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テンプレ主人公の友人枠  作者: P.river
序章 主人公と友人
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嫁候補と主人公様

見慣れた風景に雅はうんざりしつつ、気分転換にチュッパチャプスを取り出し舐める。


状況を整理すると、顔がそっくりなあ2人の少女がが黎人に対して謝れと怒っていた。

正確に言えば1人のお金持ち的少女と双子取り巻き2人という風情である。

少女たちの怒りに対しての黎人の反応は淡白なモノだ。


「とか言われてもそっちがぶつかってきたじゃん」

「「なんですって!?」」


と黎人が困り顔で頭を掻くと双子取り巻きズが激昂する。

その時フェルシアと思われしき少女が取り巻きを手で制し、ため息をつきながら冷たい声で言った。


「…もういいわ、あなたたちは下がってなさい」

「「は、はい!」」


取り巻きは顔を青くして一歩下がり、フェルシアは黎人の前に立つ。

外見はとても美しく、血色の髪と銀色の目をもつツインテールの美少女だ。

フェルシアは若干顔を笑みで崩しながら、丁寧にお辞儀する。


「初めまして、フェルシアと申しますわ。天賦黎人様とお見受け致しますがお間違いないですか?」

「あぁ、そうだ。なんで怒ってるのかしらねえけど、俺が何かしたか?」


黎人がとっても嫌そうな声でフェルシアに言い返すと、彼女の眉が若干寄った。

雅は疑問に思い、視線をフェルシアの下のあたりに向ける。

すぐに黎人がしたミスに気付いたが、全く言う気はなかった。


もっとも大声を出さないと届かない距離だという小さなことが主な理由であったからだが。


眉をピクピクさせながらフェルシアが怒りを押し殺したような声で言う。


「あ、あなたほんと、分かっっってないですわねぇ!素直に謝ればいいものを!!」

「あ?」


黎人がかな~りイライラした声でそう聞き返すと、それが合図だったかのようにフェルシアの周りに紅蓮の鎖が漂い、周囲の気温を上昇させる。

急な火の勢いに黎人は思いっきり後ろ向きにひっくり返った。

フェルシアは怒りの声とともに自身のスカートの赤黒い汚れを指す。


「あなたの血で私のスカートが汚れたって何故気付かないのですか!?」

「あ………」


フェルシアが来ている血がべったりついたスカートを見て、黎人は脂汗をかく。

何かを弁論しようにも証拠を見せられて何もできなくなってしまった。

それでも思いついた言い訳は、


「人が多かったから仕方ねえじゃん!!」


という苦しいモノであった。

まぁそんなもの言い訳としかとれない訳で。


「言い訳は聞きたくありませんわ、私その様な男大嫌いですから」


フェルシアは炎を身に纏い、手には火でできた不定形の剣を持ちながらそういう。

炎を纏う様子はまるで戦神のように神々しく凛々しい姿であった。

剣を黎人に向け高らかに宣言する。


「決闘ですわ、天賦黎人! もしあなたが負けたら身分相応の罰を受けてもらいますわ。そして、ぶつかってきたのを謝らなかったことを後悔させてあげますわ」


その言葉に絶望しながら黎人は戦闘態勢をとる。

フェルシアは剣を肩の位置まで持ってくると刺突の構えをとる。

嫁候補ヒロインと主人公の戦いがそこで始まった。


◇◇◇

雅は校舎側にある野球部と思われる盛り土の上で戦いを観戦していた。


「やっぱ、フェルシアって奴も高校一年生にしては異常なほど強いな」


炎でできた剣は軌道がかなり読みにくく、速さも相当なものだ。

かなり訓練を積み重ねてきたに違いない。

だが一番の強さの理由は、そんじょそこらの大人では歯が立たないほどの能力行使の上手さと単純な神託力オラクルの力ゆえであろう。


常人であれば1分とかからず、フェルシアに丸焼きにされてしまうのは必至だろう。


とは言っても、友人である雅は彼らの戦闘には全くかかわるつもりはない。

ただ主人公様は超人・・程度ではとめられないからだ。


「あの主人公様が簡単に負けることは滅多にないと思うんやけどな」


独り言を呟きつつチュッパチャップスをかみ砕く。

雅がかみ砕くのを合わせたかのように、炎が黎人とフェルシアの中心で爆発する。

周りにいた生徒たちは興奮しながらその激しい戦闘を眺めていた。


雅がボーっとしながら、黎人が炎の拳で吹き飛ばされるのを見ていると景色の中で雅は違和感を感じた。

殺気ともとれるような気配である。

慌てて盛り土から立ち上がって周りを見回した。


(ギャラリーの中に誰か黎人を狙っている奴がいるのか?)


