暗黒龍の一撃
どーも『螺旋 螺子』です☆
今回は、やっとバトルシーンを入れました☆
しかし、前半は解説回とゆう・・・。
『まだまだ修行が足りんなw』
私は身を屈め、息を潜める。
≪地図≫に赤い点が表示されている。私の探知スキルのおかげか、向こうのモンスターにはまだ知られていないようだ。
しかし、今いる場所は『広大な草原・グラスランド』と呼ばれる、見渡す限り草原が広がっている為、隠れる場所が見当たらない。
モンスターには≪感知範囲≫(前方に広く、後方に狭く設定されており、視界に映ると攻撃に転じてくる)があり、近づけば見晴らしの良さを逆手に取られる結果に繋がってしまう。
ここは、やり過ごすのが得策かな?
そのまま息を潜めて、モンスターを視野に収めるまで待つ。
非常に耳障りな声と共に現れたモンスター。
「……≪ダズア≫」
常時、ギャアギャア喚いているのは、一説には歌を歌っているらしい。根っこを使って歩く花であり、花の真ん中に刺々しい歯が並んだ大きな口がある。大きさは、成人の人間程もあり左右に無数の触手を持っている。
敵を見つけると大声で鳴き叫び、尋常じゃない程の仲間を呼ぶという。アクティブプレイヤーでも見かけたら見過ごす事が多いモンスターだ。
確か、経験地が小ボス並みだった気がする。大≪ギルド≫となれば、永遠に刈り続けられる穴場だが、ソレ相応のリスクが伴うようだ。
ハイリスク、ハイリターン。
口の中でその言葉を転がしながら、腰に帯びるレイピアを右手で握り締める。
「一撃必殺……」
一撃で仕留めれば仲間を呼ばれる前に倒せる。HPはそれ程低くは設定されていないが、私のレベルであれば、一撃で仕留め切るのは可能なはず。
手がじっとりと汗で濡れ、それでレイピアを滑り落としたりしないだろうかと苦笑を浮かべる。
コレだ。この感覚。
高鳴る胸。荒れる息。こぼれる汗。
この緊張感が、なんともたまらない。
「私の二つ名を……見せてやる!」
不安な心を打ち消すかのように、宣言した。
汗ばむ右手でレイピアを握りなおし、ゆっくり切っ先を<ダズア>に向ける。
私の二つ名は<神速のセナ>。速度重視のレイピアを、誰よりも速く打ち出す事から闇小夜に付けて貰った名だ。
心臓の鼓動が更に加速する。
短く≪スキル≫を発動するために予備モーションを行う。腰を屈め、左手を前に突き出す。その左手に沿うように愛剣を揃える。≪虹色の風≫と呼ばれる私が唯一所持する≪スペシャル・スキル≫である。
基本的に≪スキル≫は、『双剣』・『大剣』・『細剣』・『棍棒』などなど数あるスキルの中で、レベルアップした際に支給されるスキルポイントを『筋力』・『敏捷力』・『跳躍力』・『調整力』・『持久力』・『体力』・『防御力』の全7種類に配分することにより、配分されたSPが一定値を超えた時に≪スキル≫が手に入る。
≪スペシャル・スキル≫は具体的な出現方法が発見されていない、さらに入手方法が極端に困難な≪スキル≫の総称である。≪虹色の風≫はスピード特化の私が、『敏捷力』、『跳躍力』、『調整力』にほとんどのSPをつぎ込んだ為に実現したものだ。
「後少し……」
標準を捉えて、レイピアを前に突き出すと共に、足を前に出す。『跳躍力』でスタートダッシュを更に加速させ、『敏捷力』がそれを上回る。そして『調整力』で剣先を確実な急所へ向けて、補正が入る。
ヒュンッと空間すらも切断する切れ味で、≪ダズア≫をしとめた。
「ぎゃピピピピぴぴぴぴぴぴ!!!!!」
「!?」
いや、仕留め切れていなかった。とっさに≪ダズア≫のHPバーを確認する。赤に達している、だが、0で無ければ意味が無い。
もう少しで一撃必死だったのに、『筋力』が僅かに足りなかったか? それとももっと距離を詰めるべきだったか? わずかに赤い色が残っている。
「ヤバイ……!!」
考えるよりも先に体は動いていた。叫ぶ≪ダズア≫に最後の攻撃を放ち、倒す。経験値やドロップアイテム、獲得熟練度などが表示されるが……それどころではない。
「逃げな……、ッ!?」
手遅れのようだった。四方八方、へたすれば十六方全てから≪ダズア≫が『群れ』となって、押し寄せる。
これは想像以上に……、多い!!
