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テンプレ主人公の友人枠  作者: P.river
序章 主人公と友人
6/44

嫁候補と友人の友人

次の日、学級委員の仕事のために少し早く、教室に向かった。

寮から登校しているのと7時なので人はかなり少ない。


静かなところも好きな雅は上機嫌で廊下を歩くと自分の教室にたどり着く。

ドアを開けると奥の方に灰になったかのような姿をしている黎人を見つけた。


(何してるんやアイツ?)


ちょっと気になったので黎人に声を掛ける。

机に突っ伏している状態なので同時に少し肩を揺すって起こそうとする。


「おーい、黎人なにしてるん?」

「理不尽だ……俺は無実だ……」


全く黎人が反応してくれないため雅が黎人の後ろに回って、もう一度起こそうとする。


「おーい」

「仕方ないじゃない……」

「とりあえず聞けや」

「おま、ちょっまて!?」


ヘッドロックで黎人の意識を一時的に現実に戻す。

黎人は驚いて雅の腕に手で三回叩き抗議をする。

雅はそれを確認するとヘッドロックを解いて事情を聴く。


「殺す気か!?」

「殺す気はない。それより黎人何かあったん?」

「いや、実は………」


簡単に纏めるとフェルシアと寮が相部屋になったらしく、その取り巻きも一緒のため「邪魔」と言われたようだ。


夜は良かったものの朝6時から締め出されたらしい。

起きた時にラッキースケベをしてしまったため炎で体を燃やされたとか。

相変わらずのラッキーボーイである。


「黎人、お前死ね」

「嘘だろ!?」


雅を見て黎人はショックを受けたらしく絶望した顔をする。

虫を見るような目で雅は黎人を見下すついでに唾を吐く。


「朝寝起きで人の胸揉むようなクソヤローは去ね」

「事故だからしゃーないじゃん!!」

「ふむ、事故か」


雅は左手で窓を開けて、黎人の制服の襟首を掴む。

掴まれた瞬間に黎人が引きつった顔で雅を見る。

雅は満面の笑みで腕に力を込める。


「ならこれも事故だな」

「ちょ、違っ!?」

「問答無用や。つーか女の子の胸揉めるとか羨ましいんじゃボケ!!」

「いや、それただのりふじぃぃぃいいいいん!!!」


そのまま窓から外に向かって黎人を投擲。

絶叫を残して黎人は星になった。

さすがに今のは比喩だが、雅のできるだけのフルパワーで投げたため、校舎から飛び出て住宅街に突っ込んだようだった。


これが少女の胸を触った主人公バカの末路である。


(ん? あれなんかすごい既視感デジャビュ


気持ちがスッキリした雅は、前もこんなことあったなぁと思った。

その後また黎人がトラブルに巻き込まれたのは言うまでもない。


◇◇◇

午前8時前後に多くの生徒が雅のいる教室に入ってくる。

ちなみにまだ黎人は帰ってこない。

そんなことを特に気にせずに雅が教科書を取り出して1限目の準備をしていると、緑髪の少年が雅に向かって話しかけてきた。


「よぉ、篠倉。今日は待ちに待った部活動入部の日だぜ………どれにするんだ!」

「めんどいから、帰宅部でええやん」

「ちょ、お前ほんと夢がねぇなあ」


このちょっとテンションの高いこの少年の名は神風かみかぜめくる

入学式の時に隣の席になった男子で、雅のことを一瞬で男と見抜くことができた唯一の男。

雅はそれで一目置いているのだ。


(まぁ、他の皆にも普通に気付いてほしいんやけどな)


