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エーテルリウムの黄昏  作者: お茶どうぞ
71/91

71、踊る戦略会議

皆様こんにちわ、遂に70を超えました。新しく読んでいただき始めた方、以前より読んで頂いてるかた、フォローして頂いてる方、いつもありがとうございます。もしも気に入っていただければ評価をして頂くとよりやる気が起きます。少し会議シーンが続きますが、お付き合い下さい。


ミスティクレスト公国の首都――ミスティア。

白金の尖塔が並ぶ壮麗な都の中心、王城アルセイン・パレスでは、つい先ほど第一回《大陸連合会議》が閉会したばかりだった。

長きに渡る緊張の余韻が、まだ円卓の間の空気を支配している。


各国の代表者たちは次々と立ち上がり、互いに挨拶を交わし始めていた。

戦火の予兆が漂う中で、それでも彼らは新たな絆を確かめ合うように、言葉を交わしていた。




公国の五大騎士団長や高位神官に囲まれたエルドリンは、初めて会う人物ばかりの中で、丁寧に言葉を選びながら応じていた。

ドラウセンの救世主として注目を浴びるその姿に、彼らの視線には敬意と興味が入り混じっている。


一方、炎帝の戦士ヴァレン・ドラコスは、公爵エドガー・ファルコンハート、ダーク・エルフ代表リシェル・ノクスヴェイル、そして公王ルクレインと挨拶を交わしていた。

どの顔にも疲労がにじむが、それ以上に燃えるような決意が宿っている。


イリス・フェルディナントは、公爵エドガーに歩み寄った。

初対面の二人に、柔らかな空気が流れる。


「イリス殿、エルドリンとお知り合いなのですか?」

エドガーが微笑みながら問いかける。


「はい。フォルンハイムでのグリフォン討伐でご一緒しました。」

イリスは凛とした声で答えた。


エドガーは一瞬目を見開き、そして小声でそっと囁いた。

「ここだけの話ですが……エルドリンは、私の息子です。」


イリスは微笑んだ。すでにエルドリンから聞いていたのだ。

「初めまして、公爵閣下。私はエルメリオン王国《蒼翼騎士隊》の隊長、イリス・フェルディナントと申します。

 エルドリンは戦友であり、私の……大切な人です。以後、お見知りおきを。」


その穏やかな笑みは、戦場では見せぬ柔らかさを帯びていた。

エドガーは一瞬言葉を失い、やがて笑みを返す。

「こちらこそ。――エルドリンがどんな女性と出会ったのか、ようやく分かりました。」


内心、父としてはすでに胸の中で大きな打ち上げ花火が上がっていた。

息子に恋人ができた喜びを隠しきれない。




その頃、ヴァレンは会議の隅でソレンディルと話し込むマルセルへと近づいていた。


「お名前は皇帝陛下より伺っておりました。お初にお目にかかります――マルセル・デルース殿。」


マルセルはゆるやかに振り返る。その目はまるで全てを見透かすかのように光る。

「こちらこそ。《ファイヤクラフティ》のマスター、ヴァレン・ドラコス殿。」


二人は帝国の同盟者でありながら、今回が初対面だった。

その握手には、戦略家同士の確かな緊張が走る。


「貴殿が味方にいるならば、この戦いは大きく変わるだろう。」

ヴァレンは低く言い、続けた。

「だが問題は諜報だ。敵の内情をどう探るか、マルセル殿の意見を伺いたい。」


マルセルは一瞬沈黙し、思索の光を瞳に宿す。

「隠蔽と遮蔽の魔法を用いた潜入が最有力でしょう。

 あるいは……私が直接、闇の勢力に加わるふりをして内部に潜ることもできる。」


「危険では?」


「承知の上です。奴らは、まだこちらが連合を結成したことを知らない。

 アンデッドは人類の味方をしないという奢った考えが、私を受け入れるでしょう。」


ヴァレンは頷き、言葉を重ねた。

「それは妙案ですね。我がクランには諜報部隊がある。二十名は動かせる。――バックアップに回りましょう。」


「ちょっと待て。」

低く響く声が会話に割って入った。ガルムだ。


「敵情視察なら、俺が傭兵として敵陣に入るってのはどうだ?

