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テンプレ主人公の友人枠  作者: P.river
序章 主人公と友人
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先輩と友人

雅は体育館に着いたものの入学式までは、まだ40分ほど早く、寮に行くように教師の一人に言われたため寮に向かった。

学校のそこそこ豪華な校舎を横目に5分ほど歩くと『学生寮』と書かれた看板がついた建物を発見したが、


「ちょっとボロイなぁ………」


なぜなら寮が完全に木製でできた建物でところどころ修理のあとが残ってたからだ。

そのことを我慢をして、寮の玄関で机を置いて暇そうにしている入寮受付の人に話しかける。


寮の受付員は、ピンクの髪を黒いカチューシャで止めた大人っぽい少女だ。制服の肩口には二つの青色の星型のワッペンが縫われていた。


ちなみに身長は雅より10センチ以上高く、大体165ほどである。雅はつまり低身長なのだ。

雅は低身長のことに心をボロボロにしながら、笑顔で尋ねる。


「あの、すみません」


若干ボーっとしてた彼女は、雅に気付くと笑顔をこちらに向け話しかけてきた。


「あら、新入生?」

「はい。初めまして、筱倉雅と言います。寮生の登録はここでいいのですか?」

「ええ、登録はここよ。私の名前は山下やました水瓜すいかよ、今年で2年生になるわ。宜しくね、新人ちゃん」


水瓜は雅に対してスカートのすそを軽くつまみ優雅にお辞儀をした。

高貴な育ちなのかと思うが、今はそれを流す。


「ちゃんいらないです。後、荷物預かりお願いします」

「あらー、つれないわね。OK、書類出すからちょい待ち」


と言って、水瓜は雅の荷物を軽々と持ち上げて後ろに置くと、机から書類とペンをだして雅に渡した。

雅はそれをもらって、寮生登録書類と書かれた書類に記載事項をどんどんと書いていく。

必要事項を書きながら雅は水瓜のことを女性の中で楽な存在だと感じた。


(一個上の先輩で話しやすそうやなぁ。中学とは大違いや)


雅はここまで楽な女性が久しぶりで中学生時代ではありえないことだなぁ、と考えていた。


中学生の頃は、在学している女子のほとんどは黎人の嫁集団ハーレムとなってしまい、雅と同じ中学の男子生徒のほとんどは恋愛というものができなかった。


黎人は8人ほどの正嫁に囲まれても未だ尚且つ他の女子に優しくするという神対応があって、他校にも嫁候補がたくさん出現して処理に追われたのも記憶に新しい。


卒業式が終わった直後にたくさんの女子に黎人が追われていたのだ。(主に告白のため)

