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緑茶の効果は完璧でございますが……


 彼のご案内により町へ参りますと、確かに先程の彼のように多くの方が酔いしれておられました。

 確かに彼の仰ったことに間違いはございません。

 しかし、わたくしにはこの状況が分かったところで、どうすれば良いのか戸惑ってしまいましたの。

 それはそうですわ。

 なんせ対処法は知らないのですから、どうしようもございませんもの。

 

 あらそう言えば、彼は何故急に大人しくなったのかしら?

 まあ唯一の違いと申しましたら、緑茶ぐらいでしょうか。

 確かに緑茶には様々な効果があるカテキンなども入っておりますし、納得と言えば納得かもしれませんが、こんな危険そうなチョコレートにも効くだなんて意外ですわね。

 えっと……平常に戻ったのは、確か彼のお顔に御茶をかけた時でしたわよね。

 成る程、全て謎は解決致しましたわ!!


「マリア、すぐに緑茶を淹れてくださいませ。そして皆様のお顔に緑茶をかけましょう!!」

「何を言うのですか!! そんなことをしなくても、御茶を飲ませたら解決するでしょう」

「あ、そうでございますわね。御茶も勿体ないですもの」

「そういう問題ではないと思います」


 あら、御茶が勿体ない以外が何か問題はありますからしら?

 そう言えば、熱い御茶なんて顔にかけてしまいましたら、火傷してしまいますわね。

 彼の時は完全に御茶が冷めていたので、無問題だっただけですもの。

 マリアが仰らなければ、大惨事になるところでございましたわね。

 危ない……危ないですわ。


「しかし、レイナ様本当に良いのですか? リョクチャは大変高価ですし、そんなに量も無いのに」

「何を仰いますの!? 皆様が困っておりますのに、放っておくことなど出来やしませんわ。早く入れてくださいませ」 

「……では今から御茶を淹れます」


 本当は私も淹れることが出来たら良いのですが……。

 あら、そう言えばカップが全然足りませんわ。

 早く淹れなくてはなりませんのに。


「あの、カップを出来るだけ多くご用意出来ますでしょうか? どうしても必要なのでございますわ!!」

「あ、分かったよ。今用意する」


 何も聞かずに素直に受け入れてくださりましたわね。

 普通は理由を聞きそうでございますが……まあ素直に聞いてくださるのは有り難いことですわ。

 何だか転生前の財閥令嬢の時のような、権力で捻じ伏せたような感覚に陥ったのは気の所為だとは思いますが……。


「レイナ様、御茶を淹れ終わりました」

「取り敢えず少しだけ注いでくださいな。出来るだけ少ない量で済ませた方がよろしいですから」

「では最初はこれぐらいでしょうか?」

「そうですわね……ですが」


 困りましたわね。

 これだけ多くの方が酔いしれておりますもの。

 誰から飲ませたら良いのか分かりませんわ。

 あら、ちょうど良いところで彼が帰ってきましたわね。


「一旦ご用意は出来ましたわ。どなたから飲ませたらよろしいのでしょうか? 最初はどれぐらいの量が必要か知りたいので少しずつ飲ませる形にはなるのですが……」

「俺の妹からお願いしたい。ここに連れて来た」

「分かりましたわ。それでは失礼致しますわね」


 とても興奮しており、兄である彼に対しても敵意丸出しでございますわね。

 取り敢えずこれぐらいの量からでございますが、効くでしょうか。

 

 ――ウゥ〜 

 ――ぁああ


 流石にこれだけでは足りませんでしたのね。

 それならばあともう少し足しましょうか。

 マリアに頼んで……あらわたくしが何も言わなくてももう淹れてくださりましたわ。

 本当にタイミングが完璧ですわね。

 どうかお願い致します……これで収まってくださいませ。


「…………お兄ちゃん……」

「シュリ、良かった〜」


 この量なら無事に正気を戻しましたのね。

 本当に良かったですわ。

 無事にご再会出来たようでご安心致しました。

 それでは、早く他の方にもこの量で御茶をご提供なさらないと。


「お二人様、喜ぶ中で大変申し訳ありませんが、どうか手伝ってくださりませんか? 貴方は御茶を配り、そして貴女にはわたくしを市場に連れて行って欲しいのです」

「分かった。俺達を助けてくれたのだから、それぐらいはするさ」

「何故市場に行きたいのか分からないけど、私で良ければ連れて行くわ」


 2人はアッサリとわたくしの提案を受け入れてくださりましたわ。

 さて市場に参りましょう。


 ◇◇◇◇◇


 思った以上に遠くに市場がございましたわね。

 わたくしは普段走ることがありませんでしたから、困惑してしまいましたわ。

 どう走るのが正解ですの?

