3-2 気持ち
それから何日か経って、私は生徒会室で仕事をしていた。
「ねえ、花音ちゃん」
陽斗は私の隣に座った。そのとき教室には2人しかいない。
「…な、何かしら」
「もう、さ、生徒会も引退になるな」
「ええ。まあ私だけですがね。陽斗は違うわ」
「うん、そうだね」
また沈黙が続く。陽斗は何が言いたいのか私には分からなかった。
「あのさあ、花音ちゃんは進路とか決まってんの?」
「…え?なんで今そんな話をしなくちゃならないのかしら?私は…きっといい大学にでも行きますわ。親孝行したいもの。…というか、あなた、さっきから何が言いたいのかしら」
すると彼は、ははっと笑い、思いがけないことを口にした。
「俺は、人間界に留学しようと思ってさ」
「へ?」
人間界へ留学するということは、かなりのリスクがある。とにかく人間に正体がばれてはならない。
「いや、俺って何もとりえないし、まあお金持ちだけど?…自分がやりたいことって魔法界には無いと思うんだ。人間界で人間のことを知って、魔法界のためにがんばる。そういうことを俺はしたい」
陽斗は本気だった。そして私はかなり驚いた。
「…あなたってそういうことを密かに考えてるところが怖いのよね」
「あはは怖いってひどいぞ」
その日は流した感じで終わったが私の胸には何か痛いものが刺さった。
陽斗と離れることになる……