方から木が折れる音がした。
冒険者は体制を低くして持っている松明を音のした方へと投げた。
すると、そこには人がたっていた。
フードをかぶり顔が確認できない。
「大丈夫ですか」
君と冒険者は安堵してその人の前まで進む。
「ここは危険だ。村まで戻ろう。」
冒険者がその人の近くに来た瞬間だ。
「えっ---」
その人はいグネグネと曲がっているような歪な形をした短剣を冒険者の胸に勢いよく突き立て、冒険者は勢いのまま仰向けに倒れた。
「---」
君は突然の出来事にただ見ていただけだった。
目の前には仰向けに倒れた倒れた冒険者とそれに股がり短剣を突き立てているフードを被った人。
「ああああああぁ」
君は手に持っている短剣をフードに向かって斬りかかる。
フードはそれを刺していた短剣を引き抜き受け止める。
フードは冒険者が持っていた剣を手に取り君に向かって振り下ろす。
君はそれを後ろに下がりかわした。
君は体制を低くし持っていた松明を地面に落とし剣を抜く。
フードは君の方へと一歩足を進める。
君は後退り距離を取った。
君はフードを観察する。
もし、フードが冒険者の類いであればここは勝ち目がない。君はこの後どうするべきか思考する。
冒険者はピクリとも動いていなかった。
フードは低い姿勢をとりそれを維持したまま動かない。
君が下手に動いたらいつでも首を跳ねそうな雰囲気がした。
汗を拭わせてももらえない程だ。
逃げた方が得策だ。勝ち目は薄いし先程から一切動かない冒険者は死んでいる。
君は距離をとるため後ずさった直後。
冒険者がビクンっと動いたのが目にはいった。
かすかに呻き声が聞こえた。
生きていたのかそう思った直後ーーー
冒険者の体はビクンビクンと痙攣を起こし、さらには短剣が刺さっていた胸がブクブクと膨らみ始めた。餅を焼いたときの膨らみみたいに。やがてそれは全体へと移りふくれた部分が破裂したりまた膨れだしたりとその光景はおぞましかった。
「嘘だろ」
やがて冒険者は起き上がった。
それはおぞましい怪物で腕は大きくゆがみいように長く手の方は大きな爪があった。
また、冒険者の体は全体的に膨れ上がっており君よりも一回り大きい。
冒険者の顔は両目から血が流れており、鼻はひんまがり口は大きく頬の方まで裂けていた。
「ああぁ」
君が逃げ出そうとした瞬間、
フードに短剣で胸を刺されていた。
君はフードに向け剣を振ったがひらりとかわされた。
君は胸に刺さっている短剣を見た。
先程の冒険者姿が脳裏で再生される。
君は足をおり膝まずいた。
ドクンと体が大きく痙攣したのがわかった、君はそのまま横向きで倒れた。
全身が溶けるような感覚がした。ものすごく暑く、全身が切り刻まれているみたいに痛い。
君はもう一度ビクンと痙攣した後胸の方がブクブクと盛り上がっていくのを感じた、それは首から顔、胸から足へ全身に広がった。
「-----」
苦痛に耐えかねて叫んでいるが声にはなっていない。おそらく喉もブクブクに膨れ上がり原型をとどめていないのだろう。
君は薄れ行く意識のなかフードが胸から短剣を引き抜き冒険者だったものを引き連れ町の方へ向かっていくのを見た。
君が目を覚ますと綺麗な星空が見えた、全身が痛い。
何が起こっていたのか思い出そうとする。
君は自身に起きたことを思い出し、すぐに立ち上がる。
全身に違和感を覚える。
冒険者の松明と自身の松明がまだ燃えているところを見るとそれほど気を失っていない。
足元を見たとき違和感の正体がかわった。
君の足は歪な形をして太くなっていた。腕は若干太くなっていた位ではあるが手から先は指が長くなって指の先は鋭利になっていた。
「シュナ」
声はがらがらと雑音が混じっているようだった。
君は町の方を向き走り出した。
あのフードは町に向かった。シュナだけでも助け出さねば。シュナは自分の姿を見て恐れるであろうがなにがなんでも連れ出す。
君は足が速くなっているのに気づく。足の形が歪であるためこけそうになるが足の速さは人のそれではないだろう。
君はすぐに町の門までつくと真っ先にシュナの家に向かう。
玄関の扉を突き破るように開けるとそこにはフードと胸に短剣を突き刺されたシュナがいた。
「ああああぁ」
君は鋭利になった指でフードを切り裂こうとするがフードは華麗に避けた。君は家にある色々なものともろともフードを切り裂こうとするがすべてかわされる。
「-----」
フードはなにやら唱えるとフードの後ろの壁に大きな音と共に穴が空いた。そしてフードはそのまま穴から逃げて消えていった。
「シュナ」
見るとシュナは短剣が胸に刺さったまま仰向けに倒れていた。
それを君は抱き抱える。
呼吸がない。心臓も動いていなかった。
君は外が騒がしくなるのを感じた。村人が音に気付き出てきたのであろう。
君はシュナを抱き抱えたまま外に出て走り出した。
君は山に入ると洞窟までシュナを運びその後洞窟を離れ先程の松明と剣を広いにいった。
松明は既に消えていたので剣と短剣だけ拾い洞窟に戻る。
君は闇のなかでもものが見えるようになっていた。
洞窟に戻ると剣と短剣を地面に置きシュナをみる。
君や冒険者のようにブクブクと晴れてはいなかった。
「あぁぁ」
君は泣いた。
やはり、シュナは呼吸してないし心臓も動いていない。
君はぐったりと動かないシュナを抱きしめ空を見た。
そして泣きつかれて眠るまで嗚咽をもらした。