 わたくしは転生前から走るなと言われ続けましたので、分かりませんわよ。

 彼女に追いつくのが大変です。


 流石に1度行っただけの場所を、違う場所から1人で向かうのは無理でしたから案内していただきましたが……えっと、先程の御茶を買った場所はあそこですわね。


「あの、先程購入致しました緑茶はまだございますわよね。それを全てお売り頂けませんか? 在庫もございましたら、それも全てお願い致します」

「えっとね、これは本当に入手困難だからね。残念ながらここにあるのが全部だ」

「では、残りは7個ですから銅貨49枚ですわね。面倒でございますから、銀貨1枚で良いですわ。これら頂きますわよ」

「え、ちょっとお釣りは〜」

「要りませんわ」


 銅貨51枚は大変惜しいですが、 今回は一刻を争いますから、危機を救う代償と致しましてお釣りは渡しますわ。

 早くマリアの所に向かわなければなりませんわ。

 さてと、先程の道のりで素早く帰りまして……ってこの市場似たような外装ですから、何処へ向かったら良いのか分かりませんわ。

 どうか助けてくださいませ〜。


 ◇◇◇◇◇


 彼女の案内のもと、何とかマリアの元へ戻ることが出来ましたわ。


「マリア、取り敢えず買えるだけ購入して参りましたわ」

「レイナ様、丁度3つ目の御茶を淹れ終えたところです。今から届いたものも淹れますね」

「ありがとうございます」


 何とか調達することは出来ましたが、やはりまだまだ足りませんわよね。

 しかし、先程マリアと一緒に市場を見回った時は、あそこでしか売っておりませんでしたもの。

 これでは全ての方を救うことは出来ませんし、どう致しましょう。

 それに、まだ在庫があったと致しましても、わたくしのお金が底に尽きて買うことが出来なくなってしまいますわ。

 あぁ、何故最初にそのことに気づかなかったのでしょうか。

 目先のばかりに囚われてしまい、後のことを考えておりませんでした。

 かと申しましても、わたくし達だけの力ではどうすることも出来ませんもの。

 誰かの力を借りなくてなりませんわよね……あ、そうですわ。


「辺境伯様はどちらにいらっしゃいますの? そもそもこの騒動はご存知なのでしょうか?」

「本当にここ数日で起こったことだから知らないかと。最近は遠征に出てましたし」

「遠征ですって!?」


 一体どうして遠征をする必要がございましたのでしょうか?

 辺境伯が遠征をするだなんて、何か戦争でも起こるのかと思うほど不気味なことですわよね。


「あ、因みに辺境伯様はあの屋敷にいるけど……それが何かあるのか?」

「勿論、直談判させていただきますわ。貴方達がこのような大変な状況に陥っているのは見過ごせませんもの」


 折角なら遠征についても話を聞きたいところですが、まずはこの状況をどうにか致しませんと話になりませんもの。

 あ、でも現在庶民であるわたくしが辺境伯様に会うことが出来るのでしょうか?


「辺境伯様はいつから遠征に向かわれましたの?」

「えっと……確かに3ヶ月前ですね」


 3ヶ月前と致しますと、私とフレディ殿下との婚約が解消すると別れてから2ヶ月ほどですわよね。

 普通に考えますと、正式に婚約解消となりますのが1ヶ月ほどは掛かるでしょう。

 公爵が簡単に解消させるとは思いませんからね。

 となりますと、きっとですがまだ辺境伯は私達の婚約解消は知らないと考える方が高いでしょう。


「マリア。御茶を配り終わりましたら、すぐに辺境伯様の所へ参りましょう」

「辺境伯の所に行くって何考えてんだ!! 会えるわけないだろう」

「どうやって会うつもりなのよ」

「レイナ様、流石にそれは無謀かと……」


 何でそこまで一斉に全力で否定致しますの?

 確かに現在は庶民ではありますが、そこまで否定されなくてもよろしくありませんこと。


「レイナ様、辺境伯様は冷酷であると言われております。関わらない方が賢明かと」

「大丈夫ですわ。わたくしを誰だと思っておりますの?」

「元令嬢を全く包み隠すことが出来ていない()()()村娘でしょう」

「あら違いますわ。何処からどう見ても()()()村娘ですわよ……ってそんなことはどうでも良いのです。渡しの元の身分が今は大切ですの」

「一体どうやって……」

「まあどうにか致しますわ、お任せくださいな。あら、丁度終わったようね。ならばマリア行きませんわよ」

「え、レイナ様!?」


 もう本当に歯切れが悪いでございますわね。

 一刻も争うのですから、サッサと辺境伯様の所へ参りますわよ。


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うおおお、イッケエエエエ!!!!
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