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望む夢まで(上)  作者: 草輪千夏
1/1

望む夢まで

好きです。大好き。

そうだ、手紙を書こう。

大きな声で叫ぼう。

気付いてもらおう。

僕を見てもらおう。

伝えよう。伝えよう。

あなたが大好きだと。

できる限りに......。



いつもみたいに、僕はショーウィンドウ越しに外を眺めていた。

外は何も変わらない。

ただたまに、雲が空を覆ったり、雨が音をたてて落ちてくるだけだ。

外は何も変わらない。

きっと誰も、僕には気付いてくれないだろう...。

そんなことを思っていたら、一人の女の人が、お店に入ってきた。

黒いハイヒールの音を小さくたてながら。

背は、少し高いくらいで、髪の毛は短かった。顔立ちも整っていて、遠くからじゃ、女の人とわからないかもしれないくらいだ。

女の人は、店内を少しぐるぐるとした後、僕の方を向いた。

そして、僕をそっと手に取った。

僕は、買われたのだと思った。

ビニール袋の中は、息苦しかった。

でも、これから何を目の当たりにするのかと思うと、何だかわくわくした。


道路、街灯、それから、綺麗な、限りなく真っ青な空。

雲が、薄く延びて、まるでペンキ塗り立てのような空に描かれているようで。

人は、いつもこんな景色をみているのだろうか。

地球は丸いという。

凄く、大きいとも、聞いたことがある。

人はいいな。

手と足というものがあって。自由に身体を動かすことができる。

こんなに気持ち良い空の下を、当たり前に歩いているのだから。

とっても、羨ましい。


そんなことを考えている内に、女の人は足を止めていた。

そこは、[小尾目中学校]と書いてある、門の前だった。

学校は、人の子供が勉強をする場所だというのは、ちゃんと勉強済みだ。

僕はまだ小さいけど、ちゃんと勉強をしたから、この世界のこと、ちゃんと知ってる。

だから、きっとこの女の人が、先生なんだということもわかった。

女の人が[職員室]という部屋に入ると、いろんな大人の人が、女の人のことを、巳原先生と読んで挨拶をした。

「おはようございます。」

巳原先生の声は、落ち着いていて、見た目よりも女性という感じがした。

「それ、どうしたんですか?」

巳原先生と同じくらいの身長で、スーツに眼鏡姿で、ゆったりとした低めの声の男の先生が、僕を指差して言った。

「駅前の花屋に売っていて、ちょっと教室に飾ろうとおもって」

「あー。良いですね。植物を置くと、生徒が教室を走り回る回数も減りそうで」

「ええ」

暫くしてから、巳原先生はジャージに着替え、僕を持って上の階に向かった。

何だか、いろんな人がいるんだなとおもった。僕がいたところは、人は皆同じような人ばかりだった。

先生は[1-4]と表示された教室に入った。

僕は、黒板の隣にある、白い多なの上に置かれた。


そよ風が暖かい、町に色合いがついてきた頃、僕はこの教室で生活を始める。



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