第13話 【最後に決断をくだすのは】
俺は参考を得るために暁斗に電話していた。
「もしもし暁斗〜？」
『翔か、どした？』
「いや、ちょっと相談がある……」
『おう……まぁ、とりあえず聞くわ』
「いや、実は今日さ……」
俺はそう言って今日あったことと、尚志と星宮のことを話した。
相談された南の好きな人が俺の応援しようとしてる尚志と同一人物だということも。
勿論、尚志も、南も俺と1対1の時に言ってきた事だし、そういう事を本人の許可無く勝手に言う訳にはいかないので、名前は伏せたけど。
『要は、その相談された子の事と、お前の友達の事と、どっちを優先させればいいのかと？』
「まぁ、そんな感じかな……。 こういう事で優先とかって言葉あんま使いたくないんだけどね」
『まぁ、考え方次第じゃね？』
「どーゆこと？」
『お前はその女の子と仲いいの？』
「いや、あんま話したことも無かった……」
『そういう風に考えたらその友達の方を優先すべきだと思うけどさ、 別に頼まれた訳じゃないだろ？ 女の子の方からは、ちゃんと頼まれたんでしょ？』
「まぁ、俺もそれは考えてた……。」
『だからさ、まあ俺個人の意見だけど、やっぱ頼まれた方を優先すべきなんじゃない？』
「やっぱそうだよな……」
『頼んだ子からしたら、お前が友達の恋愛の方を手伝いをしてたら怒るだろ？ 頼んだ意味がなくなる。 でも女の子の方を手伝って、その子が告白したとこでその友達は怒らないだろ……。最終的な決断をくだすのはその友達なわけだし……』
確かにそうだ……。
尚志は今、星宮を好きな訳だが、告白された場合、最後に決断をくだすのは尚志本人な訳だ
「そうだな。サンキュな参考になった」
『おう！気にすんな。というか別に相談すんの俺じゃなくても良かったんじゃない？尚志もいるじゃん』
名前を伏せてる以上相談内容が尚志のことだとは言えない。 適当に言い訳を考えなければ……。
「いや暁斗って、女ったら……恋愛経験豊富じゃん？」
『いや、もうそこまで言ったら言い直さなくていいから！ それに女ったらしは女子と付き合えてる人を言うんだ！俺は全て玉砕しているからな！！！ マジで…… 全て……』
初めのうちは笑いながらツッコミをしていた暁斗だったが徐々に声が小さくなる……。
まずいな…… 言い訳するつもりがどうやら地雷を踏んでしまったようだ……。
すると、暁斗が
『そうだ聞いてくれよ翔 俺の今の好きな……』
暁斗がそこまで言ったところで俺は電話を切った。
今まで、アイツの恋愛話を幾度と無く聞かされてきた俺の感が告げていた。
これはすごく長くなる話だと……。
あいつ、ちょくちょく好きな人変わるからその度電話かかって来るからな……。
自分の話は聞いてもらっておいて相手の話は聞かないなんてサイテーと思わないで欲しい。
いつも俺はあいつの話はちゃんと聞いている。
その後別に向こうからも折り返し電話がなかったので、多分向こうも、 も〜何だよ〜。つまらんな〜。 くらいの軽い気持ちなのだろう。
こういう事は、お互い信頼関係の出来ている、仲のいい友達だから出来ることであって、そうでない人には、こんなことも絶対できない……。
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次の日の朝、この辺りでは珍しく、雪が降っていた。
部屋の窓のカーテンを開けると、そこには一面の銀世界が広がっている。
そもそも雪が降ること自体珍しいこの辺りで雪が積もるなんて1年に1〜2回のことなので、ついテンションが上がってしまう。
学校に行くため、家を出るといつもと同じはずの通学路は全く別の世界のようで、どこか非日常感がある。
小学生ではないので雪合戦をしようとか雪で遊ぼうとは思わないが、こういう時道を歩くだけでもいつもと違った、特別な気持ちになれて、どこか楽しいと思ってしまう。
空を見上げると雪は舞うようにして自分の元へ降ってくる。
雨とは違いゆっくりと降ってくるその様子を見ていると、空に引き込まれそうになる。
まだ誰も踏んでいない雪の道は ギュ という音を立てる。
そんな、なんの意味もないことだけど、つい誰も踏んでいない部分を探して、そこを踏んでしまいたくなる。
そんな道を歩いていると、俺は学校に到着した。
教室に入ると紫乃が 雪だー だの何だの言って騒いでいる。
その姿には、やっぱり中学の時とは違ったものを感じる。
窓を見ると外はさっきまで自分がいたとは思えない様にそこまで強くはない雪が吹雪いている。 その景色は歩いていた時とは別のものに見える。
そんな俺の思想をかき消すように、1人の女子が声をかけてきた。
「翔くん、尚志くんに、聞いてくれた……かな？」
南である。
頬を少し赤めているのは、寒いからなのか、結果が気になるのかは分からなかったが……。
それより大きな問題があることに気づく。
あ……まずいな。 なんて言おうか考えてなかった……。
