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第4話:不穏な空気



魔術の解説の補足なんかと絶望の為の伏線としてこの話を入れさせて頂きました。

流し読み程度でも、多分大丈夫なはずです。

では、どうぞ短いですがお付き合いの程を…



 学校に着くと俺は翼とは別に校庭の隅に行った。

いつもの登校よりさらに早いので、校庭には誰も居ない。

この隙に少しばかり魔術を練習しておこうと思ったのだ。


今日は学校が終わった後に、魔術協会の方で魔術適正ランクの承認を受ける事になっていた。

まぁ言ってみれば、ランク別に強さを表すものだ。

ランクにはC・B・A・A+・S・マスターの六つがある。


 俺が受けさせて貰えるのはこの内のCランクだ。

当然ランクが上がるためには試験が要るんだけど、Cランクは言ってみれば一般人からのランクアップだ。

認めて貰うには他のB以上のランクの人に自分の使える魔術を、立会人の前で見せそれが認められれば晴れてCランクとして認められる。


B〜A+までのランクはA+かSランクの人に同様に認められればOKだ。

ただ、A+のランクの人がSランクに上がるときはSランク以上の人が一名以上か、もしくはA+の人が3人以上の立会いの下で行う。これはランクが上がるほど魔術を見せる時に失敗した場合の対処が難しくなるからである。


 また、基本的にSランクの人がマスターに上がれることはほとんど無い。

何故なら、4年に一度開かれる魔術大会で優勝した人が一人だけマスターランクになれるのだ。まぁオリンピックみたいなものだ。ただ、死人が出るのも少なくなく参加者は猛者か愚か者ぐらいだが。

だから実質的にSランクが最高のランクといっても過言ではない。


 ちなみに、姉さんはAランク。A+の実力があるなんて言われてるけど本人に実力を出す気がないのでAランク止まりだ。……なんて言ってるけど実際にそんな実力があるか疑わしいもんだ。


 姉さんから言われたことだが、俺が違う系統の魔術を使うことは出来るだけ知られないようにするべきだ、と。

まぁ確かに下手をすりゃ実験動物なんてこともありえる訳だからな。

俺もそんなのゴメンだ。


 目を閉じて自分の中に流れるエネルギーを感じ取る。


 一度その全てのエネルギーを開放、同時に外のエネルギーを取り込む。

別にこんなことをしなくてもいいんだが、慣れというかなんというか。

これをしてからだとリラックスした状態で魔術を練ることが出来る。

準備運動みたいなもんかな。


「…………んっ。……んあ…………は……ぁ」

 この時、エネルギーが体中を這うように動くので全身がくすぐったい。

誰もいない所でやるのは声を聞かれるのを防ぐためだ。

…………だって、なんか自分で聞いてても、その……やらしい気がするしな。


だんだんとくすぐったさが抜けて、体が弛緩して来た。

上手くリラックス出来たようだ。

「うしっ」

 と声に出して一つ気合を入れて、魔術を丁寧に練っていく。




たった三十分。されど長い三十分を経た頃には全身が汗だくだった。

今日早く来たのは魔術の練習をしたかったのともう一つ。

汗をかいてしまうので、運動部が使用しているシャワー室を使う為だ。


学校が始まるまで後1時間以上もある。

翼みたいに部活をやっている人間でもまだ来ていない人が多い時間帯だ。

こんな時間にしたのは訳がある。

この学校は何でか結構頻繁に『カギが壊れる』のだ。


俺のロッカーのカギが壊れていたり(かれこれカギを付け替える事3つ、今は面倒臭いのでカギは付けてなかったりする)

 トイレのドアのカギを閉めたと思ったら壊れてて、腰を下ろした時とかにドアが開いて外にいた女の子に出している所を見られたり見られそうになったり。

シャワー室なんかもこの学校は一つ一つ個室でカギが付いてるんだけど、なんでかカギ壊れてんの気づかずに裸を見たり見られたりするんだよな。……ちゃんと掛ってた気はするんだけど。って言うか、シャワーの音で気が付かないもんかね。


