タイムパラドックス
女子寮のとある部屋で、忍び込んだ王子がヒロインを慰めていた。
「あの傲慢な公爵令嬢め! 明日の舞踏会こそ、奴の本性を暴いて婚約破棄……いや、国外追放にしてやる!」
ヒロインは言いました。「殿下、本当に恐ろしいのは公爵令嬢じゃありませんタイムパラドックスです」と。
「たいむぱらどっくす……とはなんだ?」
王子は首を傾げた。
「タイムパラドックスとは、こんな夜に必ず現れるのです。運命に抗うことは許さない、メビウスの輪から抜け出させないと、私を時の牢獄に閉じ込めるのです……」
ヒロインの声はどこかあきらめたような、疲れ果てた弱々しさがあった。
「どんな怪物だろうと僕がキミを守る」
王子はヒロインの手をしっかりと握る。
その時、天井裏にはヒロインの弱味を握ってやろうと、公爵令嬢が潜んで盗み聞きしていました。
「ぐぬぬぬぬ」手を握り合うなんて許せないわと。
でも、タイムパラドックスとはどんな恐ろしい怪物なのかと公爵令嬢は考えた。ドックスなんだから犬のモンスターなのかしら?そうだわ捕まえてヒロインにけしかけてやろうと。
「痛い!!」
その時、公爵令嬢は天井のネズミに噛まれました。しかし彼女はタイムパラドックスに噛まれたと慌てて暴れたため、天井ごと落ちてしまったのです。
いきなり上から巨大な物が振ってきたのだから王子とヒロインはびっくり。衝撃でロウソクは消え、暗闇の中で王子の背中には落ちてきた不気味な何かがそのまましがみつき「ぎょええーーッ!」と聞いたこともない恐ろしい唸り声を上げます。
王子は驚いて「たいむぱらどっくすが出たぁーーッ!!いやあ゛あ゛あ゛ーーッ離してぇ!」と一目散に女子寮から逃げていきました。しがみついた公爵令嬢を乗せたまま。
守るんじゃなかったんかいとヒロインは心で突っ込み「お幸せに~」とふたりを見送った。
運命の強制力は今回はこう来たのかと、感心しながら。
どうやってもあのふたり、くっつく運命。明日の舞踏会には熱々で参加する運命なのだ。
また別のパラレルワールドに移動で私だけやり直しなのよね。
いつになったら当て馬のループは終わるのかしら、ヒロインはため息をついた。




