33、報告
飛行艇の中、商隊と監視人たちは緊張の糸を張り詰め、ただエルドリンの帰還を静かに待つしかなかった。
沈黙の中、扉が開き、エルドリンとソレンディルが現れる。
「大丈夫でしたか!」
案内人が駆け寄る。
エルドリンは笑顔で答え、緊張を解いた。
当座の危険は去り、商隊は次の国へ移動することになった。
監視人たちは、帰還するバジルを飛行艇で待つこととなる。
エルドリンは飛行艇でソレンディルとガルムを連れ、アイアンズゲートへ向かい、王都別邸にいるバジルを転移で迎えに行くと約束した。
バジルの部下たちは、先の戦いで目の当たりにした光景が信じられなかった。
エルドリンの恐ろしい剣技と魔法、ソレンディルの高度な魔法戦術――。
自分の目で確かめるしかないものを、転移魔法で間近に見せられ、全員がただ息を飲む。
「敵だったら……いや、そんなことは考えられない」
皆が小声で囁き合う。
これが、噂に聞く“アンブレイカー”の実力だ――と、心底から納得していた。
エルドリンは気にも留めず、飛行艇をアイアンズゲートに向けて発進させた。
一方、王都公爵別邸地下では、宰相アルトリウス、公爵エドガー、調査団団長カスパー、そして元調査団のバジルと、捕虜となったマルセルの仮弟子3人が揃っていた。
バジルから現地の状況と作戦結果、推察が報告される。
カスパーが仮弟子に問いかける。
「君たちはエンペリア帝国の魔法使いで間違いないか?」
弟子1は警戒心を隠せず答える。
「この尋問に答えたら解放されますか? 拷問はされませんか? 身の安全を確認したい」
「安心せよ。拷問など行わぬ。君たちに必要なのは情報確認だけだ。
睡眠・食事は提供する。ここでは魔法も使えない。尋問終了後は元の場所へ戻す。首領とは話がついている」
弟子たちは互いに目を合わせ、首領と話がついていると聞き、納得した様子を見せた。
尋問は魔法道具を使用し、緑色に光れば嘘をついていると判定できる仕組みで進められ、2時間ほどで順調に進行した。
その頃、宰相アルトリウスのもとに伝令が届く。
ロメリオが報告を行った。
「調査団がマークした貴族の動きですが、グレートレイブ湖での演習準備中、特定の屋敷に複数人が集まっております。
舞踏会や祭祀の予定は無いにもかかわらず、不自然な動きを見せています。
また、商人との接触も確認され、隣国へ情報を伝達しながら移動している模様です。明日には隣国に到達する予定です」
アルトリウスは薄く笑みを浮かべた。
「よもやと思っていたが、情報漏えいか……。だが、これで敵の情報網も把握できる」
ロメリオも迅速に応じる。
「グレートレイブ湖の状況は?」
「まだ調査中です。演習が隣国に伝われば動きがあるでしょう」
「分かった。尋問は調査団に任せ、我々は城に戻り通常業務を続けよう」
宰相は冗談交じりに、ワイン樽に隠れて移動する案まで示し、豪快に笑った。
エルドリンはアイアンズゲートに到着後、公爵邸から冒険者ギルドへ向かう。
グレートレイブ湖のディープバイト討伐報告と追加討伐報告をまとめなければならない。
討伐対象と数は以下の通り。
グライムファング 70体
スピアバック 102体
ファングロウ 6体
ウィズドムウィング 28体
ディープバイト成体 2体
ディープバイト幼体 12体
ディープバイト卵 20個
レイジングクロウ親子 捕獲
グローザーペントヴァイパー 1体
スケイルヴァイパー 1体
ドレッドジョー群生
ギルドマスター、アルバート・セレニティスは報酬計算を行った。
「アイアンズゲートの討伐報酬合計は433万200ギル。
王都ギルドの報酬は1180万ギル。
合計で1613万200ギルだ。金貨で持ち運べないため、白金貨16枚、金貨1万枚3枚、10万金貨1枚と200枚に分けた」
エルドリンは微笑みながら答えた。
「屋敷は建ちません。まず装備の支払いです。残りは後で考えます」
副ギルドマスター、エレンディル・エルムウィンドも謝罪し、エルドリンを称えた。
「よくやった。君の活躍で合同討伐の連携や武器貸出も進んでいる。君はこの街の英雄だ」
「指導はこの二人が行ったもので、私は英雄ではありません。死者を出さぬ冒険者育成が目的です」
エルドリンはそう言い、ギルドを後にした。
ガルムとソレンディルと共に居酒屋「ストロングホール・サロン」へ向かう。
今日はソフィアも呼んで祝賀会を開く予定だ。
達成感に満ちた表情を浮かべ、彼の歩みは誇らしげだった。




