第14話:一歩、前へ
由愛ちゃんが、夢の中へ行ってから数時間。
僕が病室に入ると、鏡花さんのベットの周囲に人が集まっていた。
僕は由愛ちゃんが鏡花さんを連れ戻してくれると信じてるから良いんだけど、他の人の前ではシリアスに行こうと気をつける事にした。
その中の僕に気づいた一人が声をかける。
「よお。つばさーも来たか!」
まったく、この人ときたら、いつもこうだ。
これで、何回目になるだろう。
「……僕の名前はつばさーじゃなくて、つ・ば・さ、です」
「そう拗ねるなよ。愛称って言葉を知らんのか? つばさー」
「…………はぁ。もう、好きに呼んでくれて構いません」
僕がそう言うと周りにいた人が苦笑しながら言う。
「おまえさん。この前は翼坊ちゃんのことを、確か……そう。つばっち、とか呼んでなかったかい?」
「……ん? そうだったか?」
「そうさね。あんたは、人の名前を覚えんのが得意なのか、そうでないのかよう分からんわ」
「気にすんな。基本的に間違っちゃいねぇんだからよ」
男はそう言ってカラカラ笑う。
この人は鏡花さんの仕事仲間の人だ。
横にいる看護師さんとも仲が良いのか、止める気配もない。
こんな場だからシリアスに行こうと気張っていた僕も力が抜けた。
まぁ、シリアスなんて似合わない気もするけど。
僕が入室した直ぐ後に再び扉の開く音がした。
「ちーっす。あの化けもんが倒れたって?」
まず、赤毛の男が病院内だというのに、肩に大きな剣をぶら下げて入ってきた。
逆立った髪の毛が、彼の口調と相まって子供っぽい、良く言えば童心を忘れない印象を見るものに与える。
「貴様、口に気をつけろ。本来ならこの場で叩き切っている所だぞ!」
それに続いて、金髪の……男性? いや、女性だろうか。こちらは着ている甲冑のせいで身体のラインが消えており、その上声が中性的で性別の判断が難しい。
背筋がピンっと伸びており、先立って入ってきた彼と真逆の印象を受ける。
「それはそれは、怖いお言葉で。犬コロはご主人様が倒れて心配なんだとさ」
「貴ッ様……」
男のからかう声に金髪の人は拳を握り閉めている。
「ん? どしたよ。ご主人様がいないと犬はケンカもろくに出来ませんってか?」
「…………ぶった切る!」
ブチッ。っと本来聞こえないはずの音が聞こえた気がした。
「犬コロに出来るか?」
そう言い合いながら、挑戦的に笑う男の人。
見たこともないけど、多分二人とも鏡花さんの知り合いだろう。
「こらこら、二人とも。病室で騒ぐなら外でやりなさい」
さらに人が増える。
彼女と一目で分かるぐらいに、…………何て言うか『寒そう』な人だった。
上半身に着ているのは、とういより羽織っているのは、ストールを巻いただけのような物で、
思わずその下に自分の見えない何かを着ているのでは? と疑ってしまう。
下半身はちゃんとロングのスカートを穿いているんだけど、膝から下が透けていて肌の色が分かる。
しかし、本人が堂々しているためか、あまりいやらしい感じはしない。
(というより、この人寒くないのかな?)
