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第7話【彼の理由】

 水族館に行ってから数日が過ぎていた。

授業中、俺は外を見て頬杖をつきながらここ最近毎日のように考えていることを、また考えていた。

 どうして、尚志ひさしは俺にあんなことを言ったのだろうか。

 毎日その事を考えても、もちろん答えが出ることはなかった。

 あのとき、あいつからあの言葉を聞いたとき、俺はただただ衝撃で何も言うことができず立ち尽くしていた。 

 あいつも「お前にはいっとこうと思って」としか言わなかった。

俺もそれから「そ……、そうか」としか答えることができず、そしてすぐにあいつも、


「じゃ、また明日な!」


と言ってその日は俺達は別々に道へ別れ各家に帰った。

 次の日以降もいつも通りと言ってもいいのかは分からなかったが、普通にあいつとも会話をしている。

でも、あの日以来あいつはその事に関しての話をしないので、こちらからも言い出しづらい……。

 そんなことを考えながら「はー」とため息が漏れた。

 俺から言い出すのも変だし、俺も星宮ほしみやのことを気づかれるかもしれないし……。


「じゃ この問題を……守山もりやま


 遠くでそんな声がしていたが、このときの俺には聞こえていなかった。

 でも、このままという訳にはいかんしな……


「守山ー」


 この時、微かに聞こえた声の方へ顔をやると俺の席の目の前には先生が立っていた。


「お前が、ボーっとしてるなんて珍しいな。お前、自分が当てられてること分かってるか? ちゃんと授業聞いてろよ~」


「あ……。すみません……」


 クラスで皆が笑いをこらえている。

くそ……。恥かいた






       ***************








 放課後、いつものように尚志と下校していた。


しょうが授業中にボーっとしてるなんて珍しいな。なんかあったのか?」


「まあ普通に考え事かな」


 いや……、いつまで考えてても仕方無いし、自然な流れで聞いてみるか


「まあ 俺の事はいいからさ、ふと今思い出したんだけど 尚志は、なんで星宮なの?」


 尚志は少し考えたあと 口を開いた


「あの日の話か……。んー、なんでだろうね。自分でもよくわからないんだ」


「え?どうゆうこと?」


「うまく言えないんだけど、特定のここが好きって訳じゃなくてさ、全てって言うのかな……。まぁ俺が星宮の全てを知っているわけないんだけどね……」


 尚志は苦笑しながら話を続ける。


「好きな人でも他人は他人だから、全てを知る、理解するなんて言うのは、きっと不可能で、それでも、もっと知りたいって、そう思えるんだ」


 思ったよりも深い回答が返ってきて少しビックリした。

 そして、そう話している尚志が俺には普段より大人に見えた。

 

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