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エーテルリウムの黄昏  作者: お茶どうぞ
43/91

43,御前試合

第一試合の銀翼のエルネストと蒼牙のカイの戦いが終わると、場内は一瞬静まり返った後、観客のざわめきが一層大きくなる。

特に、カイの速さと反射神経を前に、観客たちは次の試合への期待を高めていた。


第二試合:氷華のセレン vs 風読みのリュシアン


場内アナウンスで「第二試合、開始!」の声が響く。


氷華のセレンは透き通る銀髪に青い瞳、氷属性魔法を併用する魔法剣士。

風読みのリュシアンは軽装の暗色鎧に身を包み、双剣を自在に操る俊敏な戦士だ。


二人が対峙すると、風と氷の気配が微かに場内に漂う。

リュシアンは素早く間合いを詰め、二刀で連続斬りを放つ。

セレンは氷魔法で足元に氷の障壁を作り、攻撃を制御しつつ回転して反撃。


観客は二人の魔法と剣技の融合に目を奪われる。

氷の魔法でリュシアンの足を滑らせ、セレンが鋭い突きを決めると、リュシアンは間一髪で受け止め反撃を試みる。


戦いは常に一瞬の判断で勝敗が分かれる緊張の連続だった。

最後、リュシアンはセレンの魔法障壁にわずかに足を取られ、致命的な隙を作る。

セレンの一閃が決まり、勝利は氷華のセレンに。


エルドリンはアシュリーに囁く。

「風読みのリュシアンは俊敏さが武器だが、魔法と剣技の組み合わせに気を取られると隙が生まれる。相手の長所に意識を奪われず、自分の強みで戦うのが基本だ」

「わかりました、冷静に戦うことですね」


闘技場の中央で、次の試合の開始を告げるアナウンスが鳴り響く。

「第三試合、黄金剣のレイオス、対、黒き終焉のウィル!」


群衆の熱気が一気に高まる。

レイオスは剣聖の異名を持つ中年の剣士で、整った銀髪を風になびかせ、金色に輝く長剣を静かに握っていた。

一方のウィルは黒鎧に身を包み、漆黒の剣を軽く振り回し、冷笑を浮かべていた。その瞳は、あたかも相手を嘲るかのように鋭く光る。


号令と共に両者が間合いを詰める。

レイオスは黄金剣を構え、ウィルを観察しながら一歩前に出る。

ウィルは肩の力を抜き、あえて後ろに下がりながら、剣をかまえない。


――この瞬間、群衆のざわめきが静まり、緊張が場内を支配した。


「どう出る、剣聖」

ウィルの低い声が響く。言葉に挑発と余裕が混じり、観客は息を呑む。


レイオスは一瞬眉をひそめるが、表情を変えずに鋭い斬撃を繰り出す。

ウィルは軽やかに回避しながら、まるで舞うように距離を取り、レイオスの剣を翻弄する。

そしてレイオスに蹴りを入れる。


「劍聖~分かりやすい、ぬるい攻撃じゃ俺には届かないぜ。」

不愉快な挑発。


レイオスは鋭い突きからの袈裟斬りでウィルとの距離を詰める。

ウィルは袈裟斬りに合わせて体を反転し、攻撃を躱しながら突きを入れる。

「くっ……!」

レイオスも剣聖たる技で反撃するが、ウィルは笑みを浮かべ、かすり傷さえも許さない。

「もう少し、踏み込めるだろう?」

ウィルはレイオスの動きを読み切ったように攻撃を躱し、レイオスに剣を叩きつける。

黒色のクレイモアは鎧の上から打撃を受けてもダメージは入る。


エルドリンの瞳が鋭く光る。

「……これは剣術では無い……!」


ウィルの攻撃は止まらない。エルドリンはウィルの挑発的な戦法に、思わず体が反応してしまう。


レイオスが前に踏み込み、一閃。だがウィルはその瞬間を見越して剣を巧みに逸らし、背後に回り込み、余裕の笑みでレイオスの脇腹を切り裂く。

観客席からは驚きのどよめきが上がる。


「くっ……!」

レイオスは悔しさを堪え、態勢を立て直す。

