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テンプレ主人公の友人枠  作者: P.river
1章 黎人インモータルブレイク
22/44

戦場は未だ続く

チン――という澄んだ音と共に黎人は剣を鞘に納める。

それと同時に地面に片膝をついた。


「やっぱキツイなぁ……クソ」


黎人は全身の痛みを堪えながらそう言う。


(後ろから追っかけてきてたゾンビとかグールが途中で消えたのはたぶん雅達のおかげだろうな)


実際はちょっとピンチな状況な雅たちのことを知らない黎人は軽くそう考えてザリグナに歩み寄る。

そして、ザリグナの襟元を引っ掴むと体を持ち上げた。


「ザリグナ、フェルシアをどこにやった……?」

「誰が……言う必要がありますか?」


ザリグナが骨格が変形した顔を歪ませながら黎人の言葉に嗤う。

黎人は顔をムッとするとザリグナを顔面から地面に叩きつけた。


「ふざけんな!」

「グフッ!?」


情け容赦ない黎人の攻撃にザリグナは悶絶する。

黎人は言葉をつづけながら、もう一度ザリグナに尋ねる。


「次はない。フェルシアはどこだ!!」

「ギヒッ!?」


ザリグナは鼻を抑えながら後ずさる。

黎人は顔を怒りに染めたまま一歩前に進む。

だが、ザリグナが後退して壁にぶつかった瞬間に笑みを浮かべる。


「あめぇえええんだよ、このお坊ちゃんがよォオオ!!」


ザリグナは腰から拳大の白い球を投げつける。

黎人は反射的にソレを斬りつけるが、球が二つに割れた瞬間に膨大な煙が黎人を襲う。


「むっ!?」


視界を覆う煙に黎人は困惑していると、ザリグナの声が頭上から聞こえた。

黎人が頭上を見上げると黒く巨大な腕が迫ってきていた。


「これを受けてみなさい!!」

「ぐぅ!?」


黎人はギリギリのタイミングで盾を構えると同時にズシンという鈍重な音が鳴り響く。

足が大理石っぽい床に沈み始めるが、右手も使って根性で押し返す。


「うりゃあああ!!」

「なんだと!?」


黎人はそのままバックステップで距離を取る。

煙が晴れたその時にザリグナの全景が明らかになった。


まず、全身の皮膚が黒くなり10Mを越える背丈になっていた。

加えて頭部は竜のような形で手には鉤爪も持っていた。


黎人が余りの豹変ぶりに言葉を失っていると、ザリグナはふふんと鼻で笑う。


「どうかね、この最強の肉体は? 炎に毒、それに呪い……君では勝つのは不可能だと教えてあげよう」

「はん! 笑わせんな、俺はフェルシアを救って一緒に帰るんだよ!!」

「ほう? やってみたまえ!」


黎人とザリグナが二度激突する。

先制攻撃は黎人だ。


「≪たった一つの傲慢オン・エ・プライド≫」


言葉と共に黎人の左手の盾が光り輝き、徐々に先端がとがり側面は滑らかな曲線をえがいた。

光が消えた瞬間に一振りの日本刀が手にあった。


左手に刀、右手に片刃両手剣バスターソードを持つという歪な二刀流。

黎人はザリグナに向けて一歩踏み出すと同時に片刃両手剣で斬りこむ。


「ハァア!」

「効きませんよ!!」


黎人の剣は黒い剛腕で思い切りはじき返される。

間髪入れずに黎人は刀で右腕を袈裟斬りにすると、腕から大量の血が流れだす。


「そんなに固くはねぇな」

「チッ」


ザリグナは舌打ちをしながら口から紫色の煙を吐き出す。

黎人はすぐに危険なものだと判断すると、体を反らしてブレスを躱す。


「あっぶね!」


そして黎人は起き上がりざま胴体にX字型に斬りつけた。

やったかと思った黎人だが顔色が焦りを帯びる。


(なんていう再生速度だ……まだ≪たった一つの傲慢オン・エ・プライド≫を使うべき場面じゃねぇのに)


なぜなら、黎人が与えたダメージをも上回る速度で回復しているのだ。

戦況はザリグナへと傾き始め、じわじわと押され始めた。

ザリグナの拳が間髪を入れずに飛んでくる。


「ほらほらほらほら! 受け止めてみなさい!!」

「クソ!」


黎人は刀と剣をクロスして攻撃をガッチリと受け止めて押し返すものの手数が相手の方が有利だった。

蹴りもあるので相手の攻撃は常に3回あるのだ。

反撃の隙など……


(ここか!)


