俺のメイド様
個人的に愛情が暴走してる変なメイドさんや変な執事が大好きです
私の名は道産冥、ちょっと小柄でスレンダーなボブカットの二十歳です
日本有数の企業、白州ノミタイのお屋敷で社長の一人息子(十六歳)、所謂御曹司様の専属メイドとして働かせてもらっています
今日はメイドの私の仕事を……お坊ちゃまの素晴らしさを余すこと無くお伝えできたらと思っております
朝5時25分に目を覚ましますが、目を閉じたまま備えます
ピッ
『おはよう冥ちゃん、今日もいい朝だね』
朝5時30分に目覚ましが録音された音声を流し、私に心地よい目覚めを与えてくれます
「おはようございます お坊ちゃま」
完全に目は覚めてますが、わざと微睡んだように言うのが最近のマイブームです
素早く身支度を整えると朝食作り、もしくは軽い清掃の時間です
お坊ちゃま付きのメイドは私を含めて3人居るのですが、昔は誰がお坊ちゃまの朝食を作るか、誰がお坊ちゃまを起こしに行くかで、壮絶なジャンケンバトルが繰り広げられていました
しかし留まる事無く磨き抜かれる動体視力とテクニックと駆け引きで、終わる事なきあいこが続くようになり当番制になりました
今日の私は朝の清掃後にお坊ちゃまを起こしに行ける至福の当番です
作った料理を食べて貰える朝食当番や食べるお姿を間近で見れる給仕当番も捨てがたいのですが、朝一番にお坊ちゃまを見れるのに比べたら見劣りします
朝7時になりました、これよりお坊ちゃまを起こしに行きます
身だしなみ良し、ブレスケア良し、指差し確認を終えドアをノックします
トントン
「お坊ちゃま朝ですよ」
決して声を張り上げず優しくお声を掛けるのがメイドとしての嗜みです、普段より声が小さい気もしますが他意はありません
いつものように起きておられぬご様子なので、ドアをそっと開け起こさないように入ります……なにか矛盾があったかも知れませんが気にしたらいけません、これもメイドとしての嗜みなのですから
部屋に入るとお坊ちゃまがベッドで大の字になって寝ておられます
おっと隠しカメ……胸ポケットのスマートフォンの録画をうっかり作動させてしまいました、操作する時間も惜しいので仕方なくそのままです
お坊ちゃまの寝顔を数秒間眺め顔色等を確認し、その際は愛くるしいお顔を抱き締めたい欲求をグッと我慢します
机に向かい今日の学校へ持って行く教科書等の準備を音を立てないように済ませカーテンを開ると、至福の時間の始まりです
ヒソッ
(おはようございます お坊ちゃま、朝ですよ)
小声で起こさないようにお声を掛けますが起きる気配がありません、仕方がないのでギュッと抱き締めて耳元で再度囁きます
「お坊ちゃま起きないと遅刻してしまいますよ」
「うう~ん……冥ちゃんだ……おはよう……」
「おはようございます、ほら起きてください」
寝惚けてるお坊ちゃまを抱き締めたまま身を起こさせ、後ろに回り御髪を整えます
「さあお顔を洗いお着替えください」
「うん、いつもありがとう冥ちゃん」
すっかり目が覚めたのか、極上のスマイルを向けて下さるお坊ちゃま
今私が死んだらきっと天国……いえ神になって世界を愛で包める自信があります
着替えを済ませたお坊ちゃまが朝食をとってるお姿を眺める私と朝食当番
「今日のもおいしいね」
給仕に笑顔を向けて言ったその言葉を聞き、小さくガッツポーズする朝食当番を見逃しません、この後はきっと私に勝ち誇った顔を見せるでしょう、だがそんな真似はさせません
朝偶然撮れたお坊ちゃまの極上スマイルを彼女にだけ見えるように再生します
(コピーはよっ)
唇を一切動かさず腹話術で私にだけ聞こえるように囁く彼女、因みにこれはメイドの必須技能です
(後でお坊ちゃま板にうpします、それまで我慢なさい)
(おk)
いくらメイド同士とはいえその言葉使いはどうなんでしょう?そしてお坊ちゃま板は秘匿事項なので説明出来ません
登校の時間になり車に乗ったお坊ちゃまをお見送りした後も、私達は精一杯お仕事をします
少しでもくつろげるように、少しでも快適であるように整える事こそ私達の生きがいなのですから
小休止のお茶の時間もお坊ちゃまの為にあります
今日の議題は『第二十三回犬川様攻略会議』です
現在お坊ちゃまは同級生の犬川様へ恋しておられます、護衛の忍者からその事を報告された当初は混乱が当家を包みましたが、お坊ちゃまが見初めたお相手なら素敵な女性に違いない(確信)という結論が出てすぐに沈静しました
社交的でアウトドアが趣味の優しい女性で、何度か当家所有のキャンプ場でお話しましたが、今では家人一同応援しております
さて今回はお坊ちゃまの性的嗜好を何処までリークするか話し合っています
パソコンの隠しファイルやブックマークに検索履歴から、お坊ちゃまの嗜好は全て存じ上げております、ゴミ箱にポテチの袋に詰めてティッシュを捨てるのもバレています
「好みのタイプが犬川様と同じ巨乳なのは言うとして、濡れ透け好きなのを教えるかは躊躇しますね」
私の言葉に他のメイド達が頷く、このお屋敷にはお坊ちゃま付きのメイド以外にも十人のメイドと執事にコックや庭師等が居ります
「犬川様が野外で恥ずかしい思いをする可能性がありますからね」
「ポテチのティッシュは伝えるとして、濡れ透けは室内限定と言えば大丈夫なんじゃありませんか?」
「ポテチは言わないであげろよ」
熱い議論が続きます、そういえばこの会議はお坊ちゃまには秘密なんですよね、教えようとしたら男性陣から「それだけは止めてあげろ」と言われて伝えてないのです
ご帰宅の時間になりお坊ちゃまをお出迎えします、そして私のお坊ちゃまタイムは終了です
この後私にはお坊ちゃまのスケジュール管理くらいしか仕事が残ってないません
夕食はコックが、給仕は朝の当番が、軽食やお茶は朝食当番がそれぞれするので呼ばれない限りお坊ちゃまと語り合う事はほぼ無いのです
「やはり何故かお坊ちゃまが中学に上がると同時に無くなった、お風呂当番を復活させなきゃ」
熱い決意を胸に私はスケジュール管理を始めます
と言ってもお坊ちゃまは高校生、任されてる会社も二つだけですし、後は犬川様の為にキャンプ場をいくつか購入されたくらいです
上がって来た報告書をまとめ要約し、詳しく知りたいと思った所は担当者メールし、その旨をまとめスケジュールを作っていく
おっと、忍者からも犬川様レポートが来てる
全てチェックし終わりお坊ちゃまに報告書を転送したのは6時前
後一時間で夕食ですね、片付けてお坊ちゃまの食事を見に行かなければ!
♪
スマートフォンがお坊ちゃまの着信音を一音鳴らした瞬間に私は電話に出た
「はい冥です、いかがなさいましたか?」
「うん……犬川さんレポートでお肉の話が載ってたんだけど、詳しく知りたいと思って……ごめん、今時間あるかな?」
「今すぐお伺い致します」
犬川さんレポートと仰った時には忍者から来た原文をメモリースティックに移し終え、私は歩き出していた
どうやら今日のお坊ちゃまタイムにはボーナスタイムがあったらしい
もし面白いと思ってくれたなら、過去作の「しゃっくりの止め方」と「魔王ですが勇者に会いに行きます(怒)」も読んでくれたら嬉しい




