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エーテルリウムの黄昏  作者: お茶どうぞ
81/91

81、異形との戦闘


エルドリンは刀を正面へ向け、深く息を吸い込んだ。

刹那、刀身に青白い稲光が奔り、周囲の空気が震え始める。


「――《トゥラント》!」


エーテルリウム奥義、雷撃系上位魔法が解放された。


バァアアンッ!!!

大地そのものが裂けるような轟音が森を揺らし、稲妻の奔流が前方のオーガ兵を薙ぎ払った。

黒焦げの巨体が次々と倒れ、森林の一角に道が開く。


(縮地で抜けたいが……木が密集しすぎている。)


エルドリンは弾け飛んだ屍の間をすり抜けながら走る。

樹木の影が流れ、焦げた匂いが肺に刺さる。


その時――


「グォォォォォオオォッ!!」


咆哮が森を震わせた。

立ち塞がるのは、他のオーガより一回り以上巨大な“異形のオーガ”。

胸部の魔核が禍々しい赤で脈打ち、常のオーガではあり得ない密度の魔力を放っている。


エルドリンは走りながら、素早く《アイスランス》を放った。

鋭利な氷槍が一直線に飛ぶ。


しかし――


「ヌゥンッ!」


異形オーガは太い腕を振るい、氷槍を粉砕。

さらに戦斧の残光でファイヤーボールまで叩き割った。


爆ぜた火花が、まるで霧雨のように散る。


(やはり普通の魔法は通らないか……!)


エルドリンは走りながら刀身へ雷撃魔法を付与。

雷が刀身を這い、眩い閃光を放つ。


近づく。

互いの息が触れ合いそうなほど急激に距離が詰まった。


オーガの巨斧が振り下ろされる。

風圧で木の葉が吹き飛ぶ、殺意の塊のような一撃。


エルドリンはわずか足裏の角度を変えるだけの最小動作でかわした。

そして反撃――

閃光を纏った鋭い突きを巨体へ。


だが、


ガンッ!!


「……通らない?」


衝撃が腕に跳ね返り、刀が弾かれた。

鎧は傷ひとつ負っていない。


(物理耐性……?いや、魔力の層か?)


オーガは振り向くと同時に左腕を振るう。

巨木のような腕が横薙ぎに迫る。


エルドリンは一瞬、足の位置を誤った。

そのわずかな隙を異形オーガが逃すはずがない。


ドガァッッ!!


「ぐ――ッ!」


巨腕がエルドリンをとらえ、彼は数メートル吹き飛ばされ、大木に激突した。

胸が潰れそうなほどの衝撃で肺の空気が抜ける。


(……ッ、斬撃が通らない理由を考えてる場合じゃない……!)


オーガが地を砕きながら突進してくる。


エルドリンは縮地で横へ消える。


(反応は速い。幻影で意識を乱すか。)


縮地で分身のような残像を残す。

オーガは迷わずそれに斧を叩き込み、地面をえぐった。


その背後へ回り込み――


「はァッ!」


力を込めた袈裟斬り。

火花が刀傷に沿って飛び散る。


(火花が出る……完全に無効化じゃない。

 削れる……なら突破口はある!)


オーガが咆哮。

振り返りざまに戦斧を一閃。

反対の拳には炎が集束し、灼熱の火球となって飛び出した。


ボウッ!!


地面をえぐり、大爆発を起こす。


(威力が化物だな……!)


オーガの猛攻はまだ続く。

巨斧の連撃が嵐のように降り注ぐ。


エルドリンは最小動作の回避で刃をすり抜け、懐へ――

しかしそこにはオーガの膝が待っていた。


「――っ!」


胸に膝蹴り。

骨が軋む衝撃で呼吸が止まり、視界が白く染まる。


さらに追撃。

振り下ろされる戦斧。


エルドリンは意識を引き戻して縮地で横へ逃れた――

だがその先にはもうオーガの左拳が迫っていた。


「まずい……!」


エルドリンは並列思考を限界まで高め、時間魔法を発動。


世界が、止まった。


周囲の火花が宙に浮き、オーガの拳が目の前で静止する。


(ここまで追い詰められたのは……初めてだ。)


息を整え、背後へ回り込む。

オーガの鎧に手を添え――


「《トゥラント》!」


雷撃奥義が発動。


時間が動き出すと同時に稲妻が鎧を貫通し、

オーガの体表に雷光が奔った。


異形オーガは膝をつく。


エルドリンは畳みかける。

刀身に《アフィラトゥ》を付与し、刃が鋭さを増す。


袈裟斬り。

ついに鎧を裂き、肉へ到達した。


「ウゥゥウウガァァァ!!」


野獣の絶叫が森を震わせる。


エルドリンは傷口へ突きを――

しかしオーガは巨体に似合わぬ敏捷さで前転し、攻撃を躱した。


(本当にしぶとい……!)


オーガの眼に宿る赤い闘志は揺るがない。

再び火球が飛んでくる。

エルドリンは刀で打ち返し、大爆発が二人の間を裂いた。


その一瞬の隙――

エルドリンは隠蔽魔法を纏い、姿を消す。


オーガは動きを止め、警戒し周囲を探る。


次の瞬間、

エルドリンが縮地で現れ、側面へタックル。


「グォッ!?」


不意打ちに、オーガが態勢を崩す。


エルドリンは息を止め、全身をバネにする。


上段構え――一気に振り下ろす。


キィィン!!


異形オーガの左腕が肩から斬り飛んだ。


だが反撃は速い。

右腕の戦斧が唸り、エルドリンの脇腹を打った。


「……ッ!」


肺から空気が漏れ、視界が揺れる。

よろめきながら回転し、隙間を作るため斬撃を一閃。


距離を取った――

直後、オーガが肩を突き出して突進。

爆弾のような衝撃でエルドリンはまた吹き飛ばされた。


(……っ、意識が……飛びそう……だ……)


地面に転がりながらも、エルドリンは必死に立ち上がる。

足が震えても、呼吸が乱れても、戦意はまだ折れていない。


その時――


「エルドリン!!」


誰かが、自分の名を呼ぶ声が聞こえた。


その声に、エルドリンの意識が再び戦場へ引き戻された。


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