「こいつがケンカふっかけてきたんだよ」
「止めないで下さい。今日こそ社会のゴミを駆除しますから」
「…………言うじゃねえの」
「いい加減になさい。……じゃないと、潰しますよ?」
ニコニコしながら言う女の人から物言わぬ威圧感が漂う。
「………………」
「………………」
「や、やだなぁ。姐さん、じゃれてるだけですよ?」
男の『姐さん』という声に女の人のこめかみがピクリと動く。
どうも、この人の琴線に触れたらしい。
「そ、そうです。私がこいつ相手に本気になるわけないじゃないですか」
「っんだと!てめえ!!!」
「…………すみません。皆さん、入ってきてそうそうに失礼しますね」
女の人はそう言うと、二人の襟首を掴んで外へ引きずっていった。
「ま、待ってくれ姐さん! 俺らが悪かった!」
「ちょ、ちょっと待って下さい。この男は分かりますが、何故私まで……って、痛い痛い痛い。ごめんなさい。ごめんなさい。髪は、髪だけは引っ張らないでーー」
パタンと扉が閉じられると、妙な沈黙が病室に漂う。
「相変わらずさ。あの子達も学習せんとね」
「何言ってんだよ。あれが奴等のコミュニケーションってやつだろ?」
「ハッハハハ。……確かに、違いないね」
その後もこんな感じで、騒がしくも色んな人々が鏡花さんのお見舞いに来た。
それはお見舞いというよりお祭りモドキで、何故鏡花さんが個室を割り当てられたか理解出来る。僕は部屋の片隅で、そんな皆を見つめながら思考の海に沈みこむ。
今までの事で、色々おかしい点がいくつもある。
考え込んでいると、視界の片隅で捕らえていた由愛ちゃん達に変化があった。
(…………? どうやら上手くやったようだね)
想像よりも遥かに早い。
由愛ちゃんから鏡花さんへと流れていた魔力も『今は止まっている』
心配していた精神同化や魂魄剥離なんかはなさそうだ。
あれなら、僕が何をするでもなく、じきに目を覚ますだろう。
確認したい事があって、僕は騒がしい皆を背に病室を一人抜け出した。
病院の屋上といえども、人が全く居ないわけじゃない。
リハビリに励む人たちや、その付き添い。単に外の空気を吸いに来た人だっている。
そんな中、僕は人目に付かない場所まで歩いていった。
「…………そこに、いるんでしょう?」
僕は虚空に向かって話しかけた。
否、そこに『居る』者に向かって話しかけた。
時空の揺らぎとか、闇から染み出すようにとか、そんな事はなかった。
まるで、最初からそこに居たかのように、僕の目の前に現れた。
この原理は簡単だが、実際には複雑である。アポーツ(物質・物体取寄せ)とはまた違った難しさがある。
例えば、物を見るとき人間は目に入ってきた映像を網膜に焼き付け、脳に情報を伝達し、初めて認識する。
逆に魔術により認識を先に行った場合はどうなるだろう。
頭では目の前に何か居ると思っているのに、実際は目の前には何も無い。
ここまでなら、ただ自分に幻影を見せているのと変わりはない。
しかし、自分以外の生物がその幻影のいるはずの場所を見る事が出来ない時、または見れない時、そして、その幻影の元となる人が生存してかつ誰にも感知されて居ない時、世界を相手に魔術を掛ける事でこの魔術は完成する。
世界を相手に、『皆見えているのにここに居ないのはおかしい』と判断させる。
皆といっても術者以外の生物はいないので、世界が確認を取ろうとしても術者しかないわけだ。結果、誤認した世界が勝手にその人物をその場所へと呼び寄せてしまう。
あたかも、初めからそこにいたかのように。
ただ、長時間騙すのは無理で上手く騙せても1時間、短くて1分もしない内に戻ってしまう。
それに物質相手と違い、人(魔術師以外の人)が相手だと相手よりも強固な意志が必要となる。同じ魔術師の場合、呼び出される方はよっぽど相手との魔力差がない限り拒否も出来る。
今回はそこそこ上手くいった、という感じの手応えだった。
「……どうしたの?」
現れた人物は驚くでもなく、淡々と用件を聞いてくる。
この人の前に立つと急に緊張で喉がカラカラに渇く。
僕はこの人が、僕にとって『母』と呼ぶべき人が苦手だ。
母と呼んだ事なんて片手で数えるぐらいしかない。
「……今回の事で満足しましたか?」
「何の事かしら?」
これは、推測であって証拠も無ければ裏も無い。
僕が言おうとしているのは、ただの自己満足の為、気付いてしまったから。
「安藤由愛、及び安藤鏡花。両名共、『安全だと判断出来ましたか?』」
そう不自然といえば、あまりに不自然で御粗末。
由愛ちゃんが此方に迷い込んだ時、何故僕らの仲間は保護に行かなかった?
