第9話【彼女の過去の姿をふと思い出す】
終業式が昨日終わり高校生である俺達の生活は今日から冬休みになっていた。
「休み前は、早く冬休みに……。なんて思ってたけど、いざ冬休みになるとやることねぇ……」
コタツに入って、そんなことを 口にしながら何となくテレビを見ていた。
こうしていると、ものすごく時間を無駄にしている気がするが、まだ宿題に手をつける気にはなれなかった。
そしていつも、休みの終盤になって苦しむのは分かっているのに、そもそも期限ギリギリにならないと危機感がなくて集中出来ない……。
「だらけてんなら、家のこと手伝ってくれませんかね〜」
と掃除をしている母の声が聞こえた。
おっと、ダラダラするなってことかな……。
そこで俺は約束もしてないのに「尚志と遊ぶ約束してる」と言い自部屋へ戻った。
しかし、いつまでも部屋にいても暇だな……。親には尚志と約束って言っちゃったし、電話してみるか。
俺はポケットからスマホを取りだし、電話をかけた。
数回の呼び出し音の後、尚志が電話にでた。
「あ!もしもし尚志〜」
『おー、どした?』
「今暇?」
『まぁ……。暇だけど』
「じゃあさ、そっちがよかったらでいいんだけど今からどっか行かない?」
『唐突だな……、いいけど。どこ行くのさ?』
「まぁ、適当にその辺をぶらぶらするとか?」
『お前がいつも言ってる通りこの辺じゃそんなことしてもなんも面白くないぞ〜』
「まぁそうか……。家にいると色々手伝いしなくちゃいかんから、とりあえず会ってから決めようぜ」
『まぁ、いいけどよ……』
尚志は少し笑いながらそう答えた。
そして、すぐに準備をして家を出た。
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近くの公園で待ち合わせたので、すぐに尚志も来た。
「おう、急に呼び出してわりぃな」
「いや、それは別にいいけどよ、手伝いをしたくないって、呼び出した理由が私的すぎるだろ。たまには家の手伝いもしろよ?」
手伝いなら割りとマジで毎日やってますよ。なんならたまに、ご飯作っちゃうこともある。ご飯作るとかなったら本当にたまにだけど……。ほんと、それを毎日やってくれる親には感謝。
「いや、基本的には毎日手伝ってるぞ? あの時間だと手伝うこともないし、多分ダラダラするなって意味で言われただけだ。それで、どこ行くー?」
「じゃぁ、俺に電話でそう言わなくてもよかったろ……。まぁそうだな、外は寒いしな……喫茶店とかでいいか?」
「おう、そだうだな」
そして俺たちは喫茶店に向かった。
徒歩数分ですぐに目的地には到着した。
「明日がクリスマスイブなだけあって、ここも多少はクリスマス仕様だな……。ちくしょー」
半分ふざけて俺がそんなことを呟くと尚志が笑いながら答えた。
「お前、クリスマスになんか恨みでもあるのかよ……。てかお前好きな人いるなら明日誘ってみろよ」
やっぱり尚志はまだ俺が星宮のことを好きなのを知らないらしいっぽいな……。
「いやいや、お前なそんな勇気俺にあったら、とっくに青春生活を送ってるよ。はー」
そんなことを嘆いていると尚志が、
「お前さ 紫乃 のことはどう思ってんのさ?」
と聞いてきた。
「なぜに、あいつが出てくる……」
「だって幼馴染じゃん。」
なぜみんな幼馴染イコール恋愛みたいに思っているのだろうか……。
「おまえは幼馴染の女子とかいないから分からんかもだけど、なんか兄妹みたいなもんなんだよ。昔から知ってるって感じは」
「そういうもんかね……」
「そういうもんだよ……」
「でも、お前紫乃には素を見せるだろ?」
「だから……。別に取り繕うような仲じゃないし……」
「でも中学生ん時初めてお前ら見た時付き合ってんのかと思ったんだけど」
そう言われて 中学の頃のことをふと思い出す。
紫乃は中学の時まであんな感じじゃなかったな……。性格は今と同じく明るかったけど、もっと大人しい雰囲気だったというか……。比較すると今はどこか、周りに合わせるために自分を“作っている” 気がする……。少し無理して明るくしているような……。
そんなことを考えているとすぐにまた、尚志が話しかけてきた。
「どうした?黙り込んで。あ!あの時マジで付き合ってたとか?」
と楽しげに聞いてきた。
「いや、まじでちげーよ。ちょっと考え事だ」
「そーか」
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そんなことをしているうちに時間は過ぎ……。
「じゃ そろそろ帰るか?」
と尚志が席を立った。
「そーだな。適当に時間潰せたし。あんがとな」
「気にすんな。お礼は今日のここの代金おごりでいいから」
と笑いながら言ってきた。
「いや なんでだよ!」
と、反射的にそう口にした。
「いや、冗談冗談」
と楽しげに尚志は答える。
そしてその日、俺たちは解散した。
24日は勿論チキンの俺が星宮を誘えるわけもなくダラけながら家で1日を過ごした。
そして31日の夜 初詣に皆で行く約束をした日になった……。




