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エーテルリウムの黄昏  作者: お茶どうぞ
40/91

40、縁(えにし)

カウンターに一人で座る若き剣士、アシュリー。

背後からエルドリンが静かに近づき、横に立って声をかけた。


「ここ、空いてますか?」


突然の声に、アシュリーは反射的に振り向き、戸惑いながら答える。


「…空いてます」


言葉少なに返すしかない様子だ。


「私はエルドリン・ファルコン、騎士団出身の冒険者だ。君は御前試合の最年少出場者で合ってるかい?」


「はい。私はアリュリー・ランデル、剣士です」


「ランデル…聞いたことがあるような気がするな」


「私の義父は元アルカディア王国騎士団団長、アレクセイ・ランデルです」


「おお、アレクセイ様か!なるほど、懐かしい響きだと思ったよ。ご健在なのか?」


「ええ、元気にしています。エルドリンさんは父上と面識があるのですか?」


「凄く厳しくて、団員思いの素晴らしい方でした。私は15歳で騎士団に入団し、右も左も分からない頃から面倒を見てもらったんです。アシュリー、これも何かの縁だろう。私に敬称はいらないよ」


「そうですか…現役の父を知っている人と会えるなんて驚きです」


「ところで、今日の結果は…あまり良くなかったと聞いたが?」


「はい…群衆の前で剣を振るなんて、緊張して自分を見失いました」


「初めての御前試合だろう?それは当然の反応だよ。君は歳はいくつだ?」


「18歳です」


「まだ若いじゃないか!自分が同じ歳の頃を思い返すと…君は十分凄いよ。ちなみにクラスは?」


「最近、オニキスクラスに上がったばかりです」


「おお、オニキスクラスか!18歳でそれは驚異的だね。対人戦闘の経験はあるのかい?」


「魔獣討伐で経験は積んでいますが、対人戦闘はあまり…18歳でオニキスクラスはそんなに凄いことですか?」


エルドリンは心の中で確信した。

「この若者は自分の強さを自覚していない…」

単独でクエストをこなせる=剣術だけでなく魔法も駆使できるはず。治療魔法や攻撃魔法も使えるだろう。


「今日の試合について、どう感じている?」


「父が師匠なので剣術は学んでいます。しかし、自分のペースに持ち込めず、雲を掴むような感覚でした」


「経験不足だと思っているかい?」


「はい…相手の剣術を観察する内にこちらの攻撃が交わされ、リズムが狂いました」


「対人戦で最も大事なのは“駆け引き”だ。君はそれに負けただけで、剣術の優劣は関係ない」


「どうすれば良いでしょうか」


「明日、君の出場機会はあるか?」


「いえ、ありません」


「なら、明日朝8時に“金薔薇の館”に来れるかい?」


「場所は分かります。大丈夫です」


「我々のパーティーは“アンブレイク・ハート”。宿屋で名前を呼べば分かるだろう。今日は早く切り上げて、明日対人戦術を稽古しよう」


「良いんですか?」


「アレクセイ団長から受けた恩義を君に返せるだけのこと。全然構わない」


「ありがとうございます」


「今日のことは一旦忘れ、頭を切り替えること。いいね?」


「はい。では、明日よろしくお願いします」


エルドリンは勘定を払い、アシュリーは一礼して宿屋へ戻って行った。


テーブルに戻った後の会話


エルドリンがテーブルに戻ると、ソレンディルが尋ねた。


「どうだった?」


「彼は騎士団時代にお世話になった団長の出身で、18歳にしてオニキスクラス。大した若者です。大丈夫」


「なるほど…」


するとバルグが笑いながら割り込む。


「エルドリンの話を聞いたが、あんた中々やるな。どうだ、うちのクランに入らねえか?」


「私はまだ未熟ですし、この二人がいなければ今もアイアンズ・ゲートでくすぶっていました。旅の目的もあるので、丁重にお断りします」


「そりゃ残念だなぁ…“アンブレイカー”が入れば面白いのに」


「急に言われたって、すぐには返事できませんよ!」


そのやり取りにガルムが大笑いすると、バルグもつられて笑った。

居酒屋の夜は笑い声に包まれ、楽しい時間は遅くまで続いた。


翌日、バルグは試合に出場するため「じゃあ、剣闘場でな!」と別れを告げた。


「ガルムより豪快な人ですね」

「まあ、あいつは性格だろう。細心の注意を怠らないから、長く続けられるんだ。オーガがクランに参加しているのはあいつくらいだろう」

「バルグと一緒のレイドは安心感があるわね」


過去のレイドを思い出しつつ、ガルムとソレンディルはエルドリンにバルグの良さを語った。

宿に戻り、それぞれの寝室で夜は静かに更けていった。

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