しかしウィルは冷静そのもの。斬るたびに、まるで相手の動きを嘲笑うかのような動作を見せる。

一撃ごとにレイオスの理性と集中力を削る、心理戦の極致だった。


「まさに、力だけではない。勝敗を分けるのは技術と心理の駆け引きだ……」

エルドリンは言葉を噛みしめながら、心の中で決意を固めた。

「このままでは……見過ごせない。あの侮辱的な行為を許すわけにはいかない」


ウィルはさらに挑発的な動きを見せ、レイオスの攻撃をかわしながら背後に回り、刃先をレイオスの肩にかすめさせる。

観客の歓声は悲鳴と興奮が入り混じり、戦場の緊張感を極限まで高める。


エルドリンは息を吐き、立ち上がろうとする。

「黒き終焉のウィル。」

アシュリーの目に、エルドリンの険しい表情が映る。

普段冷静な彼の顔に、怒りと決意が浮かんでいた。

「エルドリン……」

アシュリーの声は小さくも、確かな覚悟を帯びていた。


戦場では、ウィルの冷笑が闘技場中に響き渡る。

「そこまで!」合図で試合が止められた時、黒き終焉のウィルがエルドリンに向かって嘲笑した。


「なんだってあいつはエルドリンを見てんだ?知り合いか?」

「いえ、知りません。でもあそこまでレイオスを侮辱するのは許せません。御前試合を汚しています。」

ガルムの言葉にエルドリンは怒りがにじみでるのであった。



そしていよいよ第4試合:バルグの登場


場内アナウンスが響く。

「第四試合、鋼のオルグレン vs バルグ、開始!」


控室で静かに準備を整えたバルグは、リオの同行を受けながらゆっくりと闘技場の中央に歩を進める。

観客の熱気が肌を刺すようだ。だがバルグは微動だにせず、冷静に相手を見据える。


オルグレンは戦斧を大きく振り上げ、豪快な笑みを浮かべた。

その体躯から放たれる圧倒的な力の気配に、場内の観客も息をのむ。


バルグは心の中で戦略を確認する。

「力の差はある。しかし、駆け引きと精密な攻撃で勝機はある」


エルドリンは特別観覧席からアシュリーに耳打ちする。

「ここからは、理論と経験の戦いだ。オーガ相手に力勝負は避けるべき」

「はい、学んだことを生かせば……」


観客の視線が、闘技場中央の二人に集まる。

バルグの冷静な眼差しと、オルグレンの豪快な振る舞いが、次の瞬間に起こる一撃を予感させていた。


静寂の中、闘技場に号令が響く――「始め!」


オルグレンは巨大な戦斧を大きく振り上げ、その圧倒的な膂力で振り下ろす。

観客席からはどよめきと歓声が同時に湧き上がる。


バルグは動じず、戦斧の軌道を瞬時に見極める。

「まずは押し切られない距離を維持する……!」

彼はステップで軌道を外しつつ、斧の遠心力を利用して反撃の隙を探す。


オルグレンの一撃は、フルプレートの防具でも耐えきれそうな威力だった。

だが、バルグは肩を低くし、腰の力を剣に乗せて斬撃を受け流す。

「力に頼る相手ほど、自分のリズムに引き込めば勝機が見える」


斧を振り回すオルグレンに対し、バルグはわずかに距離を詰める。

狙いは斧のスイングの終点、腕の疲労が残る瞬間だ。

瞬間、バルグは鋭い踏み込みで懐に飛び込み、剣先を斧の柄に突き当てる。

「押し返す! 相手の力を利用する……!」


オルグレンは予想外の反撃に体勢を崩す。

その隙にバルグは素早く斬り返すが、戦斧はまだ重く、簡単には制御できない。

「まだ油断はできない……!この一瞬が勝敗を分ける」


オルグレンは怒りを露わに、剣と同じ速度で斧を振り上げる。

バルグは盾を構え、体重を乗せて受け止めるが、衝撃で後退する。

その間もバルグの目は冷静だ。相手の呼吸、肩の動き、握力の緩み――すべてを読み取り、次の一手を決める。


「今だ!」


バルグは踏み込むと斬撃を叩き込む。

