友人の役割とは
一旦ショッピングモールから避難した後に警報が終わったのを見計らい、雅たちは再入店した。
雅は口を酸っぱくして、
「ったく~、ほんまに次からは店の外でしてなぁ」
「わかってるもん!」
ちなみに凛化は雅にこっぴどく叱られたため拗ねている。
30分待ったおかげで騒ぎは収まったようで、また皆思い思いに過ごしている。
雅はスーツケースからあらかじめ買っていたチュッパチャップスを口に放り込むと凛化に聞く。
「凛化、そいえば何で黎人の居場所がブラコンどもにバレてるんだ?」
「あー言ってなかったね。鹿の神託力が【機械化】というのは覚えてる?」
「そうやったな」
雅の記憶では天賦鹿という義妹は機械化を使いこなす、かなり万能な前衛だったような記憶がある。
(黎人に手を出したら●すって言ってた、あのブリっ娘のことねぇ)
雅に言ってもかなり意味ない気もするし、雅が黎人に手を出したらそれこそ事案発生だろう。
さすがにその前に黎人自身も拒否すると思うが。
……してくれるよね?
そんな考えを知ってか知らずか凛化は口を開く。
「それで鹿が最近探知を使えるようになったんだよ」
「厄介やなぁ」
雅が腕を組んでう~んと唸る。
「鹿がギリギリ黎人を感知して、ここに来たねんな?」
「うん。いきなり『あれ!?黎人お兄ちゃんが何でNEONにいるの!?』って言ってすぐに外にでちゃったから追いつくのに疲れた」
「お疲れ様。ほかの義姉妹は大丈夫やな?」
「……今は家だけど、たぶん来そう」
中学時代の時に嫌というほど体験した記憶。
2人は似たような経験を何度も重ねてきたからこそ分かるモノだ。
凛化がとても嫌そうに顔をしかめると同時にやや焦りを見せる。
「ミー兄よ、今は鹿だけのはずだけどさ、もし他のも来たらたぶんヤバいよね?」
「たぶんじゃなくて確実にアウトとおもうんやけど……」
雅もうんざりした顔になってしまう。
そして、二人同時に顔を見合わせて諦めのような顔でため息をつきながら始める。
「まぁ、」
「兎にも角にも」
「「とりあえずは鹿とめねば!」」
こうしている間にもトラブルが起きないとは限らないので雅と凛化は店内に繰り出す。
2人の心は一つであった。
◇◇◇
ところ変わって黎人サイドのお話。
現在、天賦黎人は非常に困っていた。
フェルシアに買い物を誘われて、荷物持ちを頼まれてしまったからだ。
女子の買い物は待ち時間長い上に重いモノが多いということを理解している黎人は最初拒否した。
まぁフェリシアの背後に炎がメラメラ燃えて、お願いされてしまっため頷くこと以外出来なかった。
最後の手段の雅に一緒に来てくれるように頼んだのだが拒否されてしまう始末。
黎人はスマホを見ながら文句を言う。
「ッソ、あいつ今頃絶対俺の悪口言いながらキャンディ舐めてるんだろうなぁ」
飴中毒の男の娘のことを思いつつ、フェルシアが店から出てくるのを待つ。
さすがの黎人もランジェリーショップには入らなかった。
というか入ったらどんな目で見られるか分からないし、怖いからである。
そうこう考えていると、血色の髪を揺らして見目麗しい少女が店から出てきて買い物袋を乱暴に投げてよこす。
「黎人さん、早くこれを持ってください。それで次の店行きますわよ」
「フェルシア、ちょ待って! 一旦休憩しよ!!」
「もうですか? 軟弱ですわね」
「お前さ、量を考えろ!!」
思わず黎人があまりにも多い荷物を指さして言う。
さすがの黎人も両手で合計30Kg程度を持ちながら動くのはやや辛いのだ。
その様子にフェルシアが冷ややかな目線で黎人に向ける。
「あらあら、全く赤い顔をして……女子の下着に興奮しているのは分かりますがTPOを弁えて欲しいですわ」
「いや、興奮してないからな!?」
周りのジトッとした目線が一気に黎人に集中する。
それに黎人がアセアセしていると、フェルシアは悪戯っぽく笑い前に歩き出す。
「早く行きますわよ、ノロノロしているとおいていきますわ」
「くっそ、わかったよ!」
黎人がすたすた前方を歩いていくフェルシアに追いつこうとする。
だが、謎の銀色の人影がフェルシアの背後に立つ。
そして、人影はフェルシアに向けて拳を振るおうとした。
「ッ!!」
それに気づき黎人がフェルシアを庇おうとした瞬間に、バシンという音と共に2つの黒い影が銀色の何かを吹き飛ばした。
そのままフェルシアを襲おうとしていた人影を担ぎ上げて二人はこちらを一瞥もせずに去っていった。
わずか数秒の事のため黎人も全く反応が出来なかった。
黎人が口をあんぐりしながら消えたほうに視線を向けていると、フェルシアが立ち止まり不思議そうに黎人に尋ねる。
「あら黎人さんどうなされましたか?」
「い、いや何でもない」
「変な方ですね……早く参りますわよ」
黎人はもう一度さっきの人影集団が行った方向を見ると、たくさんのお客さんが普通に歩いているだけであった。
そこには一切異変が見つからない。
黎人は頭を掻きながら前を歩くフェルシアに追いつく。
(今のは何だったんだろう……?)
黎人は何か引っかかりながらもフェルシアについて行った。
その様子を遠くで友人と妹が安堵した表情で見ていたことは言うまでもない。




