番外編 魔法使い王座決定戦
1話目で出てきたネタです(笑)
今日は待ちに待った(?)魔法使い王座決定戦である。
この行事はこの学園で唯一のふざけたもので、しかも意外と昔から続いているのだ。
「さあ、また今年も始まるわ…」
私、ここの学校の生徒会長をやっている三城花音は生徒会室から外のグラウンドをのぞいた。
「花音ちゃんは出ないの?」
「わあっ、びっくりした。陽斗ですのね」
思わず後ずさり。
「そんなにびっくりしなくても」
「だって。というか、私は出ませんわよ?これは生徒会主催ですもの」
「ふーん」
陽斗はどこか寂しげにつぶやいた。
「もちろん、あなたも出ていただくわ。全員強制ですから」
「まーったく、なんで強制なんだ?俺の選択する権利をとろうっていうのかい?この生徒会はどーなってんだk」
「お静かに。もう開会式ですの」
私は陽斗の口に人差し指をすっと立てて彼を黙らせた。あら、ボディータッチが過ぎましたかしら?
「えー、今日はよく晴れた…」
校長の長ったらしい挨拶がやっと終わった頃、もう競技は始まっていた。
なんだか、暑い。この炎天下、ずっと立っていたからか?でも私はそんなこと全く気にしていなかった。
「最初の試験は筆記です」
会場にはたくさんの生徒がおしよせ、満員だった。
「俺、こんな暑苦しいとこでやりたくなーい」
「ちゃんとやりなさい」
私は陽斗にぴしゃりと言った。
えー、と嫌そうな言葉を漏らしつつも結局彼は満点で筆記試験に合格、次の実技も余裕のトップで合格したのだった。そこが陽斗のむかつくところ。(私だけかもしれないけど)
なんだかんだ言ってとうとう決勝戦。陽斗は余裕で残っていた。
「あー、めんどくせ。ねえ、なんかごほうびとかないの?」
「何甘ったるいことを言っているの?ありませんわよ」
もう…なんでこんなに出来るのかしら…
「けちっ!」
そのあとは、もう知らない。なぜなら私はその場で倒れたから。
きっと熱中症だ。
暑い…
「はっ!」
起きたらベッドの上。そして頭上には陽斗の顔。
「大丈夫?花音」
彼は心配そうに私を見ていた。私…寝てたのかしら。
「まあっ、何?あなた…」
「心配したよー。突然花音が倒れるから…」
ふう、と陽斗はため息をついた。
「え、もう終わってるの?外…」
「ああ。もうとっくさ。あとちょっとで下校時間だけど」
「そう…」
そう言ってからわたしはふと思った。あら、結果は?
「…で、どうなったの?今日は」
「あ、俺?俺は負けたよ。あとちょっとだったけど」
そう言ってる彼は全然悔しそうでもなく、むしろ清清しい表情だった。私はちょっと不思議に思ったけれど、特にそのことには触れなかった。
「沖田にありがとうって言わなきゃ…」
「そうだね。頑張ってたよ、ひとりで」
「ええ」
その日はなんとか終わり、一件落着した…はずだった。
「会長、大丈夫でしたか?」
あのイベントが終わって数日後。生徒会の仕事があった時に沖田が話しかけてきた。
「ええ、すっかりよ。沖田、ありがとう」
私は精一杯の笑顔で微笑んだ。だが、クールな沖田はそれに同時もせず話し始めた。
「桐生先輩、なんで消えてしまったのでしょうかね」
「え?」
「いや、会長が倒れてしまった後から突然姿が見えなくなって。どこかに行ってたのでしょうかね」
鈍感な私でも彼の行動が分かった。――私をずっと看病してくれたんだ。
「…陽斗…」
そして私はなぜだか、教室へ向かってしまった。
「お、花音ちゃんじゃん」
「いたわ…」
2-sの教室に、陽斗はいた。一人で。
さわやかな、涼しい風が教室に流れていた。
「俺を探してたの?」
「え…ええ、まあ」
なんだかそう言われると照れくさいというか。ちょっと下を向いて返事した。
「何か、用?」
あああ…もう少し考えてから物事を実行するべきだったわ。私としたことが。こんな、簡単なミス…
「う…えっと」
恥ずかしいけど言うしかない。
「あのときはありがとう、私を助けてくれて」
あのときって何だ?私は言い終わってから思った。彼は果たして理解するのか。
だがそんな心配は無用であった。
「うん、どういたしまして。花音ちゃん、突然倒れるからお姫様抱っこしたよ~」
「?!」
結局、あまり感謝はできない私だったの…