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エーテルリウムの黄昏  作者: お茶どうぞ
66/91

66、合流


「ソフィア!結界を張って、少し時間を稼いでくれ!」

魔導具ムーブ・メモリーから、エルドリンの声が響いた。


「――エルドリン!」

ソフィアが応答する。

その声に、彼女の震える呼吸と、冷気を切り裂く覚悟の色が混じっていた。


「今そちらに向かっている。ソレンディルも一緒だ。

 ガルム、アシュリー、ナイトで敵を抑えてくれ。

 ソフィア、彼らが交戦している間、結界で皆を守ってほしい。

 もうすぐ着く。援軍も向かっている!」


「了解。聞こえた? ガルム、アシュリー!」

「おうよ!」

ガルムが豪快に応え、バスターソードを正中に構えた。

「行くぞ、アシュリー!」

「行きます!」


二人が同時に駆け出す。

雪を踏み砕く音が戦場の静寂を裂いた。


ナイトが吠えながら、敵――アイアン・トゥースの背後を取るべく疾走する。

巨体のアイアン・トゥースが唸り声を上げ、棍棒を振り抜いた。

その軌道を見切り、ガルムは真正面からバスターソードを振り下ろす。


敵はガルムの剣を手ではたいて受けようとするが、ガルムの剣速の方が早かった。

分厚い腕を斬り裂き、血飛沫飛び散る。


「浅いか!」

ガルムは歯を食いしばり、地を蹴る。

縮地の踏み込みで、右肩からタックルを叩き込む。

巨体が揺らぐ。


「今だ!」

アシュリーがすかさず踏み込み、クレイモアを振り抜いた。

刃が敵の左脚を裂き、肉を割る。だが骨までは届かない。


「やるじゃねぇか!」

敵が吠える。怒声とともに棍棒を振り上げるが、ガルムはさらに踏み込んだ。


「おらァッ!」

バスターソードが袈裟に閃く。

鋼の巨体を切り裂き、黒い血が噴き上がった。


「グゥゥォォォォ……!」

獣じみた咆哮が戦場を震わせる。


その瞬間、ナイトが敵の背後に飛びかかり、鋭い爪で背を裂いた。

オークの黒皮膚が剥がれ、腐臭が立ち上る。


ソフィアはその光景を見つめ、右手を強く握った。

――まだ、終わらせるわけにはいかない。


数では劣り、アイアン・トゥースの登場で戦況は不利。

それでも、仲間は倒れない。

エルドリンとソレンディルが来るまで――自分が、皆を守らなければ。


ソフィアは膝をつき、両手を胸の前で交差させた。

彼女の髪が風に舞う。

冷たい風が頬をなぞるたびに、恐怖が消えていく。


「……ここを守る。誰一人、死なせない……」


両手を高く掲げ、再度聖印を描いた。

白い息が空に溶け、次の瞬間――


「《聖域結界ホーリーフィールド》――!!」


黄金の光が地を満たし、巨大な魔法陣が展開する。

その光は雪を反射してきらめき、氷の世界を昼のように照らした。

仲間たちの傷が癒え、寒さと恐怖を包み込む温もりが生まれる。


「ソフィア……!」

ガルムが振り返り、彼女の名を呼んだ。

アシュリーも息を呑む。

光の結界が完成した瞬間、戦場に静寂が訪れた。


氷雪の原野に、まばゆい光の柱が立ち昇る。

その中心で、ソフィアの瞳は確かに輝いていた――覚醒の光を宿して。





エルドリンは風の精霊に身を包み、雪雲を裂いて空を駆けていた。

その視界の先に――まばゆい光の柱が、天へと昇るのが見えた。


「ソレンディル、あそこだ!」


彼の指さす方角で、黄金の輝きが大地を照らしていた。

まるで夜明けのような光――ソフィアの結界だ。


風が鳴り、二人の身体が流星のごとく降下する。


――シュバン!


音すら追いつかぬ速さで、巨体オークの首が宙を舞った。

吹き荒れる雪煙が光を反射し、戦場を虹のように染め上げる。


その煌めきの中で、ソフィアは息を呑んだ。

光を背に、片刃の刀を構えたエルドリンの姿が現れる。


「……エルドリン!」


叫ぶ間もなく、彼は地を蹴った。

瞬間、姿がぶれた――幻影が生まれる。


縮地による残像が戦場を駆け、十を超えるオークが悲鳴を上げる暇もなく切り捨てられていった。

剣閃が雪を裂き、血飛沫が紅蓮の花のように舞う。


――ボガァンッ!!


雷鳴のような轟音とともに、巨大な炎の壁が立ち上がった。

オークの行軍が遮られ、熱風が吹き抜ける。


「ソフィア、よく耐えたね。」


炎の光の向こうに、ソレンディルの姿があった。

彼は穏やかな笑みを浮かべ、ソフィアの隣に歩み寄る。


「ソレンディル!」

ソフィアの瞳に涙があふれる。


ソレンディルはその頭に手を置き、静かに微笑んだ。

「もう大丈夫。少し休んで。――ここからは、任せていいからね。」


その言葉と同時に、彼女の魔力が一気に膨れ上がる。


「《アイスランス》!」


氷の槍が炎の壁を越えて飛翔し、前線のオークを貫く。

数十体が同時に倒れた。

ソレンディルは間髪を入れずに次弾を展開し、空中から連続で氷槍を撃ち出す。

光と氷が交差し、戦場は凍てつく嵐と化した。


一方、エルドリンはなおも前線で戦っていた。

棍棒が彼の肩を叩きつけ、雪が舞い上がる。

だが――倒れない。


エルドリンの刃が閃く。

棍棒を握る腕を切り落とし、流れるような動作で首を跳ねた。

別のオークが突進してくるが、彼は真正面からぶつかり、腹部を突きで貫いた。

鎧の隙間を通して刃が背へ突き抜け、返り血が彼の鎧を真紅に染める。


「おらァッ!!」

ガルムの怒号が響いた。

巨漢が振るうバスターソードがアイアン・トゥースの兜を叩き割り、頭蓋ごと砕く。


「グガァァ……!」

巨体がゆっくりと崩れ落ちる。


アシュリーは倒れた敵を確認するや否や、素早く踵を返した。

「まだ終わってない!」

叫びながら後列のオークの群れに飛び込み、クレイモアを振る。

刃が三度閃き、敵の首が次々に地へ落ちる。


雪煙、血飛沫、光と炎――

戦場は、もはや凍てついた地獄のようだった。


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