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第31話【自己嫌悪】

 今回は殆ど星宮視点で描きました。主人公以外の視点を描くときつくづく思いますが、女子視点を描くのって難しいです。

 バレンタインから数日が過ぎたある日の夜。

 私、星宮愛香ほしみやあいかは自分の部屋で一人悩んでいた。

 あの日、バレンタインの日、帰り際に尚志ひさしくんを見かけた。

 それも、彼が女の子からチョコを貰っている瞬間に……。それにあの時は不意に隠れたしまったけれど……。


「はー」


 ベッドに寝転がり、大きなため息を漏らした。

 あの日から、いや……あの瞬間を見てしまってから心がずっとモヤモヤしていた。

 私に告白してきたくれたのに、他の女子からチョコもらって照れちゃってさ……。なぜか尚志くんを見たときそんなことを思ってしまった。すぐに我に返って、何考えてるんだ。私は……。ってなったけれど……。

 それからずっと、授業中などもその事を考えボーッとしてしまう。

 なぜ、あんなことを思ってしまったのか……。どうして、それを見たとき一種の寂しさのようなものを感じてしまったのか何度考えを巡らせても分からなくて、それがより一層私をモヤモヤさせていた。


「は……。尚志くんに告白された時は、私は恋愛ってまだよく分からないし、そんな気持ちで誰かと付き合うのも相手に失礼だろうと思って断ってしまったけれど……」


 独り言のように小さな声で呟き、再び考えを巡らせる。


「自分から断っておいて、こんなモヤモヤするなんて……。もしかして私って、付き合えないけど好きでいてほしいなんて、ひどく独りよがりで独裁的な汚い欲望を持った、独占欲にまみれたクズ人間なんじゃ……」


 その考えが浮かんだ瞬間、ひどく自分で自分が嫌になってしまった。

 もしそうなら私ってほんとに最低な人間じゃん……。本当にそうだとしたらどうしよう……。

 いつも相手の気持ちを考えて行動しているつもりなのに……。私ってただの偽善者なんじゃ……。

 ダメだ……。いつも一人でいるときはすごいネガティブになっちゃって、なんかどんどん自己嫌悪に陥ってる気がする……。

 こんなんじゃ、いつまでたっても解決しないな……。

 はー。私にもっと恋愛経験があればな……。

 尚志くんに告白された時だってもっといい返答ができたんじゃないかな……。


「はー」


 今日何度目だろうか再び大きなため息をついた。いや、今日に限ったことじゃないな……。ここ最近毎日だ……。

 最近は尚志くんの家に行った日から、また尚志くんと話せるようになってきたのにな……。また、話しづらくなちゃったな……。

 まあ今回に限っては私の心持ちの問題だけどさ……。

 明日、紫乃しのちゃんに相談してみようかな……。そうすれば、このモヤモヤした感じも何か分かるかな……。






             ********





――翌日の放課後――


「紫乃ちゃん。ちょっといいかな」


 帰り際、私は昨日考えていたことを相談するために教室で紫乃ちゃんに話しかけた。


「愛香ちゃん。どーしたの?」


「ちょっと紫乃ちゃんに相談したいことがあって……」


「そーなの?愛香ちゃんのためなら喜んでお話聞くよ!」


 紫乃ちゃんは胸に手をあて笑顔でそう言った。


「ありがと!紫乃ちゃん」


「どうする?また図書室とかで話す?」


「いや、それで帰り遅くなっちゃったら悪いし……帰り道に歩きながらでいいよ……」


「そう……?私は別に遅くなっても構わないんだけど……」


「ありがと……。紫乃ちゃん。でも極力迷惑かけたくないからさ……」


「愛香ちゃんは優しいね……」


「いや……そんなことないよ……」


 本当に……。昨日考えてたみたいに自分がもし本当にそんな人間なんだとしたら……。優しくなんてないよね……。


「はー」


 また、無意識にため息をついてしまった。

 紫乃ちゃんはそんな私を見かねて優しげな笑みを浮かべて言って。


「じゃぁ行こっか」


 そう言って紫乃ちゃんは教室の出口へと向かって歩いていった。


「うん」


 そして私もそのあとに続いた。








          **********






 正門を出て私と紫乃ちゃんは歩き始めた。


「なんかゴメンね……。紫乃ちゃん……。紫乃ちゃんも守山もりやまくんとの事で悩んでるときに……」


「いいって!気にしないで!私だってこの間相談のってもらったしさ!それで、どうしたの?愛香ちゃん」


 紫乃ちゃんは真剣で、それでいて優しい表情を浮かべて聞いてくれた。


「うん……実はね……。今、紫乃ちゃんが言ってた紫乃ちゃんの相談を図書室で聞いてたときあったじゃん?」

 

「うん。その時になんかあったの?」


「あの時私、塾あるって言って先に帰ったじゃん?」


「うん……。そうだったね……」


「その帰り際さ……。校舎内で尚志くんを見かけたんだよ。その時尚志くんさ女の子からチョコ貰ってる時でさ……。私その時とっさに隠れちゃったんだけど、それでその時の尚志くんを見てからなぜかすごいモヤモヤしてて……。それにその時の尚志くんを見てなぜか、私に告白してくれたじゃん。なんて自分勝手なこと考えちゃってさ……」


「そういうことね……」


 紫乃ちゃんは少し上を見上げそう呟いた。


「昨日も考えたんだけどね……。私ってもしかして独占欲にまみれた人間なのかな……」


 青ざめた顔でそう言った私に紫乃ちゃんは答えた。


「それは違うと思うよ。愛香ちゃん……。多分それはそういうことじゃなくてさ……」


「え?どういうこと?」


「んー。それは愛香ちゃんはそんな子じゃないし。愛香ちゃんがそんな気持ちに至ったのは多分……」


「でも、それ以外あんな気持ちになった理由なんて思い浮かばないし……。自分で無自覚なだけで私ってそんな人間なんじゃないかなって思っちゃって……なんか」


 そう口にして涙が出そうになってしまった……。急に自分が情けなく思えてきて……。


「愛香ちゃん。大丈夫だよ!泣かないで。そんなに自己嫌悪にならなくても大丈夫だよ!さっきも言ったけど愛香ちゃんはそんな子じゃないよ!!」


 自己嫌悪か……。思えば昨日の夜もそうだったな……。考えれば考えるだけ自分を責めちゃって……。


「愛香ちゃんってさ……。誰か、異性を好きになったことってある?」


 唐突に紫乃ちゃんはそんな質問をしてきた。


「いや……。ないけど……。なんで?」


「だからこそ分かりにくいのかもしれないけどね……。それは、愛香ちゃんが自分で自分自身と向き合って自覚するのが一番だと思うし、全部私が教えちゃうことは出来ないんだけどね……」







           **********






「紫乃とは相変わらずそうだな……」


 放課後、俺、守山翔もりやましょうは尚志と帰宅していた。

 その最中、尚志は唐突に俺にそう言った。


「まぁ、そうだな……」


 いつもなかなか自分から動けないからこそ……。こんなときくらいは……。

 今までとは違う……。相手は初めてクラスが同じになった女子でも、高校で初めて出会った女子でもなく昔から知る紫乃だ。

 なんでも話せていたからこそ……。こんなときくらいは自分から動けるように……。いや、動かなくては……。

 少しは成長しなければ……。

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