彼を助けるためにスコップで町同士をつなげるほど大きな抜け穴を掘ったのもごく最近のことだ。


「冗談抜きで中学と同じはイヤやなぁ………」


と雅がかなり苦笑いしつつ、全部の記入事項を書き込んで水瓜に渡した。


「はい、先輩お願いします」

「ありがと、確認するわね」


そうするとパラパラとめくって記入の確認作業に入った。

その間も水瓜は暇なのか雅に対して喋りかけた。


「そういやさ、朝の事件知ってる?新入生が股間を蹴られてウチの保健室に運ばれたの」

「いえ知らないですね。早朝ですか?怖い話やなぁ」


雅が本当に知らない感じでそう言うと、水瓜は書類から一度顔を上げて首を振った。


「さっきよ。国の専門医療機関に匹敵するウチの保健室でやっと治療って相当重症だわ。死んでないといいけど」

「人間そんな簡単に死にませんって」

「男として死ぬことぐらい考えてあげなさい」


水瓜が雅に呆れながら資料を読んでいると、愕然とした表情で途中で手を止めて資料を落とした。

恐る恐る雅をじっくりと見て、


「き、君、男なの!? 嘘、マジで信じらんない。超絶カワイイ」

「よく間違われますねえ。あとカワイイやめてください!」


水瓜はギャル語に若干なりつつ、カワイイを小さく連呼しながら書類にハンコを押して提出用ポストに投函すると雅の真正面まで来た。

そして、水瓜は両手で雅の片手をギュッと握りしめると頬を紅潮させて、


「ペロペロさせて」

「ふぇ!?」


なんともヒドイ顔になって変態発言を始めた。


変な声を出しながらも身の危険を感じた雅は即座に水瓜の手を振り払い、拳を構えて臨戦態勢をとる。

対する水瓜は手をワキワキさせながら捕まえようと体の姿勢を低くする。

そして顔に浮かぶニヤニヤ笑いを収めずに水瓜は言った。


「あらぁ、ひどいじゃない。イタイケなJKの手を払うだなんて…」

「先輩、マジで今の発言いってるんすか? ペロペロをガチでするのはおかしいでしょ!!!」


その言葉に一度水瓜は動きを止めたが一度舌なめずりすると再びネチネチした目線で雅の体を舐めまわした。


「え~!? 仮にペロペロしても減るものなんてないじゃない」

「人としての尊厳傷つくわ! 常識ないんですか!?」

「それとペロとは別の話よ。交渉失敗したってことは、強硬手段しかないようね………」


そう言い終わると水瓜は走り出そうと足に力を込める。

雅はいつでも対応できるように一歩足を引いて拳を体の正面に構える。

二人の間に小さな木の葉がハラリと落ちた瞬間に同時に地面を蹴る。

ここに凄まじく無駄な数分間の寮前の死闘が始まった。



◇◇◇

この世界では神託力オラクルという力がある。

いわゆる超能力の類のことを指していて、能力は十人十色であるが被ってる系統の能力も多々あることが判明している。

今の世の中で神託力オラクルを使い世界の経済、政治は動いている。

それらの世の中に能力を伸ばすのがこの双牙学校を含む特殊学校だ。

◇◇◇



距離が1Mを切った瞬間に水瓜が地面を蹴って左手で雅の顔を掴もうとした。

雅はその手を右足で高速で蹴り上げると、地面に手をついて勢いを殺さずに体を回転させて右足で水瓜の顔面を蹴って寮付近まで吹き飛ばした。

水瓜は壁にぶつからないように足を地面につけて勢いを弱めて、赤くなった頬っぺたを抑えながら雅のことを冷静に解析した。


「…痛っいわねえ、なかなかに強い神託力オラクルじゃん。大方、身体能力強化の能力持ちってことね」

「………」


雅はその質問には答えず無言で水瓜に肉薄するとコブシを作りお腹にぶちこんだ。

しかし雅はすぐに当たった感覚が全くないことに気づいた。


「ん!?」

「むふぅ、いいグーパンだけどまだまだ足りないわねえ。私を刺激するのには☆」

「キモ!! つーかなんでか……?」


雅が警戒して後ろに下がる。

その様子に水瓜はニヤつきを消さずに制服のカッターシャツの前の部分を軽く開けて、オヘソらへんの若干透けた体を見せてこう言った。


「ぶっぶー、私の能力は【水指揮者アクアコンダクター】よ。水を自在に操る能力ってこと!」

「丁寧に説明ありがとう。そんな説明して大丈夫なんすか?負けフラグたってますって」


雅が怪訝そうにそう言うと、水瓜は笑みを消さずに言った。


「ふふ、体を水にすることで物理は全く効かないわ。意識しないと水になれないけど、今の状況では雅ちゃんには負けないわ~」

「むむむ………!」


雅が顔を引きつらせながら一歩一歩と後退すると、水瓜がジリジリと前進して右手を上げる。

合図をした瞬間に水瓜の体から水の管がたくさん出てきて、一つ一つが細長い水の手のような縄のようなものができる。

というよりはむしろ、


「触手やん…!」


水瓜は触手をたくさん作ると、雅の体を取り囲むように配置した。

雅は、絶望的な心地でその触手を見ながら、腰を抜かしてしまいしりもちをつく。


昔、中学生時代に黎人の敵の一人にイカになる能力者がいた。

人質として、そいつに触手で羽交い絞め(意味深)をされて以来、凄まじい苦手意識を持ってしまったのだ。


(まぁ、そもそも触手が好きな人って大概碌な奴おらんと思うけどな!)



おそるおそる、雅が水瓜を見ると彼女の肉食獣のような目が自分の体を捉えていることに気付く。


「み~やびちゃあああん! 触手を大人しく喰らいなさい!!」

「いやや!死んでも受けへん!!!」


その返事を聞くや否や水瓜が上げていた右手を下におろす。その瞬間に待機していた触手が雅を襲う。

雅は体を酷使して、襲ってきた触手の大群を大ジャンプで躱して前回り受け身をとる。

さらに距離を稼ごうと後ろに下がるが、すぐに寮の壁にぶつかった。


「やば!!」


慌てて、ジャンプするためにしゃがもうとするが足元から触手が這い出てきた。

雅は寮の壁を蹴って斜めにジャンプをする。

しかしその目の前の空中に大量の水触手。そして無慈悲の一言。


「私の勝ちね?」

「やめて!もしかして、僕を薄い本みたいにする気かぁ!?」

Yes(はぁと)

「ですよねぇえええ!!」


状況が絶望すぎて、雅はハイテンションになってしまった。

しかし頭の片隅で雅は諦めずに何処かに蹴れる場所がないかを探すが、もう周り全ての景色が水色に染まっていた。


(Ah,神は死んだ)


そんな辞世の句のような何かを詠もうとしたその時に一つの言葉が耳に入った。

誰よりも力強く、気高い英雄の一声。


完全結晶障壁フルクリスタルフィールド


その言葉が出た瞬間に雅の体をすっぽり覆うクリスタル型の結界が張られる。

触手が結界を破壊しようとするが触手の方が結界に触れた瞬間に消滅した。


「私の水が完全に無効化された…? あなたは何者!?」


水瓜が怪訝そうに声の方に向くと驚愕と呆れが同時に浮かんだ。

なぜなら彼は股間部分にファールカップのような物を巻いていたからだ。

さすがの水瓜もダサいにもほどがあると思ったのだろう。

その声の主が顔を苦しそうにしながら、


「みやびぃ…加減をしらねえのか……俺じゃなきゃ死んでたぞ」


血まみれのズボンの上にファールカップをつけた少年こと、天賦黎人がそこにいた。

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