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現実ラブコメはアニメのように甘くない  作者: 夜山なつめ
第3章 【それぞれの決断】
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第18話【自己欺瞞】

 尚志ひさし星宮ほしみやに告白する数十分前……。

南陽菜みなみひなも尚志と同じように少しでも緊張を和らげようと校舎内を歩き回っていた……。

 

「は~ヤバい……スゴい緊張してきた」


 何度も深呼吸をしているが一向に鼓動は静かになってくれなかった。

私が告白する時、尚志くんはどんな顔をするのかな……?

少しは喜んでくれるだろうか。それとも迷惑だろうか。

もし振られちゃったらやっぱり気まずくなるかな……。

振られちゃっても尚志くんはまた、話しかけてくれるかな?

そんな様々な考えが南の頭のなかを幾度となく飛び交っていた。

あと数分後の私はどんな感情なんだろう。喜んでるかな。それとも悲しんでるかな。

 今まで告白なんてしたことがなかった。けれどいつまでもなにもしなかったら、そのうち尚志くんは他の誰かと付き合ってしまうかもしれない。だからしょうくんにも話を聞いてもらって今日まで多少なりとも頑張ってきたつもりだ。

けれども自分がやって来たことに意味があったのかは分からない。

尚志くんにとっては何でもなかった事だったのかもしれない。

けれど、それでも別に構わないと思う自分がいた。

別にポイント稼ぎのためにだけにやっていや訳じゃなかったから。それで少しでも尚志くんが“助かった” “少しでも仕事が楽になった”そう思ってくれていたのなら、それだけで私にとっては十分だった。自分の好きな人のためになれるというのはすごく嬉しいことだから。

 そんなことを考えながながら歩いていたら、気休め程度にはなった。


「そろそろ教室戻ろうかな……」


 そう思い曲がり角を曲がったとき、曲がった先の廊下の少し奥から、こちら側に向かって歩いてくる星宮愛香ほしみやあいかの姿が目に入った。

向こうはこちらに気づいていない様子だった。

 「おーい愛香ちゃーん」と呼ぼうとした直後、愛香ちゃんを呼び止める尚志くんの姿が目に入る……。






       **********







「わるい翔、行ってくる」


 そう告げて星宮を追いかけていった尚志の様子を俺、守山翔もりやましょうは曲がり角の壁に身を隠しながら顔を覗かせ、見守っていた。


「星宮~ちょっと今いいかー?」


 その声を聞き、星宮は尚志に気づき、そちらへ振り返る。


「いいけど、何?尚志くん」


「俺さ……」


 その後の尚志の声は少し離れたところにいる俺の方までは聞こえてこなかった。尚志がこちらに背を向けている、というのもあったが。

 それにしても告白なんて間近で見ること自体、初めてなので見ているこっちまですごく緊張してくる。

星宮はただずっと、尚志の話を小さくうなずきながら聞いていた。でも星宮の表情は目が前髪で隠れていて、分からなかった。だから現時点で告白の結果は俺には分からない。

 その瞬間、俺は尚志達の立っている通路の少し奥にある人影を見つけてしまった。

 そう……南陽菜だ。

南は涙を流しながら元歩いて来たであろう方向へ走っていってしまった。

 俺はそんな表情を俺は直視することができずに、つい顔をそらしてしまう。

よりによって尚志が星宮に告白しているタイミングに出くわしてしまうなんて......。

そういえば南も教室にいなかったな……。

俺は今まで2人とも結果の良し悪しに関わらず告白できる前提で物事を考えていた。

が、南の方は告白自体することなく終わってしまったのだ。

なんて最悪な形になってしまったのだろうか……。

こうなる前に何か俺にも出来たのではないだろうか。

いつだって、後になって後悔ばかりだ。

きっと、南には告白する以上、振られる覚悟もあっただろう。でも本人の口から直接断られるよりも、自分が告白しようとしている相手が別の女の子に告白しているのを見てしまった今回の方がショックが大きいに決まっている。この場合、告白したときと違い「ありがとう。でも……」なんて優しさがある前置きもなにもないのだ。ただ唐突に自分の目の前で……。 

 そんな風に南のことを考えていると俺も元に尚志が戻ってきた。

 その尚志の少し下へうつむいた寂しげな表情から結果がどうであったにかは容易に察することができてしまった。


「はは……頑張ったんだけどな……」


「そうか……」


「俺って最低な奴でさ…… 本当はしょうも星宮のこと気にかけてたって気づいてたんだ。だから俺は、あのメンバーで水族館に行った帰り道、お前に星宮の事を打ち明けたんだ。ほんとごめんな……」


「いや、いいよ別に。俺はそんな風にまっすぐになれるお前がスゴいって思ってたんだ」


 いや、最低なのは尚志じゃなくて自分の方だ……。 

俺は親友が振られてもちろん悲しくなった……。

でもそれと同時に少し安心してしまったのだ。

もしかしたらこれで自分にもチャンスが来るかもしれないと。そう少しでも喜んでしまった自分がいたのだ。

いつから人の不幸を喜ぶようなこんな最低な奴に俺はなってしまったのだろう……。

 それに本当は自分で気づいていた。自分は星宮のことに対して、尚志のため、だとか俺と付き合わない方が星宮のためだとか、適当な逃げ道をつくって、それを正当化していたと。そんなのは自己欺瞞じこぎまんで本当は勇気がない自分からずっと逃げていただけなのだと……。



 


 




今回の冒頭は初めて翔以外の視点から物語を描きました。 うまく視点切り替えが出来ているか分かりませんが不自然が無いようにやったつもりです。

読んでくださりありがとうございました!

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