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第28話【何故かそんな気持ちに】

――放課後――

 

「いいですなー。尚志ひさしさんはモテモテで」


 教室で、俺は皮肉にも似た冗談を尚志にぶつけた。


「いや、そんなんじゃないって……」


「毎年思ってたが、どうやらお前はチョコレート会社に制裁されるべき側の人間だったようだ……。どうやら俺たちは分かり合えないらしい……」


 俺が少し声のトーンを低くして冗談でそう言った。


「いや、しょうさっきも似たような事言ってたけどさ、もっと夢持とうぜ?自分で言ってって悲しくなってくるだろ?」


 ああ、バレンタインは非リアのためのイベントってやつか……。うん……確かに自分で言ってって悲しくなったが、だがしかし……。


「いや、聞いてほしい。夢を見ないというのは別段悪いことじゃないだろ?夢を見ないってことは、しっかりと現実を受け止めて直視することができているということ。変に夢ばっか見て現実逃避してるよりもずっと素晴らしいことだと思うんだ」


「ああ、そう……。お前の言ってた非リアのためのってのも、ある意味現実逃避だと思うが……」


 ヤバい、尚志の可哀想な人を見るような目が日に日に俺の心をえぐっている気がする……。

 でも、客観的にあの姿見たら俺、相当可哀想な人だよな……。自分でもあんな変な理論ばかりペラペラ出てきてしまう自分が悲しい……。テストの解答は全然思い浮かばないのに……。どうやら俺は頭の使い方を間違えてるらしいな……。そんなことに今さら気づいた今日この頃……。

 てか、先生はテストで分からなくても勘でもなんでもいいから空欄をなくせっていうけど。無理ですよ。記号問題とかなら勘でいけるけど、漢字問題とかはマジで無理……。勘でも思い浮かばないから書けないんですよ……。仮に、無理矢理にでも勘で漢字を思い浮かべて書いたとしても返却の時に先生に珍回答みたいな感じで紹介されちゃうんだよな……。世界は残酷……。

 これはテストをこの世から無くすまで駆逐くちくしつづけるしかないな……。

 今、俺は思い出したのだ。難問に支配されていた恐怖を……。テスト期間に囚われていた屈辱を……。


「おーい、翔。大丈夫かー?」


 無駄なことを考えボーとしている俺の顔に向かい手を振りながら、尚志が問いかけてきた。


「あ、ああ。大丈夫だよ。それに、俺は別に現実逃避はしてない」


 と信じたい。


「そ、そうか?……」


 うん、信じてないですね……。

 まぁ、考えてみれば現実逃避って言えば現実逃避ですね……。


「まぁ、毎日リア充ウハウハ生活を送っているわけじゃないからな……。時には現実逃避もしたくないますわ……」


「認めたな……。あ……」


 尚志は教室の時計に視線を落とすと、何かを思い出したように席を立った。


「いきなりどうした?」


「いや、ちょっとこの時間に呼び出されてたの思い出して……。わり、ちょっと行ってくる」


 尚志はそう言うと教室から出ていった。

 モテる男子はいいですな……。


「ばーくはつしろー」


 俺は尚志に聞こえるようにそう叫んだ。




           ********



――数分前――


 図書室で私と紫乃しのちゃんは勉強をしていた。


愛香あいかちゃん、どーすればいいかなー?」


 紫乃ちゃんはが机に顔をつけながら聞いてきた。


「どこか、分からない問題あった?」


 そう私が聞くと、紫乃ちゃんは顔を机から上げ少し元気がなさそうに言った。


「いや、問題じゃなくてさ……。しょうとのこと……」


「やっぱり、守山もりやまくんから謝ってくるの待つんじゃなくて紫乃ちゃんから謝った方がいいと思うな……」


「でも、もとはといえば翔が……」


「いや、そうかもしれないけど、紫乃ちゃんも全く悪くないって訳じゃないんだしさ……」


 すると、紫乃ちゃんは少し苛立ちながら言う。


「まぁ、それは分かってるんだけど……。向こうも謝ってこないっておかしくない?翔だって悪いじゃん……」


「でもさ、紫乃ちゃんはずっとこのままでもいいの?」


「それは……」


「ちゃんと、仲直りしないとダメだよ……。今年は守山くんにチョコあげるの?」


「いや、今年は……用意してない……」


「そっか……、まぁ、それは仕方ないね……。こんな状況だし……」


「うん……」


 紫乃ちゃんは、そうポツリと呟いた。

 そして無意識に図書室の時計に時計に視線を向けると時計は四時三十分を指している。

 あっ今日五時から塾あるんだった!


「ゴメン。紫乃ちゃん!私、今日塾あるの忘れてて、もう帰らなきゃ……」


「あ……そうなの?私はもう少し勉強してくよ。話聞いてくれてありがとね!」


「うん!また明日!」


「また明日!」


 そして、お互い手を振って、私は紫乃ちゃんと別れ図書室を出た。

 ちょっと急がないとな……。最悪このまま帰りに塾によって……。

 私は少し早足になりながら廊下を歩いていった。そして曲がり角を曲がったときにこちらに背を向けてたっている知っている人影が目にはいった。

 それを見て何故かとっさに後ろの戻り壁に隠れてしまった。

 あれ尚志くんだよね……。それに私なんで隠れちゃったの……。

 壁から顔を覗かせると尚志くんの前には女子が一人立っていた。その子は尚志くんにチョコを渡している。少し距離があるので会話までは聞こえない。

 尚志くんはチョコを受けとると頭の後ろに右手をあて、照れくさそうにしている。

 その瞬間見えた彼の横顔はチョコを渡した女子に笑顔を向けているようだった……。

 それを見たとき何故か、一種の不安、そして寂しさに近い感情に襲われた。

 なんで……?この前私に告白してくれたじゃん……。

 何故かふと、そんなことを思ってしまった。

 あっ!と突然浮かんだそんな考えに自分で驚いた。

 なんで、あんなこと思ったんだろう……。私が振ってしまった人が私を忘れ新しい出会いをすることができたのなら彼にとっても私にとっても良いことのはずなのに、どうしてこんな気持ちになるんだろう……。

 

 

  

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