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現実ラブコメはアニメのように甘くない  作者: 夜山なつめ
第3章 【それぞれの決断】
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第15話【感謝の言葉】

 日曜日の午後。雪が降ってから数日がたった。

 道に積もっていた雪はほとんど溶けていて、それが夜のうちに凍ってしまって、道は少し滑りやすくなっていた。

 日のあまり当たらない道の隅には、まだ少し雪が残っていたが、それでも町の景色は普段の光景に戻りつつあった。

 そんな景色に若干の寂しさを覚えつつ、家でやることも特になかったので、そんな町並みを見ながら散歩をしていた。

 冷たい風が強く吹いていて、マフラーをしていても寒くて、隙間から入ってくる冷気を、首に当てないようにと自然に肩が上がってしまう。

 駅の辺りに差し掛かったとき、駅から尚志ひさしの姿が現れた。

尚志は俺に気づくと、すぐにこっちに歩いてきた。


しょうお前何やってんの?」


「こっちの台詞だよ。なんで電車から降りてきたわけ?」


「いや、別に用があった訳じゃねぇよ。なんか、暇だったから、なんかちょっと出かけようかな~。と思って隣の町行ってきた帰り」


「なんだそれ」


「だから、じゃぁ翔はなにしてんだよ?」


「俺は……。まあ、お前と同じ感じ……」


 すると、尚志は少し微笑み、


「やっぱそうか!」


 と言ってきた。


 そういえば、最近はみなみの事とかがあって尚志とあまり、ちゃんと話せていなかった気がする。

俺達は特に、目的地などもなく、二人でそんな雪の溶けた道を歩いていった。



「尚志さ、最近どうなの?」


「?……なにが?」


 俺があまり詳しく聞かなかったため、本気で分からなかった様子の尚志が聞き返してきた。


「いや、だから星宮のこととかさ……」


 自分で言っていて、さっきよりも声が小さいことに気づいてしまった。

でも、尚志は気づいていないのか、気にしていないのか、さっきと同じ調子で答えた。


「いや……まあ見ての通り、ボチボチかな……」


「そーか」


「結構、話しかけてはいるんだけどね……」


 その光景は知っていた……。いつも俺は教室で見ている……。

尚志が星宮に話しかけている姿を……。友達と話ながらも、そんな尚志を寂しげな目で見つめている南の姿も……。


「まぁ、お前が、頑張ってるのは俺も知ってるよ。」


「そいつはどーも。まぁ結果は出せてねぇーから意味ねぇけどな」


 そんなことはないと思う。

尚志のやっていることが仮に結果に繋がっていなかったとしても、それにはきっと結果とは別に意味があるはずなんだ。

常に行動の意味=結果ではないと思う。

 行動をしてない俺は言うのも、なんだが……。

けれど、それは尚志が自分で気づくべき事なのだ……。

 そんなことよりも俺は尚志に聞きたいことがある。


「尚志さぁ、南の事はどう思ってるんだ?」


「なんで、南?」


「いや……最近よく話してるとこ見るからさ……」


 なるべく自然に俺は答えた。


「どうって言われてもなぁ……。普通にクラスメイトとしか言いようが……。 あっ!なんか最近スゲー日直の仕事だの なんだの手伝ってくれてスゲー助かるな」


 やっぱりそうか……。


「尚志から話しかけたりとかしないわけ?」


「ん~。そういやあ、話したことは前から ちょくちょくあったけど、あんま俺から話しかけたことはないな……。だいたい向こうから声かけてきてくれるし」


「たまには、尚志から話しかけてあげたら? いつも仕事手伝ってくれてありがと。とか?」


「おう……。わかったよ……」


 いつも自分から話しかけている南が尚志から話しかけられたら喜ぶだろう。

だから、無理やりその状況を作ろうとしたせいで、尚志は頭の上に ? マークが浮かんでいたが納得したみたいだった。





 その後も、学校の話や何気ない話などをして時間を潰せたところで、俺と尚志はその日は解散した。






              ************





 次の日

 休み明けで重い体を起こし、俺は学校に向かった。


 教室に入り俺は自分の席につく。

すると、先に来ていた柴乃しのが後ろの席から声をかけてくる。


「翔、おっはよ~」


「おう……おはよ」


 教室には既に尚志と南も来ていた。

二人はさほど離れていない距離でお互い友達と会話をしている。

二人の方を見ていると、尚志は俺の視線に気付き何か思い出したような顔をした。

 そして尚志は南のいる方に歩いていくと、南に声をかけた。


「なぁ、南」


「えっ。なっ何?尚志くん。どうかしたの?尚志くんから声かけてくれるなんて珍しい……」


 南は顔を赤くして、動揺したように答える。


「いや、なんか、最近色々手伝ってもらってるから礼を言おうと思って……。 色々サンキューな……」


「いや、私はなんて何も出来てない……。ホントに何も……」


 自分のやってきた事に自信がないのか南の声は小さくなっていった。


「いや、俺は感謝してるから。ホントありがと」


 それを聞いた南は


「うん!! また何かあったら手伝うからなんでも言ってね!」


 と嬉しそうに言った。


 そんな様子を見ていたら柴乃が、


「なんで、陽菜ひなちゃんの方見てんの~?」


 と不機嫌そうに聞いてくる。


「い~や~。別に」


「陽菜ちゃんの事好き……とか?」


 いきなり何言ってんだコイツ……。


「バカ。ちげーよ。」


 すると、柴乃は


「そっか!」


 と少し安心したように言う。

 そんなことで安心した顔されてもな……。

こいつ、もしかして俺の事スゲー女ったらしだとか思ってるわけ?

それで、自分の友達が狙われてなくて安心したとかか?

 全く……本当に変な勘違いしてないといいけどな……。

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