あちらこちらから伸びる触手は、人間には到底捌ききれない数だ。近寄る触手を切り落としても、直ぐに再生させれてしまうだろう。
どこか、どこかに突破口は無いの……?
「!」
正確には北西方向の<ダズア>は、それ以外の方向に比べ、数が少ないように見える。
「そこだ!」
レイピアを構え、北西方向を突き抜ける。飛び交い、絡みつく触手を、打ち払い、切り落とし、かわしながら一直線に進む。それでも触手はしつこく絡みつき、動きを止めようとした。
直後。
床かで見たような爆風が吹き荒れる。
その発生源に、一人の『少年』がいた。
「貴方は……!?」
「やぁ♪ 面白いことをしてくれたね。近隣のプレイヤーは全員避難しちゃったよ?」
それは、真っ白なフードで大剣を振り回す、いつか会った少年だった。体格に似合わぬ大剣をぶん回しながら、軽い口調で呟く。その会話中にも、<ダズア>が一匹、一匹と大剣の餌食になってゆく……。
「貴方も……」
逃げて!と言おうとした瞬間、少年の姿が消える。いや、空に舞い上がった。『跳躍力』特化なのだろう。彼は空中で大きく仰け反り、重力に従って降りた着地と同時に大剣を強く振り下ろす。
≪地球裂き≫と呼ばれる、大剣の熟練度を限界まで極めた者が使える大剣の最終スキルである。地面が激しく揺れ、そのたった一撃で≪ダズア≫が40~50匹ぐらいがまとめて吹き飛ぶ。
それに恐れをなしたのか、≪ダズア≫達は一斉に距離を保ちだした。
少年の持つ武器は禍々しいほど黒く、真っ赤な宝玉が両側にある。まるで目。刀の裏は刺々しい。
ソレはまるで、まるで、竜。
「それ……」
「うん? 武器かい?」
好奇心の赴くまま、武器にカーソルを合わせた。
「!?」
暗黒龍・ブラッドソード!? 確か素材は、『龍を殺す龍』と呼ばれた竜王、≪暗黒龍デス・バハムート≫だったはず……。
Dream・Box・Online内のモンスターの中でも最強と名高いSSS級のモンスター代表格のバハムートに勝ったのか!?
少なくても150人パーティーで挑んでも足りないとされるバハムートの素材を集める事が出来るなんて、只者ではない、と食い入る様に見詰めていると、フードから僅かに覗く口元が微笑んだ。
「敵は僕じゃないよ?」
彼の指は私の後ろに向けられている。
「?」
「後ろ、後ろ♪ どうして≪ダズア≫が距離を取ったか知ってる?」
それは、貴方に恐れをなして……、と思いながら振り返り、自分の見当違いな回答に絶望する。
「≪巨兵・ニービル≫」
『広大な草原・グラスランド』に生息するS級のモンスターだ。50人パーティーで挑むレベルだ。人間の何倍もある大きさ。青い体に、強靱な四本の腕。目は八個もある。
こんな緊迫した状況の中、少年だけが、
「Wow……、遊ぼうよ?」
口元を綻ばせていた。
次回、ボスキャラ<ニービル>との緊迫の戦闘シーンですw
ご期待くださいな☆