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エーテルリウムの黄昏  作者: お茶どうぞ
39/91

39、"火竜のあばら屋"にて

3人は部屋に戻り、今晩の居酒屋について話し合っていた。


「候補は…“王冠の獅子”“黄金杯”“火竜のあばら屋”“雷鳴角”か」


「宿のコンシェルジュのおすすめは“火竜のあばら屋”だって。御前試合の出場者が集まるらしい」


エルドリンは大浴場に行くついでに確認した情報を思い出しながら提案した。


「そりゃ面白そうだな。今日はそこに行こうか」


「え〜、私は“王冠の獅子”とか、ちょっとゴージャスな店も気になるんだけど」


「でも、御前試合に昔馴染みの顔が混じってたら、“火竜のあばら屋”で会えそうじゃない?」


「それもそうね…」


ガルムが笑いながら頷く。「よし、決まりだ!」


出発前のひととき


夜7時。出発は8時にして、それまで各々寝室やリビングでくつろぐことにした。

エルドリンは母親と“ムーブ・メモリー”で夕食の話題に花を咲かせる。


「この鳩肉の香り、絶品だったよ。ああいう店、帝都ならではね」


ガルムとソレンディルは普段着に着替え、リビングのソファでくつろぎながらエルドリンの会話が終わるのを待った。


「すいません、お待たせしました。それでは行きましょうか」


3人は“金薔薇きんばらの館”を出て、広場を抜けて飲み屋街へ。赤い灯りが目印で、店を探すのに迷うことはなかった。


木造三階建て、“火竜のあばら屋”。大きな看板の上には赤い灯りが灯り、入口には屈強なドアマンが立っている。


「どうぞ」ドアマンが扉を開けると、3人は店内に足を踏み入れた。


店内は光魔法で明るく照らされ、長いカウンターやテーブル席は客で賑わい、活気があふれていた。


「いらっしゃいませ、何名様ですか?」

「3人だ」ガルムが答える。

「それではテーブル席へご案内します」


壁際の席に案内され、3人は席に腰を下ろす。


「1杯目はサービスです」


ジョッキのエールを手に、乾杯。


「こういう雰囲気、久しぶりだな」

「そうだな、悪くない」


ガルムとソレンディルは店内を観察しながら、御前試合出場者たちの気迫や殺気を肌で感じ取った。


バルグとの再会


大きな男がカウンターに近づいてくる。


「おい!ガルムとソレンディルか!」

「バルグか?」

「おうよ!」


「久しぶりね、バルグ」ソレンディルが微笑む。

「そこ、座っていいか?」

「良いに決まってるだろ!」


バルグが席につき、改めて乾杯。


「お前が出てるってことは、クランの誰かが御前試合に?」

「ああ、俺だ」


バルグは右手で寄れと合図し、3人は耳を傾ける。


「今、この国は跡目争いが激しい。皇帝ネフィロス・エンペリアは強欲で、軍隊の力を誇示することに疑いを持たない。好戦的で同盟国アルカディアにも手を出す。亜人に差別はしないが、人体実験で命を使っている噂もある。そんな親父だ」


「そんな情勢なんですか…」エルドリンは息を呑む。


「御前試合で武術指南役というのは表向きの話だ。第三皇太子マーシャル様を守る派閥で、我々“ファイアクラフィ”が護衛、作戦立案、情報収集をしている」


ガルムとソレンディルは冷静に頷き、エルドリンだけが真剣に耳を傾けた。


「クランの人数は?」

「254名だ。御前試合で腕利きの武芸者を集めるのが目的だ」


「こんな話、ここでして大丈夫ですか?」

「お前たちは長い付き合いだ。政敵に手を出さないことはわかっている」


「もしかして、クランに勧誘してる?」

「面白い事を言うな!“アンブレイカー”、来るか?」

「いや、旅の目的がありますので」

「バルグ、エルドリンは真に受けるから、そういうのやめて」ソレンディルがぴしゃり。


若き剣士アシュリーへの手助け


「一つ相談があるんだ、エルドリン殿」

「話を聞いた上で決めましょう」


バルグはカウンターに座る18歳の若き剣士を指さした。


「今日負けたばかりで、自分を責めている。剣技は素晴らしいのに第三者の目線やコーチングが足りない。話し相手になってやってくれないか?」


意外な提案に少し驚いたが、エルドリンは自分の初めての御前試合を思い出す。


「やりましょう」


エルドリンは席を立ち、カウンターのアシュリーの元へ向かった。


「こんばんは。少し話を聞かせてくれないか?」

アシュリーは驚いた様子で顔を上げる。


「…あ、はい」

緊張で肩が少し震えている。


「君の剣さばきは素晴らしかった。でも、今日の試合で少し力みすぎていたようだな。緊張もあっただろう」

「そ、それは…」

「大丈夫。誰も君を責めやしない。俺も初めての御前試合では同じように自分を追い詰めた。落ち着いて話そう」


その言葉にアシュリーは少し肩の力を抜く。


「そう…ですよね…」

「まずはゆっくりエールでも飲もう。少し話してみるか?」


3人のテーブルではガルムとソレンディルが微笑みながら見守る。

「なかなか良い雰囲気じゃないか」ソレンディルが囁くと、ガルムも頷き、ジョッキを軽く掲げた。


エルドリンは、若き剣士の緊張をほぐしつつ、御前試合で培った経験や心構えを丁寧に伝えていく。

アシュリーは次第に表情が和らぎ、勇気を取り戻す様子が伝わる。

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