……一応、俺の名誉の為に言っとくけど、俺が鈍感な訳じゃない。

俺だって疑ったさ、もしかして誰かの悪戯かな? とか。

でも良く思い出すと同じ人に覗かれた事ってほとんどないし、それにほとんど皆その後に倒れるんだよな、顔中真っ赤にして。


 結局俺が介抱するんだけど、

おでこに手を当てると滅茶苦茶熱いし、保健室まで連れて行こうとしたら体重のほとんどを俺に任せるように歩くし。


ありゃ、完璧に風邪だな。病人を悪く言うわけじゃないけど、風邪の日ぐらい家で休めば良いのに……皆、真面目過ぎるんだよな。

だから、俺がカギ壊れてるの気づかないのも悪いけど。向こうだって前後不覚になるほど体調悪いのに学校なんて来るから……


 って話を翼にしたら白い目で見られたんだけど、あれはまだ皆を疑ってたな。

そりゃ俺だって同一犯だったら疑うけどそんな訳じゃないし、それに病人を疑うほど落ちぶれちゃいない。

……いや、別に翼が落ちぶれてる訳じゃなくて、たぶん翼も同じ目に遭えばそう思うんじゃないかな。ほら、偶然って重なる事もある訳だし。


そんな訳で俺は出来る限り学校ではトイレにもシャワー室にもいかないようにしてるんだけど。

どうしても使いたい場合、人のいない時間・場所を利用するしかないわけだ。


そんな訳で早く来たのはシャワーを浴びる為でもある。

流石の俺でも、汗臭いままってのはちょっとな……

昔は、それでも平気だったんだけど。

というか、今はむしろ姉さんがうるさいんだよな。


シャワー室に入り一応カギを掛けて、さっさと服を脱ぐ。

この時は毎回へこむ。

嫌でも、自分の体が女だと認識せざるを得ないからな。


あんまり考えないようにして個室に入りシャワーのノブを捻る。

ざっと、全身を洗い流し、そこでふっと気づく。

(そろそろ、毛先揃えないとな)


 肩口まである髪の毛を弄りながらそう思う。

本当は髪の毛なんかも魔術の効率を考える伸ばした方が良いんだけど(太ってる奴の方がエネルギーを多く溜め込めるのと一緒)そこまで女の子したくない。

第一、今でさえ手入れが面倒なのに伸びたらどうなることか。

それにお湯に浸かる時って、髪の毛って意外と水を吸うんだよな。


 以前、ほんの少し切ってなかった時お湯から上がろうとしたら、髪がお湯を吸っちゃって。

まるで誰かに髪を引っ張られたみたいだった。……ありゃ禿げるな。

頭を洗うと体はシャワーで流すだけにする。


手早く体を拭いて、顔や手なんかに化粧水をつける。

こんな事したくないんだけど、しなかったらしなかったで姉さんがうるさい。

こっちの世界に来て1年間は、かなり肌が荒れたからなぁ。


今はそんな事ないんだけど姉さんに

「ほっとくと、また荒だすわよ」

 なんて脅されてしまった。


自分の体じゃないだけにこの手の脅しって結構堪えるんだよ。

特に姉さんって聡いから、もしかしたら俺の体がコレじゃないって気づいてるとか。

……んなわけないか。そんな突拍子もないこと普通考えないよな。


下着の替えを持ってきてて良かった。

汗で濡れた下着ほど気持ちの悪いもんはないしな。

なんて服を着ながら考える。

(というか、いくら姉さんでも俺が男だって分かると……まずいよな。やっぱり)


 バレた時の事を考えると恐怖で身が竦む。

折角、代えた下着を冷や汗で湿らせてしまっては意味がない。

一つ頭を振って、嫌な考えを振り払い俺は教室に急いだ。




 その頃、姉さんこと鏡花さんはろくな事をしてなかった。

「……ふふふっ。完璧ッ!」

「待っててね、由愛ちゃん。由愛ちゃんの試験はこのお姉ちゃんがしっかり責任を持って担当してあげるから……」

「あぁ、早く学校が終わる時間にならないかしら……。ふふっ、ふふふふふふ……」




 そして、さらに別の場所で西洋風の剣を持った男が一人。

「……やっと、見つけました。今回はまたずいぶんと上手く隠れたものですね。……テス、待ってなさい。今度こそ、この私が貴女を……殺してみせます」

 そう言って歩き出す。物騒な事を呟いた割りに、男の目には何の感情も浮かんでいなかった。

その事がやけに不気味だった。




 そんな事が起こっているとは露知らず。

俺は、朝早く起きたのと魔術使用の心地よい疲労で夢の世界に旅だっていた。


この後に起こる出来事なんて、それこそ夢にも思わなかったわけだ。

だってそうだろ。夢なんて、しょせん何処か甘いもんだ。

だって起きてしまえばいいんだから。


『甘くない夢』なんて、

 そんなのただの『現実』じゃないか。


お読み頂まして有難う御座います。

短い話となりましたがどうでしょうか。

少しでも、楽しんで頂ければと思います。


ようやく、次回がちょい絶望・ちょいグロとなります。

あくまで、『ちょい』ですので物足りなく感じるかもしれません。

また、『ちょい』でもグロ・絶望なので嫌悪を抱かれる方は申し訳ありませんがご遠慮頂きますよう、この場を借りてお願い申し上げます。


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