弁当は一人で食べたいと言っている。
弁当は、一人で食べたい。
それが僕の理想である。
それは僕の願いである。
弁当は、一人で食べたいのだ。
誰かの前で食べるという行為が、苦痛だ。
誰かと共に食事をすることが、苦手だ。
誰かに食べているところを見られるのが、恥ずかしい。
誰かに食べているところを見られていると思うと、落ち着かない。
誰かが食べているところを見るのは、申し訳ない気がする。
弁当は、一人で食べるに限るのだ。
何を食べていても、見られない。
何を食べていても、笑われない。
何を食べていても、不審に思われない。
弁当は、一人で食べるべきなのだ。
何を食べているのか、気にしなくて済む。
何を食べているのか、見なくて済む。
何を食べているのか、知らなくて済む。
弁当はみんなで食べるものだという常識が……憎い。
誰かに見せる弁当を、持ち込むのが面倒だ。
誰かに見せてもいい弁当を、用意するのが面倒だ。
誰かに見せるためだけの弁当を、食べなければいけないのが面倒だ。
誰かに見られても良いものを弁当にしなければいけないのが、気に食わない。
誰かに見られても問題のないものを弁当として持ち込まなければいけないのが、許せない。
弁当ぐらい…好きに食わせてくれよ。
うっぷんがたまり過ぎた僕は、大好物をたっぷり詰め込んだドカベンを抱えて…人けのない、校舎の隅っこに向かった。
よし、ここならば…思いっきりがっついても、だいじょうぶ……。
「あッ♪ゆう君、見~つけた♡」
ザッザッザッ……!!!
……あーあ、見つかっちゃったよ。
「んも~♡一緒に食べようねって約束したじゃない!今日はね、特製のサンドイッチを…」
ザシュッ、ザシュッ……!!!
……あーあ、コレ、見られてるよね?
「ェ…、ナニ、食べてるの……?!」
ボリュッ、ボリュッ……!!!
……あーあ、この子には、見られたくなかったよ。
「……、おい、し…、ぃ……?」
むちゅっ、むちゅっ……。
……やっぱり、ちょっと、クセが強かったなぁ。
「……まあ、おいしかったけどね?」
ごきゅ、ごきゅ……。
これで…七人目かあ……。
学校の七不思議が、完成しちゃうなあ……。
困った、困った……、げふー!!!