表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
三猿霊媒師  作者: うさぎ
おまけ2
18/26

3.成長

「おーい、クロ! こっち、こっち! 席取っといたよ、ここ座って。何食べる? ねぇ、何にする?」


 待ち合わせた宿屋の食堂で、大衆の前にも関わらず大きく手を振りながら大声を出す鬼夜。年の頃はだいたい十五、六歳だろうか。異国の雰囲気をあちこちに醸し出し、町中を歩けば声をかけられるような美人に成長しはしたが、中身はまだ子ども染みている。その子ども染みた元気で、近寄ってきた男共を、得意の並外れた怪力で潔く蹴散らす様子は見ていて楽しいのだが。


「クロ。今日はまた派手にやったらしいね? 岡っ引きの親分もたじたじだったよ。あーおかしい! ざまぁみろだ!」


 まるで、ガキ大将がするみたいな顔をしながら焼き魚にかぶりつくと、「あっちー」と顔をしかめている。あたりからは残念なものを見るような眼差しが向けられているが、当の本人はまったく気づいていないのか、意に介さずだ。一体どこで育て方を間違えたのだろう、いや、最初からかとクロはひっそり胸を痛める。


「岡っ引きの親分には前回にも増して申し訳ないことをしたな……今度お詫びに何か持って行かないと」

「えー? 気にしなくていいよそんなの! だいたい今回の事件だって、親分たちがいなくても、クロだけで何とかなったし!」


 まるで自分の手柄のように喜ぶ鬼夜の頭を軽く叩いた。むっとした顔を向けてきた鬼夜は、べぇと舌を出して飯をかき込む。鬼夜の見せる様々な表情に、心が温まっていく気がした。


「もっときれいに食べなさい。ますます嫁に行き遅れるぞ」


 何の気なしにそんなことを言ったあとに、自分も年を取ったもんだなと思った。ふと、急に静かになった彼女のほうを見やると、何とも言えないような表情をしながら半片を噛んでいた。噛み切った半片が口からぽろんと落ちる。


「そんなことわかってるよ……」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