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テンプレ主人公の友人枠  作者: P.river
1章 黎人インモータルブレイク
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再開と再会

雅は1時間後に大型ショッピングモールにたどり着く。

本当なら電車で15分ほどの距離なのだが、


「……ここまで絡まれるとは思わへんだ」


色々な人に道中話しかけられたりしたせいでここまで遅くなったのだ。

フードを脱いで高校から駅まで歩いただけなのだが、見るからにただのヤンキーからモデルの斡旋者(自称)だったり、挙句の果てには変質者においかけられたためである。

全員から逃げるのに神託力オラクルを酷使したことは言うまでもない。

やはり可愛いは罪である。


さて、このショッピングモールは外壁がショッキングピンクで有名な場所である。

中には数多の店舗が店を構えているという、よくある大型スーパーのようなものだ。


雅は中に入って、自分の生きたいキャンディ専門店に向かう。

その最中も雅は歩きながらも周りを警戒する。

主に嫁候補フェルシア主人公れいとのことである。

仮にいたとしても逃げる算段は立ててあるので問題はない。

何もトラブルがなければ、だ。


そんな予想に反して何事もなくキャンディ専門店に着いたので雅は少し拍子抜けに感じたが、


「まぁ、おれへんに越したことはないけどな」


と言って、雅は肩の力を抜いて緊張をほぐし店内あちこちを歩き回って物色する。

雅の外見のせいなのか周囲の視線が地味に痛いと思いつつも、『今日の新キャンディコーナー』という棚前で足を止めた。


「お、何か新しい飴ある~」


前回このショッピングモールになかったコーナーなので期待に胸を膨らませつつ、

雅は棚に並べられている⦅絶品アンコ祭り!⦆と書かれている試食用の飴を適当に一つ手に取る。

一つ口に入れると控えめな甘さが口の中で広がった。


「……最高♪」


今までで最高級の笑顔で雅は飴を舐めた。

とりあえず試食コーナーの飴を網羅するとさっきの飴の本製品を売っている売り場の前まで行く。

そして、雅は売り場の前でどの飴を購入するか悩み始めた。


「ふぅむ~、さっきのこしあん味もたまらんけど、つぶあん味も捨てがたい」


全く同じ見た目の棒付きの赤い飴を雅は両手に持ちつつ考えた。

こしあん味は滑らかな味わいで美味しいが、つぶあんの少し癖のある風味も素晴らしい。

結果的に言えばどちらも餡子のはずだが。


「だが、あえてここで栗あん味に行くのもまた一興やな……」

「ねー」


ややくすんだ黄色の飴を手に持ってニヤニヤしつつ色々と考えていると、雅は背後から声を掛けられる。

しかし雅は夢中になっていて気付かない。


「ねーねー」

「ここでまさか白餡だと、うそだろ!?」

「ねぇってば!」


後ろの人物が必死に肩を叩いているのに気づかずに、雅は餡子あんこ飴で超絶悩んでいた。

なぜなら一つ500円もする商品であったからだ。


まぁ、その人物がそういう理由を知る訳もない。

最後には痺れを切らしたのか雅に真正面に回り込んで目つぶしを喰らわせる。


「聞けぃ!」

「ボグシッ!?」


珍妙な声を上げて悶絶する雅にその人物は呆れたように声を出す。


「もー、相変わらずミー兄は飴のことになると見境なくなるんだから……」

「その声は!?」


雅はどこかで聞いたことのあるその声に戦慄した。

視力が回復したところで目の前に立っている少女が誰だか分かる。


「お、お前は黎人の妹1号!」

天賦てんぷ凛化りんかだってば!早く覚えてよ!!」


ぷんぷん怒りながら凛化りんかは言った。


天賦凛化は黎人の実妹であり成績優秀、眉目秀麗、その他諸々で有名な少女だ。

黒髪をサイドテールに結んで、年上を「~兄」「~姉」と呼ぶ。


普通なら久しぶりの再会にお互い喜び合う場面であろう。

だが、雅は彼女がいることにやや嫌な予感がした。

そう思った直後に凛化は困ったような顔で雅にお願いをする。


「ねぇ、うちの義理の妹が消えたせいで今探しているんだけどミー兄手伝って?」

「な、なんで僕がさ」

「だってミー兄知ってるんでしょ? 黎兄が新しい子とデートしてるの……」

「僕シラナイナァ」

「こら! とぼけちゃ、っめ!!」


雅は下手な口笛を吹きつつ明後日の方向を見るが、すぐに凛化に指でほっぺたをグイグイ押される。

……そう、彼女は義姉妹ブラコン達の暴走を止める常識ある仲裁者ストッパーなのだ。

そのため黎人の学校スクール嫁候補ヒロインを止める担当の雅と一緒に行動していたことがある。

所謂昔の馴染みって奴だろう。


「はぁ……ミー兄が高校一緒に行ってくれたから安心できるかと思ったけどこのザマね」

「いやはや面目ない」

「ほんとにね~」


雅が申し訳なさそうに謝ると、凛化は目元をキリッとさせると雅の手を掴む。


「じゃ、仕方ないけどミー兄にも手伝ってもらうよ」

「な、なにをぅ」

「黎兄のデートを死守するの!義姉妹たちの暴走を止めるよ!!」

「またぁ!? もうヤダ」


雅はイヤイヤ言って拒否をするが凛化がそれを許さない。

昔も同じ役割をしていた手前、雅に拒否反応が起こる。

凛化が諭すように雅に優しく言う。


「他の義妹姉ブラコンたちが来たら、さらにメンドクサイことになるの知ってるでしょ」

「ぐ、確かに」


もし黎人の義姉妹ブラコンがフェルシアとのデートに乱入したら、最悪な状況になることは間違いなしなのだ。

このショッピングモールで神託力オラクル同士が激突したら建物が無事だと言えるか?