 オーガの戦士なら、奴らにも怪しまれない。」


「それは……妙案だな。」

ヴァレンが感心し、マルセルも頷く。

「確かに、敵はオークや獣人を多く抱えている。君なら最適だ。」




エルドリンは人の輪から抜け出し、父のもとへ歩み寄った。


「父上、ご挨拶が遅れて申し訳ありません。」


「いや、それだけ求められる立場になったということだ。」

エドガーは息子の肩に手を置き、優しく笑んだ。

「……それにしても、何か報告し忘れていることがあるようだな。」


視線がちらりとイリスの方へ向く。

その意図を悟ったエルドリンは、頬を赤らめながら口を開いた。


「フォルンハイムの戦いで共に戦い……お互いの想いを伝え合いました。

 イリスは、私の大切な人です。」


エドガーは驚いたように目を瞬き、次の瞬間、微笑んだ。

「そうか。よくやった。――“大切な人”か。いい言葉だな。」


ちょうどその時、イリスが歩み寄ってきた。

その顔は喜びと少しの照れを帯びている。


「エルドリン、あなたまたやったのね。

 三千を超えるオークを撃退して、ダーク・エルフたちを救出したって聞いたわ。

 ……誇らしいわ。あなた。」


「大げさだよ。偶然が重なっただけさ。」


「ふふっ。そういうところ、貴方らしい。」

イリスはエドガーを見て微笑む。

「お父様も、とても素敵な方ね。」


エルドリンは顔を真っ赤にしてうつむいた。

エドガーは苦笑しながら、呟いた。

「……息子よ、どうやらもう尻に敷かれたようだな。」


イリスは軽く手を振って席へ戻る。

残された父子はしばし笑い合った。




「それでは第二回会議を始めます。ご着席願います。」

文官の声が響き、再び円卓に静寂が戻る。

今回の議題は《敵勢情報の体系化》――すなわち、闇の主ネクロドミヌス軍への諜報活動だった。


「では、提案のある方は挙手を。」


最初に立ち上がったのはマルセルだった。


「私は“亡国のネクロマンサー”と呼ばれているマルセル・デルースです。

 アンデッドを操るこの身の特性を活かし、敵陣へ潜入、軍勢の規模と目的を探ることを提案します。」


その言葉に、ざわめきが広がる。

「アンデッドの言葉を信じろというのか!」

五大騎士団長の一人が声を荒げた。


だが、すぐにヴァレンが鋭く遮った。

「愚問だ。連合に賛同した時点で彼は仲間だ。帝国はマルセル殿を全面的に支持する。」


続けてエドガーも立ち上がる。

「王国も同意する。彼がいなければドラウセンは陥落していた。

 功労者を疑うなど、恥を知れ!」


その一喝に、円卓は静まり返った。


「次に提案を。」


今度はソレンディルが手を挙げた。

「私は隠蔽と遮蔽魔法を扱える。私とエルドリン、イリスで潜入を行う。」


「あなたは……どちら様で?」

高位神官の一人が恐る恐る尋ねる。


「エルメリオン王国の魔導士、ソレンディル・シルバーレイン。

 クラスは《アレキサンドライト》――異論はあるか?」


「い、いえ……ございません。」

その名を聞いた瞬間、場の空気が一変した。エルメリオン王国の賢者、しかも伝説の《アレキサンドライト》誰も文句は言えない。


続いてガルムが声を上げる。

「俺も敵軍に傭兵として潜り込もう。オーガの戦士なら怪しまれねえ。」


「ふむ、それも良案だ。」

ヴァレンが即座に賛同する。


「彼らの情報を中継する通信は、我が《影走り隊》が担おう!」

ヴァレンが続けると、すぐにエドガーも立ち上がった。

「では王国からは《調査団インヴィスティゲーション》を派遣し、支援を請け負う。」


「我らダーク・エルフも幻術士と斥候隊を同行させたい。」

リシェルの言葉にソレンディルが頷いた。

「君達は強いね。よろしく頼むよ。」


誰もがそれぞれの役割を持ち、戦いに備えようとしていた。


「他にございますか?」

文官の声に、静寂が落ちる。


その中で、エルドリンが静かに手を挙げた。


「私は……神々の残滓である《フロスト・ジャイアント》と《ネフィリム》に接触し、

 闇の主ネクロドミヌスに関する情報を得ようと思います。」


一瞬、時間が止まった。

誰もが息を呑み、互いの顔を見合わせる。


「神々の……残滓、だと……?」

誰かが呟き、重い沈黙が落ちた。


それは誰一人、反対の言葉を持たない沈黙だった。

同時に、それがこの提案の重大さを、皆が認めた証でもあった。


ルクレイン公王が立ち上がり、静かに宣言する。

「よろしい。それぞれの任務を遂行せよ。――これにて第二回会議を終了する。」


文官の言葉が続き、場の緊張が一気に緩む。

円卓の間に再び人の声が戻り、互いの健闘を祈るような雑談が広がった。


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