狩猟民族の村
『何者!』小麦色の肌を緑の衣服で覆った住人たちは警戒を声に出した。
たどり来た方角は南だ……ぎゃあぎゃあを聞いたのだろう。
魔界の語学辞典が大活躍だ。人間界と言いつつ、けっこうな地域に魔族の少数派も散らばっているらしい。
「『突然失礼。旅の者だ、怪しく見えるだろうがそうではない』」
魔力を穏やかに発する。敵意なき『魔王の力』は人の王のそれと同じく、凪ぎ海のごとく涼やかである。
『まさに『魔王』の力。だが脅威は感じない。われらに害をなすことはないか』村民達が構える槍の後から、壮年の男が姿を見せた。
『ありえませんな。酋長殿で?』
『左様。ようこそ旅する『魔王』、計算好きの彼以来だな』
いかめしい酋長が相好を崩したことで、住人の警戒感も一転した。そこはかとない(露骨でないのは不器用さの表れだろう)歓迎ムードで忙しなく動き始める。
村の中央でぐらぐら煮立つ鍋は勢いを増し、ぽむぽむと愛らしい花が開いていく。
『われらは皆、優れたハンターだ。少しだが魔法を使える者もいる』
小屋にあげてくれた酋長が、ぎこちなく口角を上げて言う。戦い以外の事に慣れていないのだと。
古い考えだろうなと前置きし、『この村では男が狩りをし、女は留守を守る。まあ逆もあるが』
「『わたくしは、古い考えが悪いとは思いません』」
勉強熱心なロデルは君主の知らぬ間に語学辞典を攻略していた。「『雄雄しく戦う殿方は素敵だわ』」
酋長は(なぜか魔王も)照れ臭そうな仕草を見せて、
『おれにも嫁がいる。今から宴会だ、料理を馳走しよう』機嫌よく言った。
ちょうど、大人とは違う染め物を着た子供が、準備ができたと告げに来た。
2016年 01月12日 11時47分 公開




