3-3 自分とは
ああ、もうなんか恋愛系;;
なんでこの私が陽斗のことを気にかけなければならないのか、よく分からない。
でもそのことは自分の中でずっと消えずにいた。
あんな人…私はどうして。
「花音、何やってるのよ」
「え」
夏帆は私をつついて言った。ああ、なんてこと、私がぼーっとするなんて。
「だって、呼んでるのに返事もしないし、さっきなんて授業聞いてなかったでしょ。私はいつも聞いてないけどあんたはまじめなのにね」
「ええ、そうね。今日は調子が悪くて」
「そう。無理しないでね」
夏帆にこういうことを言われたのは初めてだった。本当は調子は悪くない。ただ、精神的に悪いだろうが。
でもこういう日が何日も続くとさすがに疲れる。集中ができないのだ。
ある日、私は自分の部屋のポストから、両親の手紙に気づいた。
うすい桃色のきれいで高そうな封筒。それは母の趣味だとすぐに分かる。
花音
こんにちは。だんだん冬も終わって春に近づいているわね。
こちらはもう暖かいわ。お庭の桜も咲きそうな勢いよ。
最近学校はどうかしら。
お母さんは感じるの。あなたが困っているって。
一応魔女の勘ってやつかしら。
悩みがあるなら相談しなさい。絶対にね。
ではお元気で。
父・母
「お母様…」
私は少し涙をぬぐった。やはり親は気づくのだ。
「1回、相談してみようかしら」
そしてその日の夜、私は母に電話した。
「あら、花音もうお手紙読んでくれたの」
「ええ、まあ」
少しの沈黙。すると母は話しだした。
「さあ、相談でしょ。大丈夫、言ってしまえば楽よ」
「うん…お母様、」
私はあのことを言う覚悟を決めた。
「あのね、実は、私ね、好き…っていうか、そんなものではないけれど、そういう方がいるの」
あれ?私は何を言っているのだ?好きって、どういう…
「そう。それって桐生くんでしょ」
母は笑って言った。うえ、なんでかな。
「え、いいえ、あの、私。それが言いたかったんではないですの…でもなんだか、どうしてか言ってしまって。そんなつもりは全くないわ」
自分が意味の分からないことを言っているのは分かっていたが、とめられず。母はますます笑っていた。
「いいえ、いいの。でもね、それが言いたかったのよ、花音はきっと。そうなのね。お母さんすごく分かったわ」
「えっ、何を…」私はかなりおどおどしていた。
「ふふ。花音は桐生くんのことがすきなのよ」
母は優しい声で言った。そんな、どうしてそんな感情が?
「…ちがいますわ…」
「もう、花音は意地っ張りなんだから。今に気づくわ。彼の存在がどれくらい大きいのか。まあ、いいわ。桐生くんに何かあったのかしら?」
「…ええ、彼、人間界に行くそうなんですの…」
「まあ…」
母の声が少し小さくなった。私はちょっと不安になって聞いた。
「私がもしそちらに行ったら、お母様たちはどう思いますか?あ、いえ、行くと行った訳ではないですが」
「うん…そうねえ、私はいいと思うわ。きっとお父様もそうおっしゃるわ」
「えっ?」
「花音の決めることでしょ。だから私たちがなんだかんだ言ってはいけないと思うの。花音は自分自身と向き合って考えなさい」
そういって電話を切った。向き合うこと…あまりしたことがなかった。
そして陽斗のことも、好きという感情ではないことを願って考えることにしよう。