表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
現実ラブコメはアニメのように甘くない  作者: 夜山なつめ
第3章 【それぞれの決断】
17/40

第16話【二人の決断の行く末は】

 水族館にいく日のために作った俺と尚志ひさし星宮ほしみや紫乃しののSNSのグループは、今でも時々会話が行き交っていた。

 俺はそんな何気ない時間が好きだった。

尚志の恋愛が上手くいくのは素直に嬉しい。

けれど、自分自身のことや、そして何より最近は、みなみ 陽菜ひなの問題も重なり、時々複雑な気持ちになることが多かった。












************************












 1周間ほど前に降っていた雪は、もう跡形もなく、日当たりの悪い道の端からも既に消え去っていた。 

そんなある日の放課後、俺は教室で突然、尚志に告げられた言葉に戸惑っていた。


「俺さ……明日の放課後、星宮に告白しようと思うんだ」


 彼は、淡々と、まるでいつもの何気ない会話をするときと変わらないような口調で椅子に座り手を頭の後ろで組ながらそう言った。

 彼のすぐ横に立っていた俺はその瞬間、


「そ……そうなのか」


としか言い返すことができなかったが、次の瞬間、様々な考えが俺の脳裏をよぎった。


 尚志の告白が成功すれば俺も諦めがつくかもしれない。

 ではもし仮に成功してしまったら南はどうなるんだ……?


 いや、待て……。明日って言ったか?マズイことに……。

ちょっとした混乱状態から我に帰った俺はあることを思い出す。











         *******






 数時間前……

 

 休み時間に俺は以前と同様に、南に呼ばれ廊下に出ていた。


「どした?なんか用か?」


「いや……実はさ、私 明日の放課後さ、尚志くんに……告白しようと思いまして……」


「明日!?また随分急だな」


 思ってもいなかった言葉が返ってきたので、つい驚いて声が大きくなってしまった。


「まあ、いつまでもウジウジしてても、しょうがないしさ……」


 うっ……。 これまで恋愛ごとに関していつもウジウジしていて何もしてこなかった俺の心に、その言葉はグサッと刺さった。


「まあ実際にはローリスクハイリターンなんて都合のいいことは、この世にほとんど無いからね。何かを得るにはリスクを払わないと!」


 俺もそんなことは分かっていた。けどいつだって意気地いくじがなくローリスクハイリターンを期待してしまっている。そんな都合のいいものは無いと分かっているのに……。

 だから、目の前の南の、ちゃんと自分で何かを変えようとしている姿を見て、自分自身を酷く情けなく感じる。 


「まあ、そうだな。俺はいつもそうやって、割りきって考えることがなかなか出来ないから南は本当に凄いと思うよ...。それにしたって、よく明日告白しようなんて急な決断できたな……」


「別に今日だけで決断した訳じゃないよ!前々から考えてた。それでしょうくんにはちゃんと言っておこうと思ってさ」


「まぁ、こう言うのもあれだけど、俺が南を勇気付けてところで結果が左右する訳じゃないから今の俺には頑張れ、としか言うことは出来ないけどさ、頑張れよ!」

   

 こういった時は“絶対上手くいくよ”とか声をかけるのが普通なのだろうが、それはこの状況においてあまり意味がないと俺は思っている。 俺がこういった言葉をかけるとしても、それはその人が告白しようか迷っているときとかだろう、まあ、そんな時でもストレートに“絶対”上手くいくよ。とは言わないと思うが。

だからもう、ちゃんと決断をすることが出来ている南にその勇気づけはあまり必要ないだろう。

 さっきも言ったようにそれで結果が変わる訳じゃないからな。

その事は南だって分かっているはずだ。


「ありがとね。翔くん。頑張るよ」


 南は決意に満ちた表情でそう言った。


「おう。上手くいくといいな」

 

 だから俺は俺なりの最大限の応援の言葉を南に送った。







        *******









 最悪のタイミングだ……。

よりによって2人とも同じ日に告白を決断するなんて。そして、そのタイミングは同じく放課後。

 けれど、もうこの状況は俺にはきっと、どうすることもできない。

ましてや、どちらかの告白のタイミングをズラすことなんて。

 いや、俺がどうこうする、しないの問題じゃない。人のそういった決断を誰かが勝手に動かしていい訳がないし、そんなことをする権利は俺にはない。

 だから2人が明日告白すると決断したのなら、きっとそれが一番正しい。

 

 でもこの状況となると、本当にどうなるか分からなくなってくる。

現状では星宮の尚志に対する答えが一番想定がつかないので、なんとも言えないが……。


 そんな考えを頭の中で巡らせていたが、尚志の呼び掛けによって意識をそちらに戻される。


「どうした?翔。黙り込んで...」


「い……いや。お前が明日告白するってのが突然すぎて、ちょっと驚いてただけだ」


「そうか。まぁ結果は分からんがな……。てか、そんな驚くことか?」


 と、笑いながら聞いてきた。


「いや……、まあ普通に告白する。ならそんな驚かんけど、明日ってのが急すぎてな。」


「まあ、いつまでもウジウジしてられんしな」


 再び俺の心にグサッと刺さる。


「まあ、頑張れよ」


 無意識に南に言った言葉と同じ言葉を言ってしまう。

とても複雑な感情で、尚志の告白が上手くいけば嬉しいし、南の告白が上手くいけば嬉しい。

仮に尚志の告白が上手くいかなかったら俺だって悲しいし、南の告白が上手くいかなかった時もそれに同じだ。

 けど、両方上手くいくなんて事は絶対ないし、むしろ二人とも上手くいかないって事だってある。

それぞれの決断の行く末は……。

 そらは神のみぞ知るってやつだ。

 それに俺だって決断しなければならない時が来るんだ……。













 そして翌日……。


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