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エーテルリウムの黄昏  作者: お茶どうぞ
34/91

34、神託

ストロングホール・サロンの木製テーブルに揃ったエルドリンたちは、エールの入ったジョッキを掲げる。


「我らの勝利に乾杯!」

ガルムが祝杯の音頭を取ると、ジョッキが重なり、一斉に乾いた音を立てて液体が喉を通った。


ソフィアはエルドリンの特別任務について興味津々に尋ねる。

「どんな任務だったの?」


エルドリンは詳細は口にできなかったが、この世界で指折りの魔法使い、マルセル・デルースと邂逅したことを話した。


「それにしても、“亡国”と呼ばれるネクロマンサーとソレンディルが知り合いとは、俺も知らなかったよ」

ガルムが興味深げに問いかける。


ソレンディルは少し影のある表情で答えた。

「マルセルは優秀なマジックキャスターよ。魔法研究に真摯に向き合い、勤勉な賢者。『亡国』と呼ばれるのは不名誉な誤解だと思っているわ」


ガルムがさらに尋ねる。

「何で“死者の魂を操る魔法”に長けているんだ?」


ソレンディルは静かに語った。

「彼には一人息子がいたの。病で亡くなった我が子を蘇らせるため、禁忌とされる『蘇生魔法』の研究を始めたの。何十年も試行錯誤したけれど完成はできなかった。


その代わり、武器や防具に残る残留思念を身体に移せるようになったの。アンデッドは生前の戦闘技術や経験を活かせる、他者とは異なる強さを持つ存在を生み出せるようになった。そしてクロマンサーとして名を馳せたのよ。


皮肉な結果だけれどね。『亡国』の名は、自分の国を失ったから付けられた。戦争で愛する家族も、仕える国も失ったの」


エルドリンには偏見なく会ってほしかった、とソレンディルは少し影を帯びた表情で続けた。


「そうだったんですね。エーテルリウムの研究もされているようで、今後は情報交換を約束しました。連絡用のスクロールもいただきました」

「いい機会だったな」

ガルムが笑みを浮かべ、ソフィアもその自然な笑いに満足していた。

しかし心の片隅では、エルドリンが街を去る寂しさも感じていた。


エルドリンはそんなソフィアを気遣い、

「転移ですぐ戻れるさ」と一時の別れを慰めた。


ソフィアは最近、レイジングクロウのナイトをテイムしている噂で討伐依頼が増えているという。

「捕獲したレイジングクロウの親子は環境に慣れてきた?」

「子供の方は孤児院の子どもたちと遊んでいるわ。母親はまだ警戒中だけど、ご飯は食べて元気。ナイトとは仲良くやってる」

「それは上々だね」


笑顔を取り戻したソフィアは、ガルムとソレンディルにエルドリンの戦術と魔法の総括を依頼した。


「アンデッドに囲まれた時、彼の剣術はエーテルリウムの技術だった。瞬時に姿を消して背後に回り、神聖魔法を刀身に纏わせ槍兵を薙ぎ払った。まるで隠密のようだった。


敵のマジックキャスターは照準を合わせる暇もなく、エルドリンは数合切り結び、戦法を柔軟に変えながら神聖魔法『レクイエム』を唱えていた。まさに作戦の功労者だ」


「一人であの軍勢を片付けられたかも知れないわ」

ソレンディルも補足した。


エルドリンは謙遜して「そんなことありません。手一杯でした」と答える。

しかしガルムは、他の冒険者なら成し得なかっただろうと心中で感嘆していた。


祝勝会は夜遅くまで続き、翌朝は鍛冶屋「マスターハンズ・ハンズクラフト」に全員集合。

リアナ嬢に迎えられ、モーニングティーとハムトーストで一息ついたところ、奥の扉がノックされグローリンが入室する。


「本日は装備の精算にいらしたとの事、よろしくお願いします」


請求書がテーブルに広げられる。


ソレンディルのフルスペック「インフィニティロッド」500万ギル


ガルムのフルプレート「インフィニティアーマー」100万ギル


ガルムの「インフィニティブーツ」100万ギル


ガルムの「イグニスソード」メンテナンス50万ギル


ガルム・ソフィアの「使者のケープ」200万ギル


ソフィアのライトアーマー「ワイルドハントの羽」100万ギル


ソフィアのブーツ「ワイドハンドウォーカー」100万ギル


ナイトの乗鞍10万ギル


ムーブメモリー100万ギル


合計1,260万ギル。

ガルムがため息をつく。

「他の冒険者じゃ買えない理由も納得だ。1613万ギルから支払うと353万ギル残る。アルディア教とギルドへの寄付に回すんだろ?」


エルドリンは即答した。

「アルディア教に100万ギル、冒険者ギルドに200万ギル。残りは旅費に」

ガルムとソレンディルも同意した。


その後、一行は鋼の契約堂へ向かう。

目的はオニキスクラスからタンザニアライトクラスへのクラスアップ。

教会で神託を受けることで、国外を自由に移動できる権限を得られる。


階段を登り、神託台の中心に片膝をつくエルドリン。

「女神アルディア、彼の者に神託を!」

天窓から光が集中し、バイオレティッシュブルーの輝きが神託台を満たす。


「これから旅立つ者よ、偉業を称え、新しいクラスを与えよう。常に正義の心を持ち、行動せよ。宿願は果たされるだろう」


光が収まると、エルドリンはタンザニアライトクラスとして降りてきた。

ガルムに背中を叩かれ、達成感と安堵が表情に現れる。


次にソレンディルが神託台へ。

光が赤と緑に交互に煌めき、伝説級アレキサンドライトクラスが現れた。

「お前以上の魔法使いは見たことがない」

ガルムが称え、ソレンディルは冷静に微笑む。


最後にガルムも神託を受け、アレキサンドライトクラスに到達。

石言葉「誕生」「出発」「秘めた想い」を胸に、階段を降りた。


ソフィアは感激し、エルドリンに手を取られ励まされる。

「そうだね。これは始まりだ。無事に戻るよ」


晴天の空の下、一行は鋼の契約堂を後にし、新たな冒険へ歩みを進めるのであった。

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