リナウンスの暴挙も止めようと思えばこの人なら直ぐに伝える事が出来たはず。
そして何より、何故テスタメントの身体と入れ替わっただけの由愛ちゃんの身体は、そのままの大きさじゃなくて『小さくなっている』?
考えれば簡単な話し。
全てがテスタメントという器に入った由愛ちゃんが、安全かどうか確かめる為。
リナウンスを止めなかったのは極限状態での安全を確認する為。
そして、その思惑を知られない為には出来る限りその事実を知らない人間が望ましく、その事実に辿り着く可能性を下げる事が重要。ゆえに、僕らの仲間の介入を極端に制限した。
大人であれば上手く行く事も子供では上手く行かない。
その上子供の証言であれば、まず大人は信じない。それが非現実的であればあるだけ、子供の戯言だと切って捨てられる。
もし、由愛ちゃんが鏡花さんと出会わなければ?
誰にも自分の言う事を信じてもらえず、働き口は無くお金の収入源も無い。
生きるのに精一杯の中でリナウンスと出会い、そして……。
そう考えるだけで、背筋が凍り息が詰まる。
そして、僕の言葉に相手は興味も無さそうに
「そうね。……まぁ、ある程度は」
と、そう言った。
(……ある程度?)
という事は、納得していない?
これだけの事をしておいて、まだ?
「……じゃ、次はどうします? 友人を殺してみますか? それとも、恋人を作らせて自らの手で殺すように仕向けますか?」
自分で言っていて吐き気がする。
そんな僕の言葉に軽く考えた後、この人はこう言ったんだ。
「……貴方はどちらが良いと思う? 私はどっちでも構わないわ。好きにしてくれて良いわよ」
ショックだったんだと思う。裏切られたと思った。
僕は嫌と言うほどにこの人の事を知っているのに、それでもどこかで期待していた部分がないとはいえない。
だからこその限界、僕はもうこの人の考え方についていけない。
「…………どっちも、させない」
「………………それで?」
「母さん。……身寄りの無かった僕を引き取って、ここまで育ててくれた事には感謝しています。……でも、貴女が由愛ちゃん達の平穏を壊すのなら、僕は貴女に従えない」
僕が一世一代の決意を持って発した言葉も、この人の前ではどれ程の価値があるというのか。さも、つまらなさそうに返された。
「……用件は、それだけ?」
まともに取り合って貰えなかった事に怒るよりも、悔しかった。
僕はまだ力も、技術も、知識もこの人の足元にも達していない。この人の僕を見る目は道端の石を見るのと同じ、邪魔だとも感じていないのだろう。
「貴方にとって僕は、取るに足らない存在かもしれない。でも僕にも曲げられない『モノ』があるんです。今日をもって、僕は時空調整管理組織を……組織を抜けさせて貰います」
そう言って僕は踵を返し屋上をあとにした。
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翼が屋上を去った後を、彼の母はその影を見つめるように立ち尽くしていた。
彼女の瞳は先程までと違い憂いを帯びていて、過去を懐かしむような遠い目をしていた。
「……よろしかったのですか?」
その彼女の背後に突如現れた男。
気配を極力消す為だろうか、影のように全身が黒ずくめで、その上にサングラスをしている。
その背後から掛けられた遠慮がちな声に彼女は驚く事なく振り返る。
「何が、かしら?」
「『確認を終えた事』を伝えてもよろしかったのでは?」
彼女は答えない。
妙な空気が二人の間に漂う。
どちらも、動かず、話さず、身動きせずに。
ただ、じっと相手を見つめていた。
このまま何時までも動かないつもりなのだろうか。
しかし、そんな空気を振り払うように彼女は男に背を向けた。
「……ほら。私の子供と言っても、甘やかすとその噂がどこで広がるか分からないじゃない?」
彼女の口調は淡々と語っていた先程とは違い、言葉の端々に感情が滲み出ていて表情も和らいでいた。代わりに疲れのせいか少し肩が落ちた。
「…………すみません。先程の言葉を訂正します。そして、その上で無礼を承知で申し上げます」
男はそう断ると彼女をまっすぐに見つめて問いかけた。
