第33話【再会】
紫乃が学校を休んだ二日後の日曜日。
部屋に入り込んできた日差しで目が覚めた。布団から上半身を起こしスマホを手に取り画面をつけた。しかし相変わらず紫乃からの返信はなかった。
「はー」
その画面を見て無意識に小さなため息をついた。
まあ、別に返信が来てるとは思ってなかったからいいけどさ……。紫乃はこれを意図的に返信をしてないのか、それとも体調がまだ治ってなくて返信できないのか。どっちなんだ……?
でも、これに関しては俺が今いくら考えても答えが出るわけじゃないし、考えても仕方のないことか……。
そして俺はそのまま布団の上にスマホを置き、ベッドから起き上がった。そして部屋から出て階段を降りリビングへ向かった。
「おはよー」
うとうとしながらリビングへ入り、別段リビングに誰がいるか確認したわけでもなくそう言った。
するとすぐに母親から言葉が返ってきた。
「おはようって言ってもう十一時なんですけど~」
そう言われ改めて部屋の時計に目を移すと時計は十一時五分を指している。
マジか……。さっきスマホ見たとき時間までは見てなかったけど昼近くだとは……。休みの日はつい寝坊してしまう……。
休日は朝を気にせず寝ていられるから好きだけど、起きたときにちょっぴり損した気分になる。なんだろう。この複雑な感じ……。
「起きたならボーッとしてないで早く着替えてくれー。家が片付かん」
母は俺の考えを遮りそう言った。
「りょーかい……」
俺はそう言って寝巻きから着替えを始めた。ズボンを脱ぎ青いジーンズに足を通し、上の半袖の服を脱いで黒のTシャツを着た。そして最後に靴下を履いた。
着替え終わるとテーブルの方へ行き椅子に座りそしてリビングのテーブルに用意されていた朝食を食べ始めた。勿論この時間なので自分以外の朝食はテーブルにない。父も母もとっくに食べ終えている。
にしても眠たい……。かなりの時間寝たにも関わらずなぜこんなにも眠たいんだ……。ホントに俺、朝苦手だわ……。
そして俺は朝食を食べ終えるとその場から立ち上がりリビングを出た。そして階段を登り自分の部屋に戻った。
「ふー」
と大きなため息をつきベッドに再び寝転がった。
特にすることもないので再びスマホを手にとってSNS等を見てなんとなく時間を潰していた。勿論その間に紫乃からメールが来ることはなかったけれど……。
そしてふと、時計に視線を移すと時間はちょうど昼くらいになっていた。
すると一階から母の声が聞こえてきた
「翔ー。あんたさっきご飯食べたばっかりだけど。どーする?昼ごはんたべるー?ラーメンくらいしかないけどー」
今ご飯食べたばっかりだからお腹もすいてないなー。さっきのが朝飯兼昼飯みたいな感じだったしなー。
「いや、いいやー。お腹もそんな空いてないし。腹へったら後で自分で作って食べるー」
寝転がりながらそう叫ぶと一階から「了解」という母の声が聞こえてきた。
にしても暇だな……。ちょっと出掛けるか……。本屋でも行こう……。
そうして俺はベッドから体を起こし立ち上がり勉強机のいすに掛けてあったショルダーバッグを背負い出掛ける準備をした。
家を出ると、一気に視界が明るくなった。
うわ……。眩し……。
休日とかは特に家でた直後っていつもこんな感じだな……。まあ、起きるの遅いのに加えて部屋のカーテンも閉めてたからな……。
ふー……。行くか……。せっかくだしチャリじゃなくて歩いてくかな……。
********
約10分くらい歩いて本屋につき、店の中へと入った。
俺は本屋が結構好きだ。なんだか落ち着くし、特になにか買うものを決めていない時も店内を見て歩くのが好きだから。今日も特に買うものは決めていないのだけれど。
そして今日も俺はなんとなく店内を見て回っていた。しかし小説の売っている本棚に差し掛かったとき見覚えのある人影を見かけた。その人物を見かけた瞬間、反射的に後退りしてしまった。そしてそれまで落ち着いていた俺の心は一転、急に鼓動が早まった。そう……。そこにいたのは紫乃だった。
向こうが気づく前に立ち去ろうとしたが、時すでに遅し。俺が後退りした瞬間に紫乃も俺の存在に気がついてしまった。
まさか、こんな思いもよらない時に再会してしまうとは……。
俺に気がついた瞬間、紫乃も気まずげな表情に変わりすぐに俺から目をそらした。
だが、こうなってしまってはもう今さら逃げようがない。 それにこれはすごくいい機会だ。紫乃とのこともいつまでも屁理屈ばかり言って逃げ続けるわけにはいかない。いつだって自分から踏み出せないけれど……こんなときくらいは……。
だが、会話の糸口が見つからない……。まずは体調の事を聞くか……。学校休んでメールも返信来なかったしな……。
「なあ、紫乃」
「何……?」
「いや、体調は大丈夫なのか……?学校も休んでたしメールも返信なかったから心配したんだけど……」
俺がそう聞くと紫乃は一瞬驚いたような顔をしたがすぐにまた、俺から目をそらし答えた。
「うん……。もう大丈夫……。今日朝起きたらだいぶ良くなったし……。メールはずっと寝込んでたから返信できなくて……」
終始小さな声で紫乃はそう答えた。返信できなかった理由がそれだけではないと思うけれど……。よし……。聞いてくれるかは分からんがそろそろ本題を切り出さなければ……。いつまでもこんな諍いを続けたくはないし……。
そう決心し俺は話を切り出した。
「紫乃……」




