不審者を見かけましたわ
無事に緑茶は大量に入りまして、マリアと共に緑茶を配布しております。
その御蔭で、お召し上がりになる方達は全員無事に復活をされました。
しかし、最初の方は中々飲ませるのも大変でしたわね。
戻りますと被害者は増加しておりまして、多くの方が暴れておられましたから、回復した方や被害に遭っていない方を総出で押さえつけて飲ませる外無かったのです。
ただ、回復者が増える度にその人数が多くなり、分散されますから、後半はまだ安心感はありましたわ。
それに、今は緑茶を淹れる方がマリアだけでなく、複数名いらっしゃいますから、更に効率的に緑茶を淹れることが出来ましたの。
わたくしは、ただ緑茶を配布だけにとどまってますおりますが。
わたくしも、一緒に緑茶を淹れたかったのですのに、マリアがあんなことを仰りますもの。
「マリア、わたくしにも緑茶の淹れ方を教えて欲しいですわ」
「駄目です。レイナ様はそもそも御茶自体を淹れることが出来ませんし、火傷をする未来しか見えません。危険なことはさせられませんよ」
マリアったら、わたくしへの信頼が皆無ですのよ。
それに、火傷をするかもしれないから駄目だなんて過保護にもほどがありませんこと?
ここにいること自体にそもそも危機感は感じておりますのに、多少の火傷ぐらいどうってことありませんわよ。
そもそも火傷なんてしたことがありませんから、どれぐらい痛いのかは分かりませんがね。
それにしても、マリアも含めて皆様のお力添えもあり、約3日間で殆どの方が回復致しましたわね。
こんなにチームワークが発揮されるだなんて、本当に素敵な領地でございますわ。
こんな素敵な所に、チョコレートで偽装を行い、薬をばら撒いた組織は絶対に許せません。
本来であれば、わたくしも混じって成敗したいところですが、流石にそれは出来ないところが大変歯痒いのでございますわね。
とにかく今は全員を助けること、そして他の場所でも被害が出ていないか見回り、そして被害者がいらっしゃったらすぐに助けなければなりませんもの。
早く用意しなければ……。
――バタバタ
――シュッシュッ
なんですの!?
先程間違いなく誰かが前の通りを駆け抜けていきましたわね。
この国の騎士ではないようですし、そして何よりもあの大きなフード……もう怪しさしかありません!!
また、あの見たこともない刀も気になりますわね。
もしかして、薬をばら撒いた組織の人間なのかしら?
彼は何処へ向かうつもりなのでしょうか?
もしかしたら仲間に会うのかもしれませんわね。
そうだと致しますと、アジトへ向かっているのかもしれません。
そうとなりますと、彼を追いかけなくてはなりませんわ。
しかしそれよりも前に、フレディ様にそのことをお知らせしなければなりませんわね……ってそもそもどうやって連絡を取ればよろしいですの!?
確かにフレディ様は指輪を使えば、連絡が出来ると仰っておりましたが、どう使うかは教えてもらっておりませんわ。
何か仕掛けはあるのかしら?
呪文を唱えるとかでしょうか。
ええっと、こういう時に唱える呪文はこれかしら?
「開けゴマ!!」
「レイナ、何かあったかい?」
いえ、これは扉を開ける時の呪文ですわよ。
この言葉で連絡取れるわけない……ってアッサリと連絡が取れてしまいましたわ!!
