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エーテルリウムの黄昏  作者: お茶どうぞ
41/91

41、アシュリーの目覚め

翌朝、3人は朝7時に目を覚まし、宿屋「金薔薇の館」のレストランでモーニングビュッフェを楽しんでいた。


「それで、どうしてバルグさんは御前試合に参加しているんですか?」

ガルムが問いかける。


「彼は見極め役さ。名乗りを上げて出てきた者と実際に剣を交える。その上で実力を見極めるのが役割だ」

エルドリンが答える。


「オーガと組み合わされただけで逃げ出したくなる人もいそうですね」


「それなら手間が省けるってもんだろ?」

「なるほど、納得です」


「昨日の小僧、来るかな?」

ガルムがにやりと笑う。


「来ますよ」

エルドリンは微笑みながら答えた。


食事を終えると自由時間となる。

エルドリンは中庭に出て、キャンサーの装備で片手剣と盾を合わせ、アシュリーの到着までアップと体慣らしを行った。


8時直前、アシュリーが「金薔薇の館」に到着する。

フルプレートに片手剣、盾を装備し、緊張と期待を混ぜた表情で中庭に案内された。


「来ましたね。改めて、私はエルドリン・ファルコン。アルカディア王国アイアンゲート出身の冒険者です。これが冒険者証、そしてクラスを示す石です。現在はミスティクレスト公国へ向かう途中です」


