「エリート悪魔たち」
俺は部隊に入隊した。…こんな俺が?弱くて、無力なただの人間が?いや、もう人間じゃないのか?
疑問が多すぎる。答えを持つ者に訊くしかない。
– イラナリ様、俺って…人間ですか?それとも悪魔?
– 変わった質問だな。お前は自分をどう思っている?
– わかりません…力は悪魔のものだけど、体は人間のままです。俺は何なんでしょう?
– それを決めるのは、お前自身だ。運命は自分で創れ。
– …了解です。
イラナリは、自分で選べと言った。でも…あまりにも重すぎる選択だ。どうすればいいんだ?
– 嫉妬…
スー…スー…(寝息)
– 嫉妬!
– あぁ?!何だよ騒がしいな!
– 助けてくれ!
– はぁ…何を?
– お前、悪魔なのか?
– は?妙な質問だな。
– わかってる、でも答えてくれ。
– 悪魔だよ、それがどうした?
– じゃあ俺は?
– 自分でどう思う?
– わかんないよ、こんな難しい問題…。
– 決まったら教えてくれ。俺も興味あるし。
…なんか余計にモヤモヤした。まあ、今はそれどころじゃない。とにかく、イラナリの居城に入らなきゃ!
– 入れ、ハンス。
– いいのか?
– 馬鹿言うな。お前はもう、エリート悪魔部隊の一員だ。
俺は扉を開けた。
– すげぇ…!
これは家じゃない。宮殿だ。こんな建物が今まで残ってたなんて…
壁には絵が飾られてる。描かれてるのは人か…悪魔か?関係ない。これは歴史的な芸術だ。
– あの、イラナリ様—
– イラナリでいい。
– じゃあ、イラナリ…この絵って、何年前のものですか?
– 部隊が結成された時に描かれたものだ。右から左に並んでいる。新たな仲間の加入を意味している。
なるほど。全部で13枚ある。ってことは…
– メンバーは13人だけ?
– 今は14人目だ。
…俺のことだ。嬉しい。
– これって、二階に行く階段?
見上げると、まるで古城の階段みたいだ。手すりの彫刻は木じゃなくて…石?家具もカーペットも、全てが豪華すぎる。
– ここが我々の部屋だ。
13室…まさに人数分。
– あの、イラナリ。部屋って13しか…
– ああ、忘れてたな。ちょっと待て。
「ちょっと」って何—って、うわっ!?壁を壊した?!
– 壊れしものよ、姿を変えよ。
壊れた壁の跡が広がって…一つの部屋になった。
– すごい…。
– 驚くな。これから、もっと信じられないものを見せてやる。
…怖いな、その言い方。
– よし、次は部隊の紹介だ。
イラナリはこめかみに二本の指を当てた。
– 部隊、正面入口に集合。
何かの音が聞こえてきた。
– 行くぞ。
階段を降りると、12人の悪魔が並んでいた。緊張感が漂ってる。
– 部隊。
– はい、サー!
– 今日から新しい仲間が加わる。自己紹介を。
– 初めまして!俺はハンスです。よろしくお願いします!
– ハンス、ようこそ!
…受け入れられた。ほっとした。
– 皆も自己紹介を。
入り口側から一人ずつ前へ出てくる。
– 俺の名はトオル。人間の暦で2134歳。部隊の頭脳。厳しいけど優しいぜ。
(心の声)優しい…だと?この人が?
トオルは列に戻った。次の人物が出てきた。
– 名はアハメド。2133歳。防衛担当。基本は陽気、でもキレたらヤバい。
– よろしく、ハンス。
握手してくれた。優しい人だ。
– イシジ。2017歳。鍛冶屋。人と喋るのは苦手だ。
– あ…はは、了解っす。
ちょっと怖かった。
– シャルロッタ。2003歳。アハメドの妻—
…えっ、奥さんだったのか!
– また時間あるときに話そうね♪
– は、はいっ…!
赤面した俺を、アハメドが鋭い目で見た。やべぇ。
– わ、私、ラクタニア!1861歳で…
– 人間の暦ってのはもうわかってる。
– そ、そうですね。仕事はきっちりやります!よろしくです!
明らかに緊張してるな。
– よろしく、ラクタニア!
– そ、それと!…
トオルがギロッとこっち見た。…あ、うん、深入りしないでおこう。命のためにも。
– ヤキホだ。2132歳。アハメドの弟。俺に話しかけたら殺す。
– は、はは…気をつけます、先輩。
マジで怖い。
その後、さらに7人の悪魔たち:ミズハ、フラロ、ラフリ、アロト、モルティ、リンゴとも挨拶した。
みんな優しくて、俺を歓迎してくれた。
今日から、俺は本当にこの部隊の一員だ!