黎人のような年中パーリーピーポーな人種を恨む人はたくさんいる。

そういう雅も彼女の一人ぐらいほしい年ごろで、黎人に対してイラッとすることはたくさんある。

しかし、男子たち(雅も含む)は恨むだけであって、殺意まで抱くとなると相当な人物だ。

一人だけ異様な気配を纏っている白っぽい髪の毛の生徒がいた。


危険だと感じてよく見ようとするが、運悪く凄まじい爆発が戦闘現場で起こって煙で何も見えなくなった。


「ゲホゲホゲホ………ッソ、どこいったんや?」


もう一度目を擦って周りを見たがそれらしき人物はその場から消えていた。

モヤモヤした気持ちを雅は抱えつつ、さっきのは気のせいだと信じて観戦を続けた。


◇◇◇

2人の戦闘は佳境を迎えていた。


単調な軌道の火球や熱線を黎人は体をひねったり、ジャンプで躱す。


戦いの最中、黎人自体は能力を全く使っておらず、フェルシアは半分程度かもしれないが能力を行使していた。


(ま、黎人は使わないというより攻撃の激しさに使えないといったところやろな)


炎が荒れ狂うなかで黎人は制服を焦がしつつも直撃を避ける。

フェルシアは一撃も当てれていないことにイライラしているのか攻撃が荒くなり始めたみたいで、直線的になり始めている。


しかし、黎人は躱し続けるが徐々に炎の海で逃げ場が無くなってきているのか、紙一重が多くなってきた。

数秒後、ついに足がもつれて黎人はコケてしまった。

その隙にフェルシアが素早く両腕に炎を纏い、火でできた巨大な砲門を作り上げた。

黎人の懐に潜り込んで黎人に狙いを定める。


「この一撃受けてみなさい…」


不穏な空気に黎人が立ち上がってバックステップをするが、フェルシアは照準がずれないように移動して撃つ。


「≪焔撃ファフニール≫!!」


砲門から打ち出されるのは一本の猛烈な紅い光の柱。

見た目の通り、これは超高密度な高温の熱線である。

範囲は幅1Mという極太レーザーであるため躱すことも容易ではない。


普通ならここで変な悲鳴を上げて吹っ飛ばされるのがモブであろう。

だが、


「さぁて、ここからでしょ?」


と言って、雅がニヤニヤしながら黎人を見る。

黎人が見られているのに気が付いたのか、嫌そうな顔を向けて神託力オラクルを使う。

主人公れいとが主人公と言われる能力、それは―――


「【勧善懲悪英雄キルリングハーツ】」


黎人の全身が御伽噺にでてくる英雄のように白銀の鎧に包まれた。

右手には黄金の剣、左手には大きめのカイトシールドが手元に生成される。


どんな悪であろうとも切り裂く英雄の力。

悪は必ず敗れる。

それが勧善懲悪英雄キルリングハーツだ。


黎人は、カイトシールドを掲げて宣言する。


「我を守る盾をここに――≪全属性防御盾フルエレメンタルシールド≫」


黎人がその盾を体の前に出す。


直後に≪焔撃ファフニール≫が直撃するが、盾が極太レーザーを全て受け止めて威力を完全に封殺した。

さすがのフェルシアも自分の必殺技を無傷で防がれて開いた口がふさがらないようだ。

雅は嘆息しながらフェルシアに同情した。


「彼女も強力な神託力オラクルを使えるからこそ、あの盾の防御力が異常だってことは余裕で分かるやろな」


雅は頻繁にこの防御力見ていたから何も思わないが、普通の人間にとったら異常以外のなにものでもない。

簡単に言ってしまえば、溶岩に裸一貫で飛び込んで数日間生きれるか?ってことと同じぐらいだ。


特に観戦しているみんなではなく、自身の絶対的攻撃力を信じるフェルシアが一番恐怖を感じたことだろう。


まぁ、そもそも溶岩に飛び込む時点で衣服はないが。


最強だと思える黎人の神託力オラクルは欠点が一つだけある。

観客の数人がヒソヒソ黎人の格好を見ながらしゃべっているのが聞こえた。


「なぁ、あの子の服装かなりヤバくない?あと眼帯が…」

「そうだよな。すんごく強いのは分かるけど」


強さと引き換えなのだろうか、なぜか見た目が厨二病チックなのだ。

雅もあの格好になるぐらいなら能力を使わない学校に行ってたほどだ。

どんな姿なのかは想像にお任せしよう。


黎人がヒソヒソ話に半分涙目になりながらフェルシアに即座に肉薄する。

フェルシアが炎を出そうとするが黎人の剣を首元にあてられて、


「俺の勝ちだ」

「くぅう……」


その言葉にフェルシアが歯を食いしばりながら、炎を体に収める。

これで戦闘が完全に終了した。

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