否、言えるわけがない。

その時の弁償代を誰が立て替えるのかと言われれば、篠倉家がほとんどしなければならないだろう。

昔みたいに。


しばらく沈黙していた雅は、苦虫を噛み潰したようような顔で持っていた飴を商品棚に戻す。


(あ~、もう! 結局無視してもしなくても問題トラブルが起こるの確定やん!!)


雅は頭をクシャクシャと掻く。


「あ~もう分かったから!やりゃあいいんでしょ、やれば!!」

「ミー兄、無理言ってごめんね」

「ほんとに」

「……」


全く雅は悪びれた様子なくそう言うと、凛化の眉がピクピクと動いていたが仕方ない。

急に真面目な顔に戻り、雅は不安そうに凛化に聞く。


「そういや、どうやって二人に近づいて監視するん?」


別に黎人にバレたぐらいでは大したことはないだが、フェルシアはやや不味い。

尾行がバレたらこれまで嫁候補ヒロインの傾向的に不機嫌メーターがMAXになるだろう。

しかし、しなければ義姉妹との喧嘩になってしまう。


凛化はチッチッチと言いながら得意げにこう言う。


「ミー兄よ、半年ほど出会っていない間に私は少し進化したんだよ」

「ふぅん」


その顔は自信に満ち溢れていてすごかったが、雅は逆にすごく不安に感じる。


(これは安定の失敗フラグやな)


自信があるほど何かが抜けていることが多いのは、馬鹿兄れいとによくあったのでその実妹もしかりではないかと思ってしまう。

考えていたことが顔に出ていたのか凛化がムッとなる。


「なんか失礼なこと考えてない?」

「何も」

「……まぁいいや。じゃあ、見せてあげる。私の神託力オラクルの進化した姿を!」


そう言ってクルリとその場で一回転すると左目を右手で抑えて左手を雅にかざす。

本人に言うつもりはないがかなり兄に似ているところだろう、特に厨二チックなところが。


「【模倣者イミテイター】 ≪厚化粧メイクアップ≫!!」


言葉を言い終えるや否や雅の体が煙に包まれて姿を変える。

が、


「ゲホゲホゲホッ! ちょ、これ煙の量おかしない!?」

「仕方ないじゃない」

「いや、『仕方ないじゃない』―――じゃないわ!!」


余りの煙の量に思わず雅がツッコミに回ってしまった。

雅が咳き込んでいると、凛化がしれっと鏡を差し出す。

それを借りて覗き込むと、


「ん……って完全に女なっとる!?」

「ミー兄、声うるさい」


なんと、雅の体が黒スーツを着たグラマラスなナイスバディの女性に大変身していたのだ。

顔も化粧がしてあり余程近しい人でなければバレないだろう。

凄まじい変化に雅は若干ドモりながら凛化に聞く。


「確か、お前の能力って確か他の人の神託力オラクルをコピーする能力じゃなかったか!?」

「模倣をするっていう能力だから何か変身系統の能力も入っていたみたい」

「世の中、ほんっと何でもアリですよねぇ!!」


雅ががっくりと肩を落とすのを気にせず、凛化は自分にも厚化粧メイクアップを施す。


「じゃ、私の完成したら行こ!」

「分かったよ……」


もくもくと煙が辺りに立ち込めて凛化を包み込む。


諦めたかのように雅はいじけているとブーブーと突然大きなサイレンが鳴り響く。

何事かと、雅が天井を見ると火災報知器がめちゃくちゃ光っていた。


『―――大量の煙の感知を致しました。 火事の恐れがありますので火災予防システムを使用します。』


まぁもちろん原因は凛化の神託力オラクルのせいである。


そして、機械音声の警告がショッピングモールの中に流れ出す。

さすがの雅も凛化に怒鳴ってしまう。


「ほら見てみ、凛化!! 結局これじゃねぇえかぁああああ!」

「この煙を感知する火災報知器が悪いんだもん!私悪くないもん!!」

「るせぇ、とりあえずこの場から離れるよ!」


水のシャワーが降ってくる前に雅は男装した凛化を背負って神託力オラクルを使う。


「【オール能力ステータス制御コントロール】 ≪瞬迅ラピッド≫!」


雅の頬に金糸雀カナリア色の紋様が浮かび上がると同時に雅は地面を蹴る。

凄まじい速度でショッピングモールの2階を駆けると、飴専門店とは反対側にある駐車場側に飛び出した。

そして、雅はうんざりした顔でこう呟く。


「最悪な日だわ……」


まだ雅は知らない。

これがまだ初めの不幸であったことを。

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