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第8話【ふと、彼は迷いを抱く】

 12月になって季節は完全に冬になっていた。

昼過ぎ、今日は学校も休みで、特にやることもなかったので散歩でもすることにした。

 パーカーの上からコートを着てマフラーをつけて家を出た。

寒いのは嫌いだ。俺は断然夏の方が好きだし、開放感がある。でも、葉のついていない木の並木通りだったたり、そういう冬の乾いた町の雰囲気というのはどこか好きだった。

 そんな町を特にどこか行くでもなく何となく歩いていた。

冷たい風を感じマフラーを上げて口元を隠した。

近所の公園に差し掛かった辺りで公園のベンチに座っている2人の人影が目に入った。一人は 柴乃しのそしてもう1人は 星宮ほしみやだった。

 紫乃は茶色のコートにジーンズ、赤いマフラーをしている。星宮は黒のコート、ひざ丈くらいのベージュのスカートにタイツをはいている。

 二人を見つけて、ふいに顔をそらしてしまう。

 すると向こうも俺に気づいたみたいだった。


「お~。しょうじゃん!」


勿論、最初に話しかけてきたのは柴乃の方だった。


「おう……」


ホントこいつ常にテンション高いな……。こんな寒い日、俺そんな元気でないよ……。


「二人とも何してるの?」


 と俺が聞くと 星宮が笑顔で答えてくれた。


「柴乃ちゃんの家で遊んでて、それで散歩でもしようってことで来たんだ。」


「へー」


 そう口にしてから、自分で聞いておきながら少し無愛想になってしまった気がして、すぐに俺からまた、話を切り出した。


「ホント2人とも仲いいよな」


 すると、すぐに柴乃が悪戯いたずらな笑みを浮かべて、


「羨ましい?」


 なんて聞いてきた。これは自分と仲良くなれてって意味と、星宮と仲良くなれてって意味の両方を含んでいそうだったので、変に反応するはやめておいた。


「いや……、まぁ……、別に」


 するとそんなやり取りをしていた俺たちを見て星宮が俺たち二人に言った。


「でも二人もスゴく仲いいよね」


「まあ 俺らは幼馴染みだしな」


「まぁそうだね、お互い変な気使わなくてもいいし」


と柴乃が言った。すると星宮が、


「なんか、そいう関係っていいなー。憧れる」


 と、俺達に視線を向けた。そして星宮は会話を続ける。


「2人って付き合ってるの?」


 こう自分の目の前で言われてしまうと自分は恋愛対象として見られてないのだな。といつも以上に実感してしまう。それと同時にやっぱり現実なんてこんなものだと、いつも通りの考えが浮かぶ。

 

「別に付き合ってないよ」


「そんな即答しなくても……」


と柴乃が少し笑いながら言った。


「いや、実際付き合ってないし」


「まあ、そうだけどさ……」


 そういった柴乃の様子がいつもと違って少し寂しそうな表情だった気がした。 

 柴乃は別の方を見ていて顔がはきっり見えた訳ではないけれど、昔から知っているからこそ、それに気づけて、それでいて少し気になった。


 すると横から星宮の声がして俺の意識は会話の方に戻された。


「もうすぐ冬休みだね」


「まぁそうだな。期末も終わったしな……」


「また前のメンバーで遊びたいね~」


 と柴乃が言った。


「じゃあ 冬休みどっか行かない? 初詣はつもうでとか?」


 と俺が言うと二人ともすぐに笑顔で賛成してくれた。


「じゃあ俺が尚志ひさしにも連絡しとく」


「よろしくね~」


 そう言った柴乃の様子は、もういつも通りに戻っていた。









      *****************







 それからしばらく何気無い話をして俺たちも解散した。

 冬は日が短いので時刻は五時ほどだったが、太陽は既に沈みかけていて、町のコントラストは赤に染まっていた。

 柴乃の様子は気になったけれど人の心配をしている場合ではない。初詣に行くとなれば、たとえ向こうが俺をなんとも思ってなくても、こちらから動かなくては何も変わらない。

 だけど尚志の事もあるしな……。勿論、尚志の力にもなりたいけどこういう場合……。


「はー……、どうすりゃいいんだか……」


 そう呟いた俺の声は白い息と共に、町に消えていった。



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