アシュリーは冒険者証と石を手に取り、紫がかった青色の光沢に目を見張った。高貴な輝きが、彼の目に強く映る。

返すと、アシュリーも自分の冒険者証と石をエルドリンに渡した。


「私はウルク出身。両親を戦争で失い、彷徨っていたところをアレクセイ様に救われました」


「若いのに苦労してきたんだね。さあ、早速始めよう。君の得意なスタイルはこの装備でいいのかい?」


「はい、得意技は早い踏み込みからの突きです。盾と片手剣で手堅く戦えると思い、この装備にしました」


「そうか。じゃあ、少し打ち合ってみよう。来なさい」


アシュリーは間髪入れず間合いを詰め、素早い動きで突きを放つ。

しかしエルドリンはそれを読み、左回りに回転し遠心力を利用して片手剣で胴を斬る。

アシュリーは盾で受けるが、遠心力の衝撃に腕が痺れ、体勢が崩れる。

エルドリンは既に正中に構えており、隙を見逃さない。


アシュリーは立て直し、慎重に距離を詰めて三段突きを放つが、エルドリンは上段を剣で、中段・下段を盾で受け止める。


「悪くない動きだ。だが、動きが読める」

エルドリンは目線を逸らす。

アシュリーはその隙をついて打ち込むが、エルドリンは盾に体重を乗せて押し返す。

跳ね返された衝撃でアシュリーはのけぞり、首筋にロングソードがかすめて「参った」と一言漏らした。


「今のは誘い受けだ。君が打ち込む間合いを作っただけ。逆に見せかけるのがフェイント。分かるか?対人戦ではこうした駆け引きが命取りになる」


アシュリーは昨日の試合で感じた不条理さの理由を、今少し理解できた。


「では、もう一度」


エルドリンが構え、突きを放つ。アシュリーは防御に集中するが、足元が疎かになり、足払いで地面に倒される。


次は突きの構えから間合いを詰める。アシュリーは先手を打つが、剣を叩き落とされ、顔に盾でかち上げられる。


「対人戦では先の後、後の先を理解することが鍵だ。必殺技の前にまずこの駆け引きを覚えろ。体に教え込むのが一番早い。さあ、どんどん打ち込んで来なさい」


アシュリーは昨日見えなかったものが、体に刻み込まれていくのを感じた。

打ち合いは2時間に及び、双方息を切らせながらも集中を切らさない。


「では、一旦休憩しよう」


宿屋のローディが椅子とテーブルを用意し、若いウェイトレスが冷たいドリンクを届ける。

中庭にガルムとソレンディルも訪れ、ソレンディルがアシュリーに治癒魔法を施した。


「力が入るのは当然だな」

「何度も打ち合いましたが、可能性と伸びしろを感じます。だから力が入って見えるのでしょう」


「見ていて癖があることに気付いた」

「直さないと、対人戦では命取りです」

「さすがだな、エルドリン。休憩後、私も変わろう。奴はバルグにも当たる可能性がある」

「死なない程度にお願いします」

「分かってる」


中庭に立つアシュリーの胸は高鳴っていた。

対峙する相手は、かつて一緒に酒を酌み交わしたこともあるオーガ、ガルム。筋骨隆々の巨体から放たれる一撃は、人間の想像を超える膂力を伴う。


「行くぞ、アシュリー!」

エルドリンの声が鼓膜を震わせる。


ガルムの「イグニスソード」が夜明けの光に反射する。

振り下ろされる横薙ぎ。アシュリーは反射的に頭を下げ、盾でかすめるように防ぐ。刃が肩をかすめた衝撃に、全身の筋肉が瞬間的に緊張する。


次の瞬間、ガルムは上段に切り替え、振り下ろす。

アシュリーは横向きになって刃を躱す。

電光石火の連撃に反撃の余裕はない。心臓が跳ねる。


だが、焦りはない。体に刻み込まれた昨日の「先の後、後の先」が、冷静さを呼び戻す。

アシュリーは距離を取り、両手剣を中段に構えた。踏み込みから強く振り下ろす。


ガルムはバスターソードを受け身に構え、重心を落とす。

アシュリーは振り下ろした剣をそのまま突きに変え、胸に向かって放つ。


ギィーン! 剣がガルムのフルプレートを弾く音。

胸を突き、続けて小手を打ち、後ろに跳んで体勢を整える。

心臓が高鳴るが、呼吸は落ち着いている。


「良いぞ、続けろ!」

エルドリンの声が背中を押す。


再びガルムが襲いかかる。横薙ぎから上段、振り下ろす。アシュリーは瞬時に横を向き、盾と剣で刃を受け流す。

一撃ごとの衝撃に体が揺れるが、雑念はなく、動きは正確だ。


「アシュリー、見えるか?相手の予備動作の意味を。型ではなく、力の方向、体重のかかり方、膂力の入り方…すべて読めるか」

エルドリンの声が鼓膜に響く。


アシュリーは目を細め、ガルムの腕の筋肉の動き、肩の回転、剣の軌道を瞬時に分析する。

打ち込むタイミング、避ける角度、力の入れ具合…反射的に体が動く。


踏み込み、横薙ぎを避ける。次の突き、斬撃を受け流す。

体が自然と動き、剣が風を切る音が中庭に響いた。


そしてついに、アシュリーは隙を見つけた。

ガルムの腕が振り切れた瞬間、両手剣を胸に向かって突き出す。

ギィーン! 鋭い音とともにガルムの胸を捉え、後方へ跳ね返る。


ガルムは目を見開き、一瞬だけ驚きの表情を見せた。

しかし、すぐに笑みを浮かべ、次の攻撃に移る。

アシュリーは冷静に間合いを取り直す。


「良いぞ…集中しているな」

エルドリンの声が背中に届く。

アシュリーは心の中で、自分の成長を確かめた。

昨日まで感じていた迷いは消え、体に「勝つための反応」が刻まれていた。


その後も連続して打ち込まれるガルムの攻撃。

アシュリーは盾と剣を駆使し、踏み込みや体重移動で対応する。

相手の膂力を体で受け止め、反応し、間合いをコントロールする。


2時間後、エルドリンが「休憩だ」と声をかける。

汗と埃にまみれたアシュリーは、達成感と疲労が入り混じる表情で息を整えた。

ガルムも満足そうに笑う。


「凄い、アシュリー。初めてのオーガとの打ち合いで、動きが全く乱れなかった。反射も正確だ」

「初めは単調だったが、徐々に隙を突く動きが増えたな。スピードを活かした最小限の動きで躱し、反撃できる。これが君の本来のスタイルだ」


アシュリーは深く息を吐き、ガルムとエルドリンに礼をした。

「ありがとうございました。迷いが消え、ようやく昨日の原因が理解できました。ガルムさんの一撃も、今なら対処できます」


「それならいい。今日はよく頑張った」

エルドリンは微笑む。


その後、エルドリンはアシュリーに追加装備を渡す。

ヴェリタス・ストーン製の両手剣、レイピア、ブーツ、そして魔法を施した防具と武器。

装備と術式の説明を受け、アシュリーは新たな力を手にした。


「よし、昼食を済ませたら闘技場に向かおう」

「はい」


こうしてアシュリーは、自信を取り戻し、戦闘の感覚を確実に体に刻み込むのだった。

パーティーの仲間に使う事も可能だ。効果はマナが存在する場所では1ヶ月保たれる。

"ヴェリタス・ストーン"製の武器について説明した。


アシュリーはレイピアを構えて突きの動作を繰り返す。

「気に入ったのかい?」

エルドリンが聞くとアシュリーは痛く感激していた。

「ありがとうございます。」

「よし、お昼を食べたら闘技場に向かおう。」

「はい。」


こうしてアシュリーは気持ちを切り替えて自信を取り戻した。



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