戦斧の重みを利用して押し返されるオルグレンの腕を狙い、剣先でわずかな隙を突く。

戦場の騒音を意識せず、集中は己と相手だけに向けられていた。


オルグレンは力任せに斧を振るうが、バルグは軌道を読み切り、さらにフェイントを混ぜて反撃。

数度の打ち合いの後、オルグレンは一瞬の油断でバランスを崩す。


観客席から歓声が湧く。

バルグは一瞬の隙を逃さず、剣を振り下ろして斧の柄を弾き飛ばす。

そのまま斬撃を続け、オルグレンは後退し、ついに膝をついた。


「勝負あり!」

アナウンスが響き渡る。


バルグは剣を構えたまま、呼吸を整えながらオルグレンを見下ろす。

オルグレンは肩で息をしながらも、力強く頷き、闘技場は静かに息をのんだ後、熱狂の拍手に包まれる。


観客の歓声、剣戟の余韻、緊張の空気――すべてが、バルグの勝利を祝福していた。


特別観覧席のエルドリンとアシュリーも、戦略と心理の駆け引きを目の当たりにし、深く頷く。

「力だけでなく、駆け引きと冷静さが勝利を生むんだな……」

「はい、バルグ殿の戦いから学ぶことが多いです!」


この勝利により、バルグはクラン《ファイヤクラフティ》の力を民衆に示すだけでなく、戦士としての実力を十二分に証明した。

そして、次に続く戦い――御前試合の最終局面へと、物語は静かに熱を帯びていくのだった。


闘技場に歓声が渦巻く中、バルグはゆっくりと剣を下ろし、息を整えた。

オルグレンは立ち上がり、深々と頭を下げる。


「見事だ……」

エルドリンが小さく呟く。

アシュリーも目を輝かせながら頷いた。


「バルグ殿の戦い、素晴らしかったです。力だけでなく、相手の心理を読んで戦っていたのですね」

アシュリーは興奮気味に言う。


「そうだ、力任せの戦いではなく、駆け引きで優位に立つ。焦りを誘い、隙を作る――それがバルグの強さだ」

エルドリンは冷静に分析した。


ガルムも頷き、力強く言う。

「いやぁ、オレも学ぶところが多い。あの膂力、ただの力自慢ではない。瞬時に相手を分析して攻撃を選ぶ……まさに戦士の理想型だな」


「そして一瞬たりとも油断せず、間合いを管理していたことも見逃せません」

ソレンディルも冷静に付け加える。


アシュリーは自分の戦いを思い出し、学んだことを反芻する。

「昨日までの自分だったら、あの重い斧に圧倒されて何もできなかったでしょう。バルグ殿の戦いを見て、動きの意図と駆け引きが勝敗を分けることがよく分かりました」


エルドリンは笑みを浮かべ、アシュリーに語りかける。

「その通りだ。力の強い相手にはスピードと判断力で対抗する。相手の動きを読んで心理を揺さぶり、焦りを作る――それが対人戦の基本だ」


「私も、もっと自分の戦術に自信を持たなければ……」

アシュリーは拳を握り、決意を固める。


そのとき、観客席に向かってアナウンスが響く。

「続いての試合は、第5試合、黄金剣のレオニス対黒き終焉のウィル!」


「さあ、次の戦いも見逃せませんね」

エルドリンが笑みを浮かべる。

「今日の観戦で、君はたくさん学ぶことになる。実際に戦う前に頭の中で戦術を整理しておくことが大事だ」


アシュリーは深く頷き、闘技場に広がる熱気を胸に吸い込む。

「はい、今日の経験を無駄にせず、必ず自分の力にします」


ガルムとソレンディルも肩を叩き合い、笑顔を見せた。

「次の試合も油断できねえな」

「だが、君なら大丈夫だ」


こうして、一行は次の試合に備えて闘技場の席で戦況を見守りながら、戦術と心理の学びを胸に刻んだ。


勝利の余韻と緊張感が交錯する闘技場――アシュリーにとって、この日が成長の大きな転機となることは間違いなかった。

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