いや、素直に意味が分かりませんわよ。
どうして、これで大丈夫だったのか今すぐにお話をお伺いしたいところです。
ただ今は一刻の時を争うのですもの。
早く助けを呼ばなくては。
「フレディ様、先程ですが組織の者と思われる方を見かけました。これからわたくしは追いかけますので、フレディ様も来てくださいな。場所は東の市場ですわ。その目の前にある道を真っ直ぐいきますので、応援よろしくお願い致します」
「ちょっと待ってレイナ……」
これで無事に連絡が取ることが出来ました。
では、まずはわたくし達から追跡することに致しましょう。
「マリア、今すぐにあの不審者様を追いかけますわよ」
「ちょっと待ってください。不審者とはなんですか? そもそもそんな危険人物を追うだなんて何があっても許しません!!」
「わたくしには追いかける義務がありますもの。ではマリアはここでお待ちくださいませ」
「いやいや、そんな義務はありませんし、そもそもレイナ様を1人で行かせるわけないでしょう。言っても聞かないことは熟知しておりますから、勿論付いて行きますよ、頑固なレイナ様に」
「流石マリアですわ。本当に頼もしいですわね」
「嫌味を言ったことに全く気づいていないのですね……あと数分だけお待ちください。この御茶を配り次第行きましょう」
「そんな……見失ってしまいます」
確かにわたくしは薬代わりとなる緑茶を配りに来たのでありまして、組織の方を捕まえるために参ったわけではありませんわ。
勿論まだ中毒者の方を放っておくわけにはまいりませんし、ですが今回の事件である主犯を抑えなければ中毒者様は広がる一方ですし。
わたくしが捕まえる必要はありませんが、それでももし向かわなければ、わたくしのせいでこの人達を救えなかったと後悔することになるかもしれません。
お世話になったこの国の人達を助けたいですのに。
しかし、時間を争う中で1番手際が良いマリアを失うのは大変痛いですもの。
わたくし達はどうするのが正しいのでしょうか?
「私が御茶を淹れて配ります。マリアさんの淹れ方を見ていたので大丈夫です」
「俺もするから大丈夫ですよ。確かにマリアよりは遅いと思いますが、2人でやればカバー出来ると思います。お二人はここを離れなければならないのですよね?」
そんな時に声を上げてくださったのは、最初に助けたお二人でございました。
とびきりの笑顔でわたくし達を安心させてくださります。
本当に心強いお方達ですわね。
「ありがとうございます。ではお願い頼みますね」
「「はい、お任せください」」
きちんと出来るかどうかにつきましては、不安はありますが、しかしこれで安心して追跡することが出来そうですわ。
いえ、彼らならば完璧に全員に配ってくださりますわよね。
彼らを信じて追跡に専念することに致しましょう。
今は姿は見えませんが、一本線ですからすぐに追えますね。
絶対に許すまじ、犯罪組織団様よ。
このアリスこと麗奈が追い詰めて見せますわよ。
武道マスターのマリアもいらっしゃることですし、彼らに御茶のことは任せまして、私達は組織の方が向かった方向に向かうと致しましょう。
◇◇◇◇◇
単なる一本道だからと、すぐに辿り着くと思いましたが、どうやら一本道では無かったようですの。
途中からあちらこちらへと曲がり続けられたので、追いかけるのが大変でしたわ。
また中々距離がありまして組織の者が目的地に辿り着くまで、約10分ほど歩きましたの。
何だか薄暗くて不吉な場所でございますわね。
どうやら見知らぬ洞窟の中に入るようでございます。
流石に洞窟まで入ると危険な目に遭う可能性が一気に上がるでしょうし、この洞窟さえ分かれば、フレディ様達が何とかしてくださるでしょう。
それでは直ちに場所を伝えなければなりませんわね。
未だに謎過ぎますが、兎に角あの言葉を使いましょう。
「開けゴマ!!」
「レイナ、どうして急に連絡を切るんだ。その指輪は、レイナの方しか掛けられないから、折り返しが出来ないんだ」
「そうでしたのね。例え折り返し機能があったと致しましても、組織の者の跡を追っておりましたので、会話をすることは出来ませんわ」
「レイナ、そんな危険なことをしていたのかい。ただでさえ危険なのだから、それ以上の危険行為は止めて!!」
「勿論わたくしもそこまでは踏み込んでおりませんの。ただ組織が活動する場所を特定しただけですわよ」
「場所を特定したの?」
「はい。先程申しました道の3つめの曲がり角で右に向かいまして、その後2つ目の曲がり角を左に向かい、それをまた1つ目の十字路で斜め右に向かって、そのまま真っ直ぐ向かえば洞窟がありますの。流石にそれより先は行く勇気はありませんが」
「いや絶対に行かないで!! これは王太子命令だ、良いね?」
「圧が強すぎますが、承知致しました」
「それぐらい圧をかけないと不安だからな」
「全く持って信用がありませんね」
「あぁ無い」
「ハッキリ仰りすぎです!!」
もうここまで信用されていないだなんて悲しすぎますわよ。
わたくし、そこまで心配されるようなことはしておりませんし……ってマリア、どうしてそんなに大きく首を縦に振っておられますの?
わたくしは安全のもと行動しているはず……ですがね。
あと3話ほどで終わる予定なので、最後まで付き合ってくださると嬉しいです。