表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エーテルリウムの黄昏  作者: お茶どうぞ
28/91

28、廃墟の街へ

宰相アルトリウスと公爵エドガーが情報確認を行っている頃、グレートレイブ湖の湖畔には獣人の精鋭十二名が静かに集結していた。

リーダー、リオン・グレイスケイルが仲間を見渡し、低くも力強い声で作戦を説明する。


「今回の任務は湖畔探索だ。二人ずつ六チームに分かれ、交代で行動する。隣国の地下施設がある可能性は高い。人が潜んでいるなら必ず物資の出入りがあるはずだ。我々はその搬入口、施設の規模、出入りの頻度を監視する。


北側の村は囮の可能性がある。監視対象外としろ。馬車の出入りがあれば頻度を数え、追跡は別チームに引き継ぐ。我ら獣人は嗅覚と気配探知に優れている。そこを最大限に生かす。期間は四週間――気を引き締めろ!」


十二人は無言で頷き、即座に散開。湖畔の探索任務が始まった。


一方その頃、宰相アルトリウスは王城の執務室へ戻っていた。

机上には山のような書簡が積まれている。配下のロメリオが待ち構え、深々と頭を下げる。


「首尾はいかがでしたか?」


「うむ……まだ始まったばかりだ。だが、次の一手は打たねばならん」


「グレートレイブ湖での軍隊の演習や魔獣討伐の情報を流し、貴族から隣国への伝達経路を追う作戦ですね」


「その通りだ。王都軍調査団インヴィスティゲーション団長、カスパー・イヴォリーに伝えろ。時期を合わせて動くのだ」


「はっ」


ロメリオが去ると、宰相は窓辺に立ち、遠い空を見つめる。

「……キュルダット・デ・ルーナス。あの廃墟とネクロマンサーどもの影が、我らの脅威とならねばよいが」

重い吐息が執務室に落ちた。


翌日。

エルドリン一行は転移魔法で公爵家へと到着する。裏門から入り、報告を済ませると、公爵家の長男ハーヴィンが出迎えた。


「父上から聞いている。飛行艇を使うんだろう? 倉庫まで案内する」


「ありがとう、兄さん」


案内された倉庫は巨大で、五階建てに相当する高さを誇っていた。その中央に鎮座していたのは、全長十五メートル、車輪付きの輸送用飛行艇。

風の精霊が宿る魔石を組み込んだ操縦システムにより、操舵はマナで制御される。


「これが……飛行艇か」

ガルムが目を丸くする。


「こんなでかい物が空を? 帆も舵もねぇのに、どうやって進む?」


「心配ありません。風の精霊が舵を取ります。私たちは進路を確認するだけです」

エルドリンの説明に、ガルムはまだ信じられない顔をした。


やがて三人は飛行艇に乗り込み、ガラスのスクリーンと床一面の大地図に目を奪われる。


「これが……アルカディア王国全域の地図か」

ソレンディルが息を呑む。


エルドリンは操縦席に腰を下ろすと、短く指示を飛ばした。

「ソレンディル、遮蔽魔法を。……発進!」


飛行艇は音もなく浮上し、加速していく。王都の屋根が下へと遠ざかり、空を裂いて北端の廃墟都市へと向かっていった。


その頃、北端の荒野に建つ寂れた酒場。

埃をかぶった机を囲み、六人の探索者が集っていた。


長い金髪の女性が報告する。

「バシル、確認しました。アンデッド軍六部隊、総数千二百。少なくとも3人のネクロマンサーが統率演習をしています」


色黒の男、バシル・ストーンキープが顔をしかめた。

「……やはりか。マルセル・デルースの名を聞いたことがあるな?」


「亡国を滅ぼしたという伝説の……?」


「そうだ。優秀な指揮官にして、最悪のネクロマンサーだ。奴がいるとすれば、廃墟都市はすでに奴の牙城になっている。中心街、旧教会付近が拠点だろう」


重苦しい沈黙の後、女性は頷いた。

「今日、援軍が来る予定です。それまでは監視を続けます」


「頼む」


バシルは仲間を見送り、残された酒場の窓越しに荒野を見据えた。

乾いた風が吹き抜ける中、低くつぶやく。


「……まずは合流だ。そして、嵐の前触れを迎える覚悟をせねばならん」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