「今の言葉……組織の上に立つ者としての言葉としては正しいのかもしれません。しかし、貴女様の……母としての言葉はどうなのですか?」
男が何を考え立ち入った問いをしたのかは分からない。
その問いの答えに彼女が「あなたに関係無いじゃない」と切り捨てれば、男はそれ以上追及するような愚を犯さないだろうし、男の言葉に取り合わず、そのまま首を刎ねても誰にも口答え出来ないほどの力もある。
しかし、彼女はそのどちらも選ばなかった。
でもそれは男の問いに対する答えではなかった。
屋上から地上を見下ろし、誰ともなしに話しだす。
「……私はね。人の上に立つ人には、大雑把に分けて三種類の人間がいると思のよ。一つに部下を叱って伸ばす人。二つに褒めて伸ばす人。三つにその両方を上手く使える人。一つ目が鞭、次が飴、最後が飴と鞭。極端だけどね。」
彼女が話す間、男は彫像のように彼女の背後に控えていた。
その様は傍から見ても会話をしているようには、見えないだろう。
「叱ってばかりだと人は疲弊してしまうわ。でも、褒めてばかりだと人は慢心する。二つを上手に使えれば良いのだけれど、大抵は失敗する。
だって、叱ってばかりの人に対しては、この人を上の人間だと強く意識させる事が出来る上に、コントロールしやすわ。けど、同時に人の心を無視し勝ちになるから恨まれやすい。
反対に褒めてばかりの人に対しては、上の人間だと意識させ難いからコントロールは難しい。でも、変わりに人の心を汲取るから親しみを持ちやすい。
恨みと親しみ、上に立つか同じ場所に立つか、心を無視するか汲取るか。それらを同時に両立させる事は難しい事」
少なくとも私には無理だったわ、と自嘲気味に彼女は続けた。
「それだけが問題じゃないし、両方出来たからといって全てが上手く行くわけじゃないわ。でも、それが出来る方法が一つあるの」
と。彼女は一旦言葉を区切り、顔を空へと移した。
「だから、私は……」
「だから、貴女様は……」
黙って聞いていた男が突然、彼女に口を挟んだ。
彼女に取って初めての経験だったのか、驚きに目を大きく開け背後を振り返る。
男は何事も無かったかのように続ける。
「下にいる部下が疲弊する前に、『飴』を上手に扱える人に……翼様にトップを譲ろうとなさっている。御自分が部下から憎まれる役を買って、翼様にまでその憎しみがいかないよう、わざと遠ざけてまで」
驚きに目を見開いていた彼女は男に苦笑を返した。
「それは勘繰りが過ぎるわ。それに、そんな事あの子が望まないでしょう? むしろ、あなたがなってみたらどうかしら?」
言われた男の顔に初めて変化があった。サングラスのせいで分かり辛いが厳しい顔がさらに強張った。付き合いの短い者が見れば怒っているように見えるが、付き合いの長い彼女は男が驚いているのが分かる。
「……御冗談が過ぎます。自分が人の上に立つ器でない事ぐらいは分かります。自分は誰かの下にいて、それでようやく力を発揮出来るタイプの人間です」
その言葉を聞き、彼女が「じゃあ」と言おうとするのを遮って男は更に言い募る。
「ですが、自分は貴女様以外の人の下に付く気も従う気も、毛頭ありません。貴女様以外の何者にも、例えそれが翼様でもです」
「そう? 私はあなたが思っている程に凄い人間じゃないわよ? それにあなたが思っている程、あなたも翼も捨てたもんじゃないわ。まぁ、あなたの考えとは違うけどね。……私は諦めないわよ?」
男にそう言い残すと彼女の姿は虚空に消え去った。
男は彼女が消えた場所を暫く見つめて、小さく呟いた。
「それは全部自分の言葉です。かつてこの組織をここまで纏め上げた人がいたでしょうか? 自分は貴女様を……諦めません」
そう言って男も虚空へと消え去った。
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病室へと足を進めながら、僕の胸の中では安堵や後悔や失望などが渦巻いていた。
そして、鏡花さんの病室の前まで来て立ち止まった。
室中の歓声から、鏡花さんと由愛ちゃんが起きたのだと、帰って来たのだと分かる。
扉を開けようとして僕は迷った。
はたして、僕にこの中に入っていく資格はあるんだろうか?
