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エーテルリウムの黄昏  作者: お茶どうぞ
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12、母親の思惑


夜が明け、三人はテントを畳み街へ向かった。

三日かかって街に到着し、ソレンディルとガルムは宿へ戻った。

エルドリンは冒険者ギルドへパーティーの登録に向かった。


ギルドに辿り着いた頃には夕刻を過ぎていた。

ホールに残っていたギルドマスター、アルバートは彼の姿を見ると近づいて来た。


「今晩は、エルドリン。

 随分遅い時間に来たね。なにかあったかい?」

「今晩は、アルバート。

 パーティーの登録をお願いします。

 それと、難易度が高く、手がつけられていない依頼はありますか?」

「パーティー登録か。例の二人と組むのかい?」

「はい、そうなりました。」

「パーティー名は?」

「アンブレイク・ハートです。」

「折れない心か、いい名前だな。

 ではメンバーの名前をここに記入してくれ。」

「わかりました。」

エルドリンが登録カードに記入していた。


「レイドの依頼が、王都セレスティアから来ています。

 大森林ウォーデンフォレスト奥の湖に、全長六メートルを超えるディープバイトの目撃があったそうです。

 これ程の大物が現れたとすると、周辺の魔物の力関係が崩れ、王都への街道まで魔物が、現れる恐れがあります。

 このままでは物流が滞ります。

 他のパーティーと合同で探索と討伐依頼を出します。

 アンブレイク・ハートを推薦しても良いかな?」

「いつ出発になりますか?」

「まだパーティーが揃っていません。明日の昼過ぎに、来てください。

 今、候補を絞っていて、昼頃発表する予定です。」

「そうですか、ありがとうございます。午後に立ち寄ります。」

「頼みます。ギルドからの報酬は金貨100万、王国からもボーナスが出る予定です。

 創設以来の大型レイドです。素材の買い取り、解体も請負います。」

「それを聞くとさらにやる気が出ますね。それではまた明日。」


エルドリンはギルドを出て、鋼の契約堂へ向かった。

目的はシスター宿舎にいるソフィア・グレースフィールドに会うためだ。

宿舎で面会を頼むと食堂に通された。

長テーブルに座って待っていると、ソフィアが食堂に入って来た。


「エルドリンよくきたわね。

 合宿はどうだった?二人とは上手くやっていけそう?」

「そうだね。二人は素晴らしい逸材で、こちらの予想以上の収穫だったよ。

 上手くやっていけそうだよ。」

「あの二人は頼もしくて、エルドリンに推薦したかいがあったみたいね。」

「これで夢の第一歩だよ、近く大きなレイドがあると、先程ギルドマスターに聞いた。

 それと、冒険者ギルドでパーティー登録してきた。名前はアンブレイク・ハート。

 君の名前も入れて置いた。明日午後に参加パーティーが決まる。

 君にも参加してもらいたい。」

「分かったわ。」

「それでは明日、また迎えに来るよ。」

エルドリンは教会を出て歩き出した。


エルドリン、本名エドリック・ファルコンハートはファルコンハート家の三男。

ソフィアは子供の頃、家族ぐるみで兄妹のように過ごしてきた。

彼女はアルディア教のシスターとなり、アイアンゲートへ時折来ていた。

エルドリンは無詠唱魔法を彼女に伝授し、冒険者登録もしている。

何度も二人で依頼をこなして来た。彼女の訓練にもなるだろう。

エルドリンはそう考えていた。


夢の第一歩を告げる為に、久しぶりにファルコンハート家の邸宅に帰る。

城塞都市アイアンゲート中央部にある公爵邸は、石積みの壁と四方に物見の塔を備えた七階建ての大建物。上二階は大屋根になっている。

公爵エドガー・ファルコンハートが住んでおり、エルドリンは普段別宅に住んでいる。

通用口から入ると門番が招き入れ、執事とメイドが湯浴みの準備を整えた。

武装を解除しガウンに着替え、頭から爪先まで洗われ、髪を梳き、用意された衣装に着替える。

公爵家の一員として無礼と見なされないよう、エルドリンは素直に従った。


応接室に通されると、長男ハーヴィンと次男カスパーが待っていた。

家族全員が顔を合わせるのがファルコンハート家のならわしである。


「エドリック!久しぶりだな。元気そうだな。」

「ハーヴィン兄さんもお元気そうですね。」

「それは何よりだ。お前は折れないやつだからな。」


三兄弟はそれぞれ三歳差で、長兄は父の補佐として公領運営を学び、次男は現場で資材と資金を管理している。

二人とも有能で家臣からの信頼も厚く、末弟エルドリンを可愛がっていた。


その時、ドアが開き公爵エドガーと母フィオレッタが入室した。


「エドリック!久しぶりね、もっと家に立ち寄りなさい!」

「母上、それでは仕事になりません。」

「可愛い息子の顔を見たいという、些細な願いを叶えてくれないの?」

「フィオレッタ、そのくらいにしなさい。皆揃ったようだね。」


公爵が皆の顔を見てフィオレッタを抑える。

「エルドリック、話があるんだろう。」


エルドリンは、ソフィアからの手紙で二人の歴戦の猛者の存在を知った。

二人と一緒にウォーデンフォレストで合宿を行った。

今度の大きなレイドに参加するつもりである事をを順序立てて報告した。


「そうか、良い仲間に出会えたようで何よりだ。

 王都からの討伐依頼も分かっておる。無理はするなよ。」

「はい、ありがとうございます」

「討伐が成功したら本格的に旅に出るのか?」

「そうですね。」

「可愛い息子に会えなくなるのか?」

「母上、転移魔法があるので会えます。」

「なら良いけれど、どうやって連絡を取れるのかい。」

「鍛冶屋マスターハンズ・ハンズクラフトのバルドに魔道具を依頼しています。

 離れていても送受信可能な物です。」


「弟よ!それは戦線でも使えそうだな、こちらに回してもらえないだろうか。」

「ハーヴィン兄さん、それは良い考えです」

「エルドリックには研究・開発でこの国を支えて欲しかった。

 冒険者をさせるのはもったいない。」

「父上、母上、我儘を聞いていただきありがとうございます。」

「ソフィアも立派なシスターになったな。」

「直ぐにでもエルドリックのお嫁に……」

「いや、急にそう言われても。お互いに目標があるのです、母上。」

「良い相手が見つかったら母に教えなさい!結婚は母が取り仕切ります。」


ファルコンハート家は奥方が強い家系である。

兄弟の結婚話や、家族の団欒を楽しみながら、久しぶりの夕食を囲んだ。


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