ザリグナの右拳のストレートと左拳のアッパーの間に1秒にも満たない隙を見つけた。

黎人は右拳が飛んできた瞬間に刀を空中に放る。


「フッ!」

「なに!?」


ザリグナが刀に気を取られた隙に、右拳を紙一重で躱すと剣で地面にザリグナの手を縫い付ける。


「ぐぎゃああああ!?」


痛みで体勢が崩れたザリグナの巨腕を駆けあがると、ゆっくりと落ちてくる刀を掴む。

そして、黎人はザリグナの頭上へとジャンプした。


「≪解放リリース≫」


刀にどす黒いオーラが漂い、それを黎人は身に纏う。


黎人の【勧善懲悪英雄】の能力の一つである、≪たった一つの傲慢オン・エ・プライド≫は神託力オラクルの中でも異質な精神・・に左右される技だ。

その人物のもつ『傲慢さ』の度合いで攻撃力が変化する。

正確に言えば自分の持つ信念、それに対する自信と貫き通す精神。


黎人の持つ信念とは『仲間を救いたい』だ。

これは彼自身のもつ最強の心であり、願い。

何物にも揺るがされない固い決意。


それこそ天賦黎人の強さ。


「いっけえぇえええ!」


空中で何度も回転しながらザリグナの頭部に強力な技を加えようとする。

だが、急にカクンと体の力が抜けた。


「!?」


黎人が突然の事態に目を白黒させていると、その様子にザリグナは滑稽そうに笑う。


「くくく、何か秘策でもあるかと思えばその程度か……期待外れもいいとこだな」

「―――」


黎人はザリグナに言い返そうとするものの、声が出なかった。


(毒の霧は吸わなかったのに!?)


黎人は力が徐々に抜けていき、刀を地面に落としてしまう。


「なぜ力が抜けるか不思議だろう?まぁ、無理もないことだ」


なぜなら、と言葉を続ける。


「これぞ【呪炎】の本来持つ最強の『呪い』なのさ。 どんな人間をも殺しきる悪魔の呪いだな」

「―――」

「天賦黎人、分かるか? 貴様はお前の好きなフェルシア君の力で死ぬんだぞ?」

「―――やめろ」

「フェルシア君は本当に甘い。もし私がこの力を最初から手にしていたならば世界を簡単に取れただろうに」

「――――やめろ!!」


黎人は感覚が全くない足に鞭を打って無理矢理起き上がる。


「お前にアイツの何が分かる」

「分からんさ。私とて人間だ」


ザリグナの言葉に黎人は激昂する。


「ふざけんな! あいつがどれだけ悩んで、悲しんで、自分を責め続けたとおもっているんだ!!」


黎人は自分自身の過去とフェルシアを重ねていた。

神託力オラクルのせいで誰からも避けられて、一人ぼっちで過ごす休日。

だが、黎人にはそれでも付いてきてくれる友達が、仲間がいた。

彼女フェルシアには誰もいなかった。否、拒否をしたのだ。


だからこそ、


「俺がアイツのヒーローになるって決めたんだ」

「ほう、満身創痍のあなたが今から私に勝つというのですか? そしてフェルシア君を救うと?」

「ああ、そうだよ。絶対にだ」

「なるほど。ですが」


ザリグナは一歩も動けない黎人に向けて、片刃両手剣バスターソードを向ける。


「どうあがいてもチェックメイトです」

「―――――」


黎人に剣が高速で振り下ろされる。

必死に躱す方法を探すが、今の黎人では全く行うことが出来なかった。

剣が目前に迫る。


(こんなとこで死ぬわけにはいかないんだっ!!)


そう思った瞬間に黎人の視界が真っ赤に染まった。





――――――雅の血によって。


雅は黎人の前に立ち左腕で片刃両手剣を受け止めていた。

実際は受け止め損ねて、腕の半分ほどまで剣が食いこんでいたが雅の顔は全く変わらなかった。

雅は剣を右腕で押し返しつつ、黎人に優しく言う。


「全く本気で無茶するなぁ。 ほんまにお前はアホや」

「み、やび」


雅はそのまま剣をザリグナからむしり取ると、言葉を紡いだ。


「おまえ、けが……」

「でも……そういうの嫌いじゃないで。 早く凛化から治療もらってな」


右手で黎人の首根っこを引っ掴むと凛化のいる後方へ放り投げる。

雅は黎人を一瞥することなく、片刃両手剣バスターソードを片手にザリグナを睨む。


「んで? あんたがボスっぽいけど違う?」

「ボスという表現は少し苦手だから、しがない研究者とでも名乗っておこうか」

「そうか」


雅は神託力オラクルを全力で使用する。


「【オール能力ステータス制御コントロール】 ≪自然治癒特化リジェネレーション≫」


言葉と共に雅の腕の傷口が完全に塞がる。

雅は軽く肩を回すとザリグナの方だけを見て、黎人に一言。


「とりあえずぶっ飛ばす!!」


雅が小さな一歩踏み出すと同時にザリグナも大きな一歩を踏み出す。

お互いの距離が0になった瞬間に拳同士が激突する。

フェルシア救出の最終決戦の幕が上がる。

基本的に「いっけえええ」はフラグです。

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