結局、悩んだ末に僕は病室に入らずに帰る事にした。
手をノブから放し、扉に背を向けた時、後ろから声が聞こえた。
「…………翼?」
「あっ……」
思わず振り向いてしまって、どう声を掛けて良いものか悩む。
「えっ……と、その、おはよう?」
「なんだ? なんで、おはよう? さっき会ったろ。しかも、昼過ぎてるし」
うん。僕もそう思う。
何言ってるんだろうね僕は?
色々と考えてしまって、まともに返事が出来そうにない。
しかし、そんな考えは次の言葉にかき消された。
「まぁ、いいや。暫く俺達邪魔みたいだから……ご飯でも食べに行こうか」
「へっ? あっ、………………え゛っ!?」
僕の気のせいじゃなければ、もしかして由愛ちゃんからお誘いがあった?
いやいやいや、落ち着け翼。
もしかしたら、何か理由があるのかもしれない。
今まで僕が誘っても半分嫌々だったじゃないか!
たった一言で、現金だと自分でも思うぐらいにいつもの調子に戻っていた。
「嫌か? ……そうだな、止めとくか。確かに中が男だと分かってたら行く気も起きないよな」
そんな事を気にする僕じゃないって、そうじゃなくて裏が何かありそうで。
って、あああ裏でも表でも、もうどうでも良い!!!
「やっ、ちょ! 待って待って待って! 行く行く行きますから!」
「……別に無理しなくても良いぞ?」
「してない、してない! 例えお腹が一杯でも一緒に食べに行こう、今すぐ!!!」
由愛ちゃんは僕を見て笑った。
それは、良い具合に力の抜けた優しい笑顔だった。
「お前さ、言ってる事が無茶苦茶」
「えっ!? …………どこが?」
考えてみたけど、おかしな事とかあっただろうか?
「うん。そうだな、翼の場合『さっき』までおかしかったな。今はもういつもの翼だ。……お前には難しい顔は似合わないよ」
最後の言葉と同時に向けられた笑顔がとても綺麗で、僕は咄嗟に返事が出来なかった。
(まったく、由愛ちゃんは! どうして、こう!)
惚れた弱み? 知るもんか! 顔に熱が籠もる、頭がふやける。
「…………ど、どうせ。僕は、能天気ですよ。……っていうか、今の由愛ちゃんの言葉。なんか……えっと、……そう! 『たらし』っぽいよ」
どうにか、回らない頭で反論に成功する。
「そうか? まぁ、いいじゃん。お前ぐらいしか言う相手いないし」
「………………へ? ゆ、ゆゆ、ゆゆゆゆ由愛ちゃ。それ、それってどういう……」
「さって、行くか!」
「ちょ、ちょっと待って! まだ、まだ話しの途中!!!」
由愛ちゃんを追いかけながら僕は思う。
今までの事を全部話そう。
過去を、現在を、自分の事を、組織の事を。
今まで隠してきた全てを、由愛ちゃんが僕にそうしてくれたように……。
「由愛ちゃん! 待って、って……うわっ!」
慌てていたせいで、段差に思いっきり躓いた。
打ち付けた場所を摩りながら思う。
どこまでいっても、シリアスは僕に似合ってくれないらしい、と。
すみません。呆きずにお読み頂まして、有難う御座います。
初めは由愛の視点で書いていたのですがまとまらず半月、こうなれば翼でと半月……すみません。
鏡花の話しは終わったので、後1〜2話で翼と由愛のその後? を書いて終了です。
次はせめてお正月までには……