と雅は苦笑いした。

ここまで可愛い男子を見抜く方も大概なはずだが。


それはともかく、捲は部活一覧表を雅の机の上に置いて指を上から置いて順に聞いてきた。


「テニス部どうよ、女の子のミニスカ見放題だぜ!!」

「絶対に打ち返すゾーンとか余裕でありそうなテニスは嫌だ…」


異能力がある世界でこういう競技では能力使用に制限がかけられることが多い。

だが制限が掛けられても発揮できる能力もあるため、どこぞのテニスのプリンス様みたいなこともできるのだ。

まぁ見た目だけなのでする必要は全くないのだが。

ちなみには制限はかけられないと思う、知らないが。


「そういう捲は入らんの?」

「んにゃ、生足をいつでも見れるのは嬉しいけどさ~。好みは文化系だからな」

「人に勧めといて何を言ってるんやら」

「いいじゃねえか。つーか雅水泳部は? お前スク水似合うじゃん」


その言葉を聞いて雅は若干ビクッとなってから自分の肩を抱いて言い返す。


「………そっちの趣味か?」

「いや、ホモじゃねえよ!」


捲は思わず突っ込んでしまった。

ここまでくると鉄板ネタのような雰囲気


その様子に雅は少し笑いつつ、部活一覧表の下の方で視線が止まる。


「お、いい部活みっけ」


雅がさらさらと入部届を書くと捲が覗き込んで入部届を見て意外そうに呟いた。


「お、その部活はいるんだ」

「ちょいとめんどくさいけど」

「んー、ま、この部活には癖のあるやつが多くいるって噂が―――」


とか喋っていると、


「天賦黎人ォォオオ! どこにいるぅぅう!!」


そんな怨嗟の声と共にフェルシアが登校してきた。

今は残念ながら天賦黎人は教室には来ていない。

もちろん雅のせいではあるのだが。


それにわざわざ自己申告リスクを背負う必要はない。

雅が無言で明後日の方向を向いていると、捲がフェルシアに近づいて肩をポンとたたく。


「どうしたんだよフェルシアちゃん。そんな怒らなくてもいいじゃねえか」

「あなたは何なのですか! しかも『ちゃん』付けとか馴れ馴れしいもほどがありますわ!!」

「いいじゃん~同じクラスメイトだし」


肩に置かれた手を払いのけて、フェルシアが不機嫌そうにキツく捲に言い返す。


「良くありませんわ、貴方達とは差がありますからね!」


クラスの皆の空気が少し硬くなる。

雅は軽く冷や汗を流す。


(ここでそんな大きな声で言うのはやばい。黎人がここにいれば良かったのに………くそぅ!)


雅は理不尽にも今ここにいない主人公様に悪態を吐いた。

何とかしてフォローに入ろうとすると、先に捲が棒読み風でこう言った。


「オイラ怒ったぞー。くらぇええ!」


捲がしゃがみながら両手を教室の床に置く。

直後に突然クラス内に強風が吹き荒れる。

強風が吹いた瞬間にクラス内の女子全員のスカートが盛大に捲れた。


「「「キャーーー!?」」


これの原因は神風捲めくる神託力オラクルである【巫女風みこかぜ】だ。

【巫女風】自体には直接的なダメージはなく、風を受けた者に強化や弱体を付与するだけだ。

でも風自体でよろめかしたり物を軽く吹き飛ばす性能はある。


「赤、白、黄、青、青、紺、ハワイブルー、チッ! さすがに全員分見れねえか!!」


捲は残念そうに舌打ちをする。

クラス内の女子からの白い目線が捲に突き刺さるが本人は全く反省していなかった。


普通ならば雅も冷たい目を向けるが、今だけは捲に戦慄をしていた。


(あいつ、捲れた時間なんて1秒もないのにどんだけ見てるねんよ………動体視力やばいやん。つーか、)


雅はさっきの捲の台詞でおかしいところに気付く。


「結局後半青やんけ!! 言い換える意味よ!?」

「な、なんだってー!?」


心の声が思わず口に出てしまった雅である。

捲もそれに気づいてやってしまったとばかりに床に膝をつく。

クラス内が若干呆れたような空気になったがすぐにピシィと硬い空気になる。

雅は恐る恐る自分の後ろの方を向くとフェルシアの体から火の粉が迸っていた。


攻撃性のない神託力オラクルとはいっても真正面にいたフェルシアは風を絶対に躱せる距離にはいないわけで。


捲が顔をかなりニヤつかせながらフェルシアに黒い笑顔を向ける。


「ごめんな、これが君の他の女の子との差だよ。 クマさん・・・・パンツのフェルシアちゃん♡」

「!」


クラス内の空気が火の粉で暑かったはずなのに氷河期の空気にまで下がった気がした。

フェルシアから表情が消え、右腕に炎を纏い刃へと変化した。


「ちょ、ヤバ!」


さすがの捲もヤバいと思ったのか周りの机を飛び越えて教室を出ようとする。

だがフェルシアの神託力オラクルが行動を許さない。


「≪炎獄檻バーニングケージ≫」


教室から出ようとした捲が炎の檻に捕らわれる。

捲は檻をガシガシ殴るが、壊れないようで半泣きで雅に助けを求める。


「たすけてくれぇ!」

「いや、アホしてるからやん……」


思わず助けなくていいかなと思ってしまった雅である。

だが友人を簡単に見殺しにするわけにもいかず、一歩ずつ捲に近づくフェルシアを説得する。


「フェルシアさん、捲がしたことは確かに駄目なことや。だがさっきの君の発言もだいぶOUTやで?」

「あ?」


フェルシアがもう脳内血管がブチブチかと思うぐらい赤い顔で雅にメンチをきる。

あまりの怖さに雅はガタガタになりながら進路を避けて言葉を続ける。


「だだだ、だから捲は殺していいから僕をお許しをぉおおお。」


土下座スタイリッシュで教室の床に頭を擦りつける。


さっきまでの友達思いな雅はどこにいったのか。

真相は闇の中である。

土下座する雅にため息を吐きながら白がツカツカと雅の隣まで歩いてきた。


「篠倉さんそれじゃあ説得になってませんし、結局神風さん死んでますよ………はぁ、フェルシアさん」


白がフェルシアを思い切り睨みつけながら怒る。


「自分の神託力オラクルが強いからと言って自分勝手をしてもいいと勘違いしてませんか?」

「雑魚が何をほざこうと知ったことではありませんわ。それとも私に何か?」


フェルシアが一歩も譲らずに胸を張って白に張り合う。

白も逃げる気はないのかさらに一歩出てお互いが視線をぶつけ合う。


クラス内に緊張が走る。

下手をすれば一触即発で殺し合いが始まるかもしれない。

そんな気持ちでクラスメイトは見ていたが雅は、


(ここで考えることじゃないけど………フェルシアって――)


雅が思った瞬間に捲が笑いを堪えながらポツリとつぶやいた。


「フ、フェルシアちゃん張る胸ねぇのに無茶しやがって……」


慌てて檻越しに捲の口を塞ぎ、小声で雅が注意した。


(ば、おま聞こえたらどうするねん!)

(聞こえる分けねえじゃねえか、こんな小声なのによ!)


会話が終了した瞬間にフェルシアの視線が白から捲の方に向けられる。

怒り顔を無表情に戻して空いていた拳を握りしめる。


「『爆炎ブラスト』!」


廊下側のドア際で檻に囲まれていた捲が爆発する。

近くにいた雅がやっと聞こえた程度の声量だったのにフェルシアは聞こえていたみたいだ。

ちなみに爆発の範囲は調整されていたのか雅には全く当たらなかった。


「グァアアアア!?」

「め、めくるぅううう!!」


雅が心配そうに爆発する捲から離れた。

だって危ないんだもん。

爆発の煙が終わった後、捲はどこぞの竜球集めのヤ○チャになったみたいに蹲っていた。


「とりあえず今からが本題ね」


白が捲の方を一瞥もせずにそういった。

ちなみに捲のせいで、クラスのみんなが微妙な面持ちなままなのは言うまでもない。

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