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第20話【優しさ】

「それで、話ってなんだったの?」


 自分から話を切り出してしまったためみなみの話を聞いていなかったことを思い出した。


「さっき言っちゃたけど逆にこれでよかったかもってそう言っておきたかっただけ……」


「ああ……そうか」


 その言葉を聞いて不意に昨日から何度も考えていることが再び脳裏をよぎった。

自分はもっとなにか出来たのではないかと。


「じゃぁ……。しょうくん私行くね。色々ありがと!」


 そう言って南は教室を出ていった。


「俺も行くか……」


 そう呟き俺は誰もいなくない教室を後にした。

そして廊下を歩きながらふと考える。

ありがとう。か……。果たしてえ俺は感謝されるようなことを出来たのだろうか?

感謝に値することを結果を残せているのだろうかと。

俺は出来ていた。そう肯定することはできなかった。







     ***************












――翌日――


昨日と変わらぬ教室の光景。


 私、星宮愛香ほしみやあいかは自分の机で両手で頬杖をつき、尚志(ひさし)くんのことに関して悩んでいた。


 はー。尚志くん普段と様子変わらないけど、あの事気にしてないのかな……。そんな訳ないよね……。

空元気だよね……。 どうすればいいんだろ……。ちゃんと話した方がいいよね。でも何て言えばいいんだろ……。


「はーーーーー」


 深いため息をつき机に顔を伏せた。

今までこんな経験無かったからな……。こんな時どうすればいいのか分からない……。

第一私もあのとき突然告白されてビックリしてたしな……。


「はーーーーー」


 再び深いため息をつく。

 私この一日で何回同じこと考えてるんだろう……。

自分が断った直後の尚志くんの表情を思い出してしまい、何度も心がチクリと痛む。

彼は気にしないでくれなんて言ってくれたけれど、あんな表情で終われてしまってもスッパリ気にしないなんてことは出来ない。


「どーしたの?愛香ちゃん!!」


 悩んでいた私の肩に紫乃しのちゃんが後ろから手を回してきて話しかけてきた。


「あっ紫乃ちゃん」


「どーしたの?いつになく神妙な顔して」


「まあ、ちょっと色々あってさ……」


「お悩み事なら話聞くよ!」


「ありがとね!紫乃ちゃん……。うん……実はね……」


 そして私は一昨日おとついあった事と今悩んでいたことを紫乃ちゃんに打ち明けた。




「ほ~。なるほどね……。それで尚志の方見てたんだね……」


「うん……。どうすればいいのかな。っと思ってて……」


「そんなに気にしてるなら、もう一回ちゃんと話してOKする……。なんて出来ないかよね……」


「うん。そうだね……。尚志くんがそういってくれたのは嬉しかったけど私恋愛とかあんまりしたことないし尚志くんのこともそんな風に見たことなかったから……。だからこんな中途半端な気持ちで付き合うのは尚志くんにも失礼かなって……」


「そっか……。」


 紫乃ちゃんはそんな私の意を理解してくれたのか優しげに微笑んだ。


「いや。愛香ちゃんの判断は正しいと思うよ?ちゃんと自分の意見を持てて決断できてて」


「そうかな……」


 私は自分のした決断に自信がなく少し下へとうつむいた。


「紫乃ちゃんは優しいよね……。そうやっていつも私から何か言わなくても心配してくれてさ……」


「私なんか全然だよ。愛香ちゃんだって自分では気づいてないだけで十分優しいよ!」


「そうかな……。」


「そうだよ!」


「はは……。なんかこういう恋愛がらみの相談するのってちょっと恥ずかしいね。 紫乃ちゃんには好きな人とかいるの?」


「まあ……ね」


 紫乃ちゃんは頬を少し紅潮させ答えた。


「あ!それって……」









       ********


 







 帰り道……。

 

 俺と尚志は一昨日の事を話ながら下校していた。


「ちょっとは元気もどったか?」


「そんなすぐには無理だよ。まだ一昨日だぜ?」


「まあ、そうか……」


「教室とかでも、そんな無理に空元気じゃなくてもいいと思うけど?」


「そうでもしないとやってけないし、メンタルが持たないんだよ……」


「逆に星宮に気を使わすことになるかもよ……」


「あ……そうかもな……。そいつはちょっと嫌だな……。やっぱ変な気使わせたくないしな……」


「まあ、やっぱお前がさっき言ってたみたいにすぐに元気出すのも難しいだろうしな……。俺もお前に元気だして欲しいし何なら今度またどっか遊びに行くか?何なら俺のおごりでもいいぞ」


しょうってやっぱ優しいよな……。お前だって星宮のこと気にかけてるのに、あの時だってまだチャンスあるよ。とか言って励ましてくれたしさ……」


「いや、そんなことないよ……」


本当にそんなことないと思う。

俺は自分の事を優しいだなんて思ったことがない。

俺はいつも誰かから頼まれ事とかをされたときなんか特に、それは引き受けるけれど心のどこかで少し面倒くさいな……とか思ってしまう自分がいたり、人として、友達としてこうあるべきだ。という固定概念こていがいねんに従って行動しているだけの気がする。はたしてそれを優しいというのだろうか……。結局それは自身のイメージのためであったりとかか、自身に俺は他人のために行動できている。と言い聞かせるためにすぎないと思ってしまう。

だから俺は、本当に心の底から“この人のために行動しよう”と。そう思い行動出来ている人が羨ましいと思う。けれどそれを自分はなかなか出来なくて、それを出来ている尚志や紫乃が本当に羨ましいと思ってしまう。



「まあ、ともかくお互い頑張ろうな」


 そんなことを考えていた俺に尚志はそう呟いた。

 本当にこういうところが羨ましいと……。

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