君のためなら死ねる
これは小説習作です。とある本を開き、ランダムに3ワード指差して、三題噺してみました。
随時更新して行きます。
【お断り】「頼る、深い、誓い」の三題噺です。
(以下、本文)
オレ、何かに誓いを立てた事あるか?
いろいろ反省してみたんだが、思い当たるフシが無い。
誓いって、自分以外の誰かに対して行うものなんじゃなかろうか。
ほら、あれですよ、アレ。
「君のためなら死ねる」
いいねえ。
みなの衆、これを「若気の至り」とか「恋に恋してる」とか言っちゃあならねえよ。
こう言うの否定したら子どもが生まれなくなって、人類滅亡しちゃいますから。
「誰か頼りすぎてはいけないが、全然頼らないのもいけない」と言った職場の先輩がいた。
労働組合の世話役だった。至言だなあ。
もっともオレと言う人間は「誰かに頼るのは、そいつの人質になるのと同じである」(マキアヴェッリ)と言う言葉の方がしっくり来るんだが。
誰かと深い仲になる事をオレは拒否しない。抜き差しならない関係を持つ事から逃げるつもりはない。誓えと言われたら誓ってもいい。
だが「君のためなら死ねる」はちょっとねえ。
結果として、そうなる事はあるかもしれないが、望んで死ぬのはただの心中だ。
全ては成り行きなんじゃなかろうか。
オレはそれを拒否しない。決して後悔しない。
そもそも後で悔いるから後悔と言うのであって、やる前から後悔とは、おかしな話だ。
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以上が何と、私が23歳の時に書いたラブレターの下書きである。
勉強ばかりの学生生活から解放され、恋を解禁されて肩に力が入っていたのだろうが、この下書きの、どこをどう書き直して切手貼って投函したのか覚えていない。
恋の結果が、どうなったのかは言わずもがなである。
いくら文学少女でも、こんなもの送り付けられたら、さぞやキツかったろう。
この場を借りてお詫びしたい